過去・現在・未来や如何 

時代を超えて

いよいよ2024年度(令和6年度)が始まった。各種組織体においては、今年度の事業計画等のスタートとなる。こうした事業計画等において、過去に学び(稽古照今)、現在の実態(現実)を見極め、未来への希望をもてる道筋を描くことが計画遂行のモチベーションとその成果を左右する。特に、昨今のように時代が大きく変容しているときには、「未来への希望」に向けたイノベーションが問われる。

(補)稽古照今:「昔のことをよく学び、現在に活かす」という意味合いで、同義的な「温故知新」が中国の「論語」由来であるのに対して、「稽古照今」は日本の「古事記」由来である。

(参考)ナイスステップな研究者から見た変化の新潮流 名古屋大学大学院人文学研究科 人文学専攻 歴史文化(考古学)准教授 中川朋美氏インタビュー -考古学がつなぐ過去・現在・未来-

しかし、日本の成長が止まった1990年代以降、現在に至るも続いている政・官・産・学における不正事案の頻発や「説明責任」の希薄化等、過去に学ばず、現在の実態を直視せず、未来への視座もない状況に遭遇することが多い。一方で、最近、既往組織の枠を超えた個人(群・コミュニティ)としての集まりに参加したときに感じる意識の高さ、未来への希望を感じさせる取組を見るにつけ、日本社会の実態と既往社会システムとのギャップについて、いろいろ考えさせられる。

参考:ダイハツ、日野自動車、東芝…不正に手を染めた名門企業の「共通点」とは? 渋谷和宏:経済ジャーナリスト、作家 2024.2.23 8:00 DIAMOND online
参考:日本学術会議「任命拒否問題」の国賠訴訟が提起 「政府の説明責任」追求と「個人の名誉」回復を目的 2024年02月20日 17:53 弁護士JPニュース

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「交通」から「モビリティ」へ、そして「つながり」への進化

日本版ライドシェアがスタート

2024年4月1日、タクシー会社の管理下で運行される条件付きの「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)」がスタートした。これは、「デジタル行財政改革 中間とりまとめ」(2023.12.20)における「地域交通の課題」を踏まえたものであるが、実態は、タクシー事業会社の業容拡大的な内容にとどまっている。「タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく」(上記 中間とりまとめ)ことと新規参入者(モビリティ事業者、MaaS事業等)に期待したい。

補:デジタル行財政改革 中間とりまとめ 2023年12月20日 デジタル行財政改革会議決定

「地域交通の課題」:「タクシー・バス等のドライバー不足が深刻化、インバウンド観光や季節・時間帯等で変動する移動需要に的確に対応するサービス提供の仕組みも不足、地域の限られたリソースを活用し、支え合って移動の足を確保する仕組みが不十分」「具体的には、都市部を含め、タクシーの配車アプリにより客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域・時期・時間帯の特定を行う。そして、これに基づき、タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを 2024 年4月から提供する(道路運送法第 78 条第3号に基づく制度の創設)。」「上記の方策について、できるものから早期に開始し、実施効果を検証するとともに、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論を進めていく。」

参考:【2024年3月29日公表】4月開始!「日本型ライドシェア」の概要と留意点について弁護士が解説 2024.04.01 法律事務所ZeLo 

参考:ライドシェア解禁の切れ味悪さ 国交省がタクシーに配慮 日経ビジネス 2024年4月1日 2:00 

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新たな平常に入ったコロナ禍対応

2019年後半頃から発生したと推定される今回のコロナ禍は、2年余で2022年3月23日には全地球に感染拡大した。そして、コロナ発生から約3年半後の2023年5月5日、WHOが「新型コロナウイルスの緊急事態宣言の終了」を発表し、その3日後(2023/05/08)には、日本においても「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」へ移行し、社会的にはコロナ禍が終了した。

世界の死亡者は694万人(2023.5.24 AM6:03時点)に達した。WHOによる2020~2021年の世界の超過死亡率推計値2.74を用いると、今回のコロナ禍における世界の超過死亡者数は統計漏れ等を考慮すると、2千万人超と推測される。
補:死亡者数 693万人✕超過死亡率2.74=1,902万人 + 統計漏れ ≒2千万人超

