地方に住むことについて

「地域おこし協力隊」がYouTubeで話題になっている。そのYouTubeを視聴した。田舎で育ち、東京に出てきて、毎年、田舎に帰省するものにとって、身につまされる。改めて、地方に住むことについて考えてみた。

地域おこし協力隊

話題になっている「地域おこし協力隊」とは、制度設計した総務省によれば以下の通りである。なんとなく、かっての「屯田兵」を想起するのは「協力隊」という名称のせいかもしれないが。

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期は概ね1年以上、3年未満です。
令和3年度で約6,000名の隊員が全国で活動していますが、この隊員数を令和8年度までに10,000人に増やすという目標を掲げており、この目標に向け、地域おこし協力隊等の強化を行うこととしています。
出典:地域おこし協力隊 総務省 

地域おこし協力隊には、就業形態の違いによる「雇用型(会計年度任用職員)」と「委託型(地方自治体が任用せず、個人事業主等として、委託関係を締結)」がある。地方自治体の雇用(任用)による場合は、当然ながら地方公務員法の縛りがかかるが、委託型の場合は委託契約に地域おこし協力隊としての活動規律等を特記事項として記載することで一定程度の縛りがかけられる。

さらに、地元の団体等が係る場合は、「地方自治体が関係団体と委託契約等を締結した上で、当該団体の職員等を地域おこし協力隊員に委嘱する場合には、地方自治体と隊員との間に直接的には指揮監督関係がないことや、隊員の活動内容や当該団体の公益性を踏まえ、当該団体と委託契約等を締結することが地域おこし協力隊の制度趣旨に合致していることなどを対外的に説明できるかなどについて留意する必要がある。」

参考:地域おこし協力隊の受入れに関する手引き(第4版) 令和2年8月 総務省地域力創造グループ 地域自立応援課
参考:地域おこし協力隊の雇用形態の違いとメリット・デメリットを解説!ポイントは副業の可否 2021-07-122022-06-01 移住後の働き方戦略 

地域おこし協力隊の期間終了後、現地に留まる場合、地元の公務員になるなら「雇用型」が、地元で事業を起こしたいなら「委託型」で事業起こしを仕込んでおくのが適している。いずれにしても、地域おこし協力隊の希望者個々の性格、生活力、スキル・専門性、価値観等により、選択しないと、話題のYouTubeのようにトラブル化する。

事実、「委嘱時に想定していた委嘱期間よりも早く退任した隊員数(平成 31 年1月1日~令和 12 月 31 日)は、合計 604 名であり、そのうち 106 名が、受入地域・受入自治体・隊員の三者のミスマッチを理由に退任しています。」とのこと。

任期途中での退任(要するに挫折)を防ぐために、「おためし地域おこし協力隊」が創られたようであるが、地域おこし協力隊の任期期間「1~3年程度」が、本来の目的である「移住定住」のお試し期間であり、移住定住を考える時間軸が違っているではなかろうか。制度設計の本質に立ち返った見直しが必要な時期に来ているのかもしれない。

地方に住むことの難しさ

地方すなわち田舎は、人が少ないが故に人間関係が濃密になる。匿名性のある都市とは違う。従って、コミュニティ、隣人との関係性がそこに住まい暮らしていく上で決定的に重要になる。

卑近な例で言えば、とある田舎の農家の親がなくなった後、相続した息子夫婦が帰ってきたまでは良かったが、その奥さん(他都市からの移住になる)がその家周辺の成り立ちを理解せず、隣人と軋轢を起こしている例がある。都市と田舎の違いがわかっていない。田舎の隣人間で揉め事があると実に悩ましい。ましてや、地域おこし協力隊のように、その地域に全く関係のない者が田舎に来る場合は、お互いが習い合い、助け合い、生活していくしかない。その上で、良い意味での「よそ者」の良さを出すことが求められる。

田舎に住むことの意味合いを理解した上で、移住定住を考えて欲しい。草取りをせずに農業ができないように、人との関わりを持たずして田舎では住めない。新たな地で社会的孤立・孤独、村八分を惹起することなく、新陳代謝による持続性に繋がる仕組みの創発を願うばかりである。