「ふるさと納税」と「道の駅」

ふるさと納税については、本ブログでも過去2度言及したが、いま、ふるさと納税制度が大きく変質しつつある。
 2015-02-25 ふるさと納税の仕組みと効用
 2017-09-17 ふるさと納税のその後

 

ふるさと納税」の今そして今後

令和元年5月14日付けで「ふるさと納税に係る総務大臣の指定について」が指定され、令和元年6月1日以降、ふるさと納税の対象とならない団体として5団体 [東京都、小山町静岡県)、泉佐野市(大阪府)、高野町和歌山県)、みやき町佐賀県)]が指定された。

ふるさと納税制度についていろいろな立ち場で種々云われているが、制度設計に関わっていた高橋洋一氏(当時、内閣参事官)によると、「制度が画期的なのは、寄付金と税額控除の仕組みを合わせているので、事実上税の使い方を国民(寄付者)が選ぶことができることだ。」「ふるさと納税のような制度は、官僚主導のカネの配分よりマシ」「全体の控除額は個人住民税収12兆8235億円の2%程度のものだ。この程度なら、住民税の根幹を揺るがすことはない。」とのこと。

ふるさと納税で潤った自治体の特別交付税を減額した総務省の「狭量」、DIAMOND online、2019.4.18


去年から最近の「ふるさと納税」に関する動きは、返礼品発掘に汗をかく自治体や過剰な還元率による競争激化の一方で、体験型の返礼品や2016年の熊本地震以降は義援金としてふるさと納税が利用されたりと、進化・多様化している。

総務省により消滅もある!?お得な「ふるさと納税」返礼品たち、女性自身、livedoorNEWS 、2018年8月18日
ふるさと納税でジンベイザメとのダイビングまで登場、返礼品が大激変、DIAMOND online、2018.11.15
泉佐野市のふるさと納税はやり過ぎなのか 許認可制は自治体の創意工夫を殺す、PRESIDENT Online、2019.5.22
ふるさと納税「流出額」19年度2割増 本紙調査、日本経済新聞、2019/5/22

ふるさと納税は、税控除と返礼品を呼び水とした直接目的税的制度と云えるものであり、自治体にとってみれば、総務省が自ら云っている「関係人口」の拡大につながる。自治体の努力もあり、最近、大いに盛り上がっていたところである。盛り上がると云うことは、お金が地方を絡めて廻っているということであり、経済活性化に繋がる。小生の娘もこの制度を利用して、美味しいお米やお肉を返礼品として入手している。その一部を、実家にも持ってきてくれるという連鎖的波及効果もある。

盛り上がってきたところで、一部マスコミのあおり報道もあり、総務省がいろいろと制約条件を出してきたというのが実態ではないだろうか。まだ、ふるさと納税の利用者は2割程度で、寄付総額も制度上の総枠の一部にしか達していない状況である。地方創生と云う観点から見ると、ようやく盛り上がってきたこの段階で総務省は余り口を出さない方が良いのではなかろうか。

返礼品発掘・拡充は,かっての一村一品運動に似たような地元のリソースを見直す良い機会になっている。自治体の自主財源の拡充にもなっている。まさに、地方創生に繋がっている。早晩、過当競争と云われる状況も制度運用が熟せば落ち着くし、自然淘汰されるのではなかろうか。

参考になる「道の駅」

「ふるさとの納税」の今後に向けて、「道の駅」が参考になる。道の駅は、道路管理者が一般道路の道路区域に休憩施設としてトイレと駐車場の設置を規定するのみで、隣接したエリアと一体的に地元自治体等が自由に運営しているが、いまや全国816自治体で1,154箇所も設置されるまでに普及している。それだけ、地元住民や全国からの来場者の支持があったということである。

道の駅が当初の制度設計時の思惑を超えて、どんどんと進化し、多様化し、いまや地方創生の拠点化、地域防災の拠点化として成長している。その理由は、規制を最低限にし、地元地域の自主性に任せたところにあるのではなかろうか。もちろん、儲かっている駅、儲かっていない駅、機能している駅、機能していない駅等、地元の努力次第である。

道の駅の実態については、第4回Japaフォーラム の 道場からみた地方創生の課題 ~「道の駅」による地方創生を更に加速する新たな取り組み~ に詳しい。


ふるさと納税制度を取り扱うポータルサイトはバーチャルな「道の駅」と見なせる。総務省は、自治体ではなく、ポータルサイトの運営者にこそ、制度趣旨に適った運用をするべく協力要請すべきでなかろうか。自治体を萎縮させては、自律した自治体への動きを抑制することになり、地方分権・地方創生にはならない。ひいては日本の活性化にならない。智恵を絞って欲しい。