参考:The WHO estimates of excess mortality associated with the COVID-19 pandemic 2022年12月14日 nature
注:パンデミック状態は終了したが、新型コロナウイルスが消滅した訳ではない。直近の2024年3月31日までの 28 日間にWHOに報告された COVID-19症例数は275,553となっている。(出典:WHO COVID-19 ダッシュボード

画像今回のコロナ禍の経緯概要

 補:詳細な時系列経緯については、「新型コロナウイルス感染症 特設コーナー」 を参照ください。

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能登半島地震における気付き

令和6年能登半島地震の概要

今年の新年早々の2024年(令和6年)1月1日 16:10、マグニチュード7.6(最大震度7)の逆断層型の地震[令和6年能登半島地震]が発生し、津波(最大遡上高5.8m)、地盤隆起・移動(最大4m程度の隆起、最大2m程度の西向きの変動)、液状化(噴射、沈下)が発生した。

地震はその後も続き、M7.6 の地震の直後からの地震活動は北東-南西に延びる150 ㎞程度の範囲に広がっている。地震動の分析によると、能登半島北部はほぼ全域が震源断層の直上に位置すると分析されている。

資料:気象庁 報道発表 令和6年1月1日16時10分頃の石川県能登地方の地震について 令和6年1月1日 
資料:気象庁 報道発表「令和6年能登半島地震」について(第20報) 令和6年2月29日
資料:令和6年能登半島地震(M7.6)地震動 京都大学 防災研究所 後藤浩之 2024年1月9日 令和6年能登半島地震(M7.6)に関する速報会
資料:令和6年能登半島地震に関する情報「令和6年能登半島地震の評価」 地震調査研究推進本部 令和6年1月2日、1月15日、2月9日公表

令和6年能登半島地震被害の概要

人的・物的蟻害は、2024年4月16日14:00現在、下記のとおりである。

○人的被害:死者245人 負傷者1,302人
○住宅被害:全壊8,536棟 半壊19,015棟 一部破損88,968棟 
      床上・床下浸水25棟
○火災発生 17件
○水道被害:石川県  最大時 約 34,400戸  現在 約 5,310 戸が断水中
      その他県 最大時 約102,000戸  現在 断水解消済
○道路被害:高速道路 能越道 南向き通行止め
      補助国道 40区間通行止めのうち 30区間復旧
      都道府県道等  3県145区間通行止めのうち106区間復旧
○空港被害:滑走路閉鎖(~1/24) その間、救難機の離発着受け入れ

資料:令和6年能登半島地震に係る被害状況等について 内閣府非常災害対策本部
資料:令和6年能登半島地震 緊急復旧(道路啓開)の状況 国土交通省

経済被害(経済活動への影響)については、月例経済報告に関する関係閣僚会議(令和6年1月 25 日及び同年4月 23 日開催)で報告された令和6年能登半島地震の影響試算によると以下の通りである。

○石川県・富山県新潟県のストックの毀損額 推計値:合計1.1~2.6兆円   
              ※ストック:社会資本ストック、民間企業資本ストック、住宅ストック

○3県の令和6年1月~3月の3か月間のフローの直接損失額(GDP損失額):
                          合計約 900~1,150 億円 
サプライチェーンを通じた生産波及効果(派生的な生産減)による損失額: 
                             約 700~850 億円

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増田レポート「消滅可能性都市」の問いかけや如何

第2弾の増田レポート 発表

2024年4月24日、「消滅可能性自治体」に関する第2弾のレポートが発表された。「消滅可能性自治体」数は、第1弾(2014.5.8)のときの896自治体から744自治体に改善しているが、その原因は外国人増(入国超過数増)によるものであり、日本人人口でみれば、楽観視はできないとしている。そして、「全般的に見れば、人口規模の大きい自治体は自然減対策が、また、小さい自治体は社会減対策と自然減対策の両方が必要だといえる。」と人口規模に応じた指摘をしている。

第1弾 資料:成長を続ける21世紀のために 「ストップ少子化・地方元気戦略」 平成26年5月8日 日本創成会議・人口減少問題検討分科会 
第2弾 資料:令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート ―新たな地域別将来推計人口から分かる自治体の実情と課題― 令和6年4月24日 人口戦略会議
関連:【人口戦略会議・公表資料】『地方自治体「持続可能性」分析レポート』2024.04.24 一般社団法人北海道総合研究調査会(人口戦略会議 事務局補佐役)

