空き家等活用の中間支援機能体の意義と必要性

空き家問題の本質

昨今、空き家が問題となっている。特に、問題とすべきは「二次的利用、賃貸用又は売却用の住宅を除いた長期にわたって不在の住宅などの『居住目的のない空き家』(2018年 349万戸)であり、この20年で約1.9倍に増加している。

出典:空き家の現状と対策・改正空家法について 令和5年7月 国土交通省 土地総合研究 2023年夏号 
   平成26年空家実態調査 集計結果について 平成27年11月20日 国土交通省 住宅局 

すでに空き家になっているものだけでなく、お盆や年末の帰省先となるふるさとの親が住んでいる実家も、実家を引き継ぎ、移り住んだり、二地域居住や管理している家族がいたり、あるいは売却できるだけの市場性があればいいが、そうでなければ、親の介護施設等入居、死亡等により、いずれ実家は確実に空家化する。いわゆる空家予備軍である。そして、空家の放置が進めば特定空家化し、外部不経済を周りに及ぼす。コニュニティ内にそうした空家が増えれば、コミュニティの維持が難しくなる。少子・高齢化の進展と、親元を離れての子供の独立(親の独居高齢世帯化)・新築住宅指向がその構造的背景にある。

詳:「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。空家等対策特別措置法 第二条2) 

このため、空き家対策の強化が謳われているが、まち場の空家・空き地(住宅、店舗、事務所、工場、工房/アトリエ等)だけではなく、空き農家・空き農地、耕作放棄地、利活用されない里山も、同様な問題・課題を抱えている。

加えて、国土の約7割を占める森林域(深山・里山)、特に里山(森林の約3割、全国土の約2割)の手入れ放棄・所有権不明(放棄地化)は、昨今の鳥獣被害(猪、鹿、熊等)の抑止(農作物・住民被害)や、流域治水対策等の面からも重要である。

個別個別の空きリソースの対策はもちろん欠かせないが、それ以上にリソース群(面というよりもネットワーク群)として、まちづくり的な観点から、その対策・活用を考えるべきではなかろうか。

中間支援機能体

そうした主体/受け皿/プラットフォームとして、農地については、農地中間管理機構(農地バンク)、空き家・空き地については空き家・空き地バンクがある。公的な事業用地については土地開発公社がある。いずれも、公的主体主導による運営であり、民間施設・民地活用に必要な個別ユニークな対応への柔軟性・迅速性等の観点から限界がある。本当は、役目の終わった土地開発公社を「土地管理活用公社」に衣替えすればいいのだが、それを運営できる自治体は少ないと思われる。

こうしたことを勘案すると、公共でも純民間でもない「中間支援機能体」の創設・活用が望ましい。ここで、「機能体」という用語を使用しているのは、「組織」だけでなく、「人」が機能を体現している場合もあることを含意している。

中間支援機能体とは、地域の課題解決や市民活動を支援する機能体であり、市民、NPO、企業、行政などの間に立って、中立的な立場からコーディネートや情報提供、資源の仲介、政策提言などを行うものである。行政主導ではない形態として、地域コンソーシアム型、民間主導型、大学主導型などがある。
参考:「中間支援組織」ってなんやねん NPO CROSS 2021年1月28日 
        地域に根差した中間支援組織・機能の重要性 特定NPO法人エティック 

まちづくり等への貢献を視野に入れた地域の遊休リソース(群)の活用を考えると、民主道型の地域コンソーシアムが適している。例えば、下図のようなスキームが考えられる。

空家群等活用まちづくり推進のための中間支援機能体のスキーム例

中間支援機能体である「(一社)〇〇地域空き家等活用まちづくり機構」は、民間施設・土地のオーナーから信頼され、施設・土地を預かり、維持・運用していくには、地域再生推進法人空家等管理活用支援法人等の指定を受けるのが望ましい。それにより、行政の空き家バンクやふるさと納税活用形のクラウドファンディング等との連携も行いやすくなる。

地方自治体の特性に応じて、こうした中間支援機能体の創設は、レジリエントな地方創生のエンジン役を生み出す仕組みの構築にもつながる。そういう流れが起きることを期待し、支援したい。