高齢者の住まい方「シニア・シェアハウス」について

高齢者を取り巻く環境

わが国は、1990年以降、経済活動の低迷が続く中、総人口減少・少子・長寿社会化が進展し、人々の暮らし方、住まい方、働き方、そしてまちづくりのあり方が問われている。加えて、コロナ禍は、ソーシャルディスタンス、外出自粛という新たな様式を強いることとなり、「私」の空間(住まい等建物空間)と「公」の空間(まち空間)間(私)とまち空間(公)の関係性の見直しを迫っている。

 

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特に、都市郊外や地方・地域においては、ライフスタイルの変化による遊休資産の増加、後期高齢者の増加、そしてそれらに起因する地域コミュニティの維持・活性化の困難化(地方創生問題)等の社会課題が励起している。

遊休資産とは、空家・空地だけでなく、空き農家・農地、放棄里山等、及び十分な機能発揮がされていない施設等であり、地方・地域においては大きな問題となっている。

後期高齢者は単独世帯が太宗であり、人口構造上のボリュームゾーンである団塊の世代が2022年には後期高齢者入りする。そして、要介護者比率は加齢と共に急速に高まり、自助の限界を超えてくる。たとえ健康であっても、独居高齢者の賃貸住居への入居も厳しい状況にある。コロナ禍により、社会的孤立の増加という新たな課題も生じている。

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包摂的解決に向けて

増える遊休資産を如何に活用(資産化)するか、太宗化する独居高齢者(特に、後期高齢者)の健康・生きがいの維持をどうするか、担い手のいなくなる地域コミュニティの維持・活性化をどうするか、個々には問題分析、仕組み検討がなされてきたが、実践は限定的であり、課題解消には至っていない。

空家問題、高齢者問題(特に、後期高齢者)、そして地域コミュニティ問題は連動しており、その包摂的な解決が要請されている。そこにおいて、「互助」的仕組みだけでは持続性等に限界があり、「ソーシャルビジネス」化が不可避である。

この一つのの方策が、空家(群)を活用したソーシャルビジネスとしてのシニアシェアハウス事業である。(一財)高齢者住宅財団の「地域善隣事業(空き家を活用した住まいの確保と住まい方支援)」に近いものである。

更に云えば、シニアシェアハウスを単なる箱(「私」の空間)ではなく、シニアシェアハウス内シェア空間 ⇒ まちなかシェア空間化 ⇒ 建物とまち空間の融合化、と云う仕組みを考えることにより、地域コミュニティ / シェアリングエコノミーの一つの拠点となし得る。

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近隣の空家(含むシェアハウス移転者の所有空家)、空き農地、里山等とネットワーク化した活用形態を考えれば、アルベルゴ ディフーゾ(Albergo Diffuso まちぐるみ旅館)のシニア居住版である。これは、新規・大規模集約型CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは異なる地方・地域に応じた展開がしやすい空家活用・小規模分散型CCAC(Continuing Care Active Ageing Community)である。  
注:アクティブ・エイジングとは、人びとが歳(年)を重ねても生活の質が向上するように、健康と参加と安全のチャンス(機会)をもっともふさわしいように(=最適化する)過程のこと

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ビジネス的にみれば、シニア層はわが国の人口構成上のボリュームゾーン団塊の世代:2019年618万人)であり、遊休資産は空家だけでも846万戸(H30年値)存在する。発想を変えれば、宝の山であり、ブルーオーション(競争相手のいない未開拓の市場)である。これができれば、他のシェアハウス/オフィス的展開も可能であり、それらの重畳的組み合わせは、ビジネス性を高めることになる。


こうした取り組みは、SDGsの理念「誰一人取り残さない」に適うものであり、「Society 5.0 for SDGs」の具体的実践にもなる。興味ある企業等に是非考えて欲しいし、自らも取り組んでみたい。