 前回同様に論議を呼んでいるが、これはあくまでも基礎自治体(市区町村)という行政界をベースとした「地方自治体の持続可能性」分析である。そもそも「境界」は人類が定住生活を行い、護るべきストックを持ち始めたことに起因するとされる。国としての「国境」は戦争をも引き起こす。過去の人類(民族・国家等)の戦争の結果が国境に投影されている。それでは、国内における地方自治体(特に、基礎自治体)の境界、つまりは「地方自治体」とは何を意味するのか。

 関連:“消滅する可能性がある”744自治体 全体の4割に 人口戦略会議 2024年4月24日 16時09分 NHK
関連:「“消滅可能性” 自治体の努力に水を差す」全国町村会が批判 2024年4月26日 18時39分 NHK

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土地利用の前に土地管理を

空き家問題に潜む土地管理問題

最新の住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在値)の速報値が2024年4月30日には発表された。これによると、「我が国の総住宅数は6,502万戸(2023年10月1日現在)、2018年から4.2%(261万戸)の増加」の一方で、「空き家数は900万戸と過去最多、2018年から51万戸の増加、空き家率も13.8%と過去最高」。空き家の中で特に問題となる「 賃貸・売却用や二次的住宅(別荘など)を除く空き家が37万戸の増加」という状況になっている。

わが国の人口・世帯構造の動向からみて、今後も空き家が増えるのは確実であり、その相続絡みでの土地・建物の管理放棄(含む農地・山林の耕作放棄・手入れ放棄を含む)、所有権放棄・不明(すなわち、管理者不在)もまた増加し、社会問題化するのは必至である。これを受けて、関連対策が取られ始めている。

参考:多死社会で増加する相続をめぐる課題 ― 家族・社会の変化を踏まえた対応を ― 2024 年 3 月 25 日 ㈱日本総合研究所
参考:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)令和5年10月31日 法務省
参考:所有者不明土地法の見直しに向けた方向性のとりまとめ 令和3年 12 月 国土審議会土地政策分科会企画部会
参考:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成 30 年法律第 49 号)
 
しかし、空き家が建っている土地そのものに関する事実データ(地籍)の把握が不十分であることについての認識、危機感が行政(特に、基礎自治体)、国民/住民ともに薄い。災害時等の対応、防衛上の観点から大きな課題となっている。加えて、時代環境にあった土地利用をどうするかの枠組み/仕組みについての本質的な議論も十分ではない。

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地方創生の行く末

地方創生の経緯

2024/5/9、『岸田文雄首相が看板政策としてきた「デジタル田園都市国家構想(デジ田)」が今年の施政方針演説から消え、関係者の間に衝撃が走った。デジ田に代わり、「デジタル行財政改革」だった。』(毎日新聞)と報じられた。

出典:地方創生、消えた「デジ田」 始動10年、成果乏しく迷走 2024/5/9 毎日新聞 

「地方創生」は、国土全体の計画の中での地方のあり方に関する一連の政策の流れの中で、いわゆる「日本創成会議 増田レポート(2014年5月)」で警鐘された「消滅可能性都市」を背景の一つとし、2014年6月14日、安倍首相が視察先で記者団に対し、地方を活性化させるため、自らをトップとする「地方創生本部」を新設すると表明し、「地方創生」というワード(政策用語)が誕生した。

地方創生政策は、第1期(2014年~2019年)が終わり、現在、第2期(2020年~2024年~)に入っている。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」も2020年12月に改定された。そして、岸田内閣において、「デジタル田園都市構想」が打ち出されたが、それが今年の施政方針演説から消えたという次第である。

定住人口ベースの東京一極集中が是正されない中、「インバウンド」が注目され、国内的には「関係人口」なる概念が打ち出される。コロナ禍においては、「テレワーク」が注目される。最近は、「定住なき移住」として、副業/兼業、プロボノ、兼居/二地域居住、サイバー住民等「新たな働き方・暮らし方・住まい方」に絡んだ動きも起きている。

「地方創生は、出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的としています。
現在、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局と内閣府地方創生推進事務局とが両輪となって、地方創生の推進に向けた施策に政府一丸となって取り組んでいます。」 出典:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生

関連:第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020改訂版)について ~感染症の影響を踏まえた今後の地方創生~ 令和2年12月 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 内閣府地方創生推進事務局
参考:【#論点提起】 増田レポート「消滅可能性都市」の問いかけや如何 芝原靖典 2024年5月2日 11:54 note 

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我が国における社会的孤立・孤独に関する政策とデータ

政策動向

最近、社会的孤立・孤独が社会問題化している。社会的孤立・孤独の構造的背景として、社会経済の低迷(可処分所得が伸びない)、雇用形態の変質(将来が安定しない/希望が持てない非正規雇用の拡大)、生活環境の変化(デジタル化)、人口・世帯構造の変化(人口減少、少子高齢化核家族化、未婚化・晩婚化、独居高齢者増加)等に伴い、働き方、住まい方、暮らし方が変化し、従来の地縁・血縁等の「人のつながりの希薄化」の進展が基底にある。

そうした急激な構造的背景が相まって進行している折に、2019年(令和元年)末から、コロナ禍が発生し、国際的な移動の遮断、そして国内的には一斉休校措置、休業要請、外出自粛要請が行われ、非正規雇用者を中心に雇用環境の悪化、加えて各種の社会的支援活動も縮小・停止に追い込まれ、生活/経済弱者を中心に大きな影響(例えば、家族や周囲の人に相談ができずにひとりで出産したのちに乳幼児を遺棄した人やヤングケアラー、介護殺人、虐待、自殺等)が出た。加えて、自宅での時間が増えたことは、家族/家庭内での過ごし方の変化をもたらし、コミュニケーションや相互への理解が向上する反面、逆作用の問題を励起・顕在化させた。

こうした事象の顕在化が「社会的孤立・孤独」を社会問題として認識さすことになり、2021年(令和3年)2月に「孤独・孤立対策担当大臣」を指名して同大臣が司令塔となり、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置した。同年3月以降、孤独・孤立対策担当大臣を議長とし、全省庁の副大臣で構成する「孤独・孤立対策に関する連絡調整会議」を定期的に開催している。

2021年(令和3年)6月には、「経済財政運営と改革の基本方針 2021」が閣議決定され、2024年(令和6年)4月1日、「孤独・孤立対策推進法(令和5年5月31日成立 令和5年6月7日公布)」が施行されるに至っている。

孤独・孤立対策推進法 

   Act on the Advancement of Measures to Address Loneliness and Isolation

(基本理念)第一条 この法律は、社会の変化により個人と社会及び他者との関わりが希薄になる中で、日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態(以下「孤独・孤立の状態」という。)にある者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、孤独・孤立の状態となることの予防、孤独・孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援その他孤独・孤立の状態から脱却することに資する取組(以下「孤独・孤立対策」という。)について、その基本理念、国等の責務及び施策の基本となる事項を定めるとともに、孤独・孤立対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進することを目的とする。

(基本理念)第二条 孤独・孤立対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

一 孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会の変化により孤独・孤立の状態にある者の問題が深刻な状況にあることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者の問題が社会全体の課題であるとの認識の下に、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要であることを旨とすること。

二 孤独・孤立の状態となる要因及び孤独・孤立の状態が多様であることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者及びその家族等(以下「当事者等」という。)の立場に立って、当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われるようにすることを旨とすること。

三 当事者等に対しては、その意向に沿って当事者等が社会及び他者との関わりを持つことにより孤独・孤立の状態から脱却して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようになることを目標として、必要な支援が行われるようにすることを旨とすること。

出典:孤独・孤立対策 内閣府 

参考:孤独・孤立対策の重点計画 令和3年12月28日 孤独・孤立対策推進会議決定

参考:日本における孤独・孤立の現状と対策 堀 純子 / 国立国会図書館調査及び立法考査局専門調査員 議会官庁資料調査室主任 レファレンス(The Reference) 2023-2-20 国立国会図書館 調査及び立法考査局

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ゆるやかにつながる居場所づくりや如何

孤独と孤立

最近、「孤立死 / 孤独死 / 無縁死 / 独居死」の記事を目にするようになった。用語的には、「孤独」は心情的/主観的状況表現であり、他人からみて本当に「望まない孤独」であったかどうかはわからない。これに対して「孤立 / 無縁 / 独居」は外部からみえる客観的状況表現と云える。

参考:高齢者の「孤独死」6.8万人 年間推計、警察庁が初調査 時事通信 2024年05月14日 JIJI.COM 

参考:海外における邦人の孤独・孤立に関する実態把握のための調査 外務省 2024年6月3日

最新の内閣府の全国調査(参照:note 【#社会的孤立・孤独】我が国における社会的孤立・孤独に関する政策とデータ)によると、「孤立」の状況については、

  • 同居していない家族や友人たちと直接会って話すことが「全くない」と答えた人の割合は9.2%
  • 社会活動への参加は「特に参加はしていない」と答えた人の割合が51.8%
  • 日常生活に不安や悩みを感じていることが「ある」にも関わらず、「支援を受けていない」と答えた人の割合は86.7%

となっている。最後の「支援を受けていない」理由として、「支援が必要ではないため」(63.7%)が最も多いが、この認識自体が孤立化の前兆なのかもしれない。「声を上げられない」「声を上げたいと思わない」という最も難しい実態把握の壁とも理解できる。

一方、孤独感は、「男女・年齢階級別にみると、男性では30歳代及び40歳代、女性では20歳代で高い」。そして、現在の孤独感に影響を与えた思う出来事の上位は、「家族との死別」、「一人暮らし」、「心身の重大なトラブル(病気・怪我等)」となっている。つまり、全世代問題である。

資料:人々のつながりに関する基礎調査 -令和3年、4年- 調査結果に関する有識者による考察 令和5年10月 孤独・孤立の実態把握に関する研究会

最近は、自然災害の激甚化等の影響もあり、避難先が広域化したり、避難先での生活が長期化する中で、生活環境激変による新たなタイプの孤独・孤立が生じ、問題となっている。

参考:能登半島地震発生から5か月 災害関連死や孤立を防ぐ対策が課題 2024年6月1日 5時46分 NHK 

参考:門前の仮設で孤独死 5月中旬、持病抱え 県内で初判明、4月入居の70代女性 2024/5/28 05:00 北國新聞DIGITAL 

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なぜ不正が発生するのか、なくならないのか

自動車メーカーの不正

日本の自動車メーカーは、製造品出荷額は56兆円(2021年)、自動車輸出金額 17.3兆円(2022年)、そして自動車関連産業の就業人口 554万人(2022年)を要する日本の基幹産業である。

その自動車メーカー業界で、ダイハツの不正(2023年5月)を端緒に、自動車メーカー業界全体に渡る「型式認証不正」が明らかになり、規制の問題なのか、メーカー側の問題なのか、規制に対する認識のギャップ等もあり、論議を起こしている。

国土交通省の調査により、5社(トヨタ自動車㈱、マツダ㈱、ヤマハ発動機㈱、本田技研工業㈱、スズキ㈱)から、不正行為の報告(トヨタを含む17社は調査継続)があり、その後、立入検査も実施された。

[追記]資料:国交省、認証不正行為でマツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキ4社の立入検査の結果公表 マツダ、ヤマハへの出荷停止指示を解除 2024年6月28日 22:38 Car watch
資料:ダイハツ工業の型式指定申請における不正行為について 令和6年4月19日時点 国土交通省 
資料:自動車メーカー等の調査報告の結果等について 令和6年6月3日 国土交通省物 流・自動車局審査・リコール課 
参考:なぜ自動車メーカーはこぞって「型式認証不正」に手を染めたのか、制度改革のチャンスを逃し続けてきたツケ 2024.6.5(水) 井元 康一郎

特に、トヨタグループでは、最近、ダイハツ以外にも不正が相次いでいる。「日野自動車2001年トヨタの子会社化)によるエンジン性能試験を巡る不正が2003年から行われていた」ことや、ダイハツ1998年トヨタの子会社化)の不正が急増したのは、「開発期間の短縮強行と業務量の急増が同時に起こった2014年以降」と報道されている。

出典:トヨタG揺らぐ信頼、豊田自動織機社長「現場任せきり」2024/01/30 読売新聞オンライン

参考:トヨタも起こした認証不正 「焦りが『解決したふり』の誘惑を生む」藤本隆宏教授 早大院・藤本教授が説く不正のメカニズム(上)2024.7.1 日経ビジネス

参考:トヨタ系、下請け50社に金型を無償で長期保管させる…最大30年・被害総額は数億円の可能性 2024/06/30 05:00 読売新聞オンライン
参考:第49回:国交省を再直撃! 結局なにが問題なのか? トヨタは悪くない……は本当なのか? 2024.06.17 webCG

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