出生率1.8を達成するには

「希望出生率1.8」の難しさを実感

2年前の本ブログで、娘が一人目の子供を出産した際に、「子育て支援雑感」を書いたが、年末にその娘に二人目の子供が生まれた。前回と同じように、出産1ヶ月前頃から、出産帰省したが、今回は前回と違って、2歳になる孫と一緒である。二人目の子供を産むことの大変さ、すなわち、新アベノミクスが標榜する「希望出生率1.8」の難しさを実感した。

アベノミクス5年と今後の政策課題 ~長期政権で引き続き目指す日本経済の「真の夜明け」~、みずほ総合研究所、2017.12.21

 

何が難しさの根源か

希望出生率1.8の実現に向けては、結婚、出産、子育てのそれぞれの段階に応じた種々の議論・提案・制度設計がなされている。
内閣府 子ども・子育て支援新制度
希望出生率 1.8 の実現を考える ― 1 億総活躍社会の盲点を突く(2)、(株)日本総合研究所、2016年1月29日

喫緊の課題として、待機児童ゼロに向けての保育所等の整備が謳われているが、これは当然のインフラ的環境整備であり、余計な規制をかけず、地域コミュニティや企業コミュニティ等を含め、多様な形態での保育所等の設置・運営を認めるべきである。こうした最低限の子育てインフラ環境はシビルミニマムとして整備するべきである。この環境がなければ、出生率1.0(第1子)さえ期待できない。あるいは、結婚・出産退職を惹起する。

その上で、重要なポイントが、第2子(出生率2.0)以上の出産前後の上の子のケアをどうするかではなかろうか。すなわち、複数出生する場合、出産と子育てが重なるのである。国全体としての希望出生率1.8の実現の最大の課題はどうもこの点にありそうである。

卑近な事例(娘)で云うと、二人目の子供を出産する前後各1ヶ月程、上の子(2歳)の面倒をみるのが実は大変である。何が大変かと云うと、2歳の上の子だけを残しては出産帰省できないので、一緒に帰省することになるのだが、帰省している間は通っていた保育園に行けない。従って、終日、我が家で過ごす上の子を成育上、昼間はできるだけ外に散歩に連れ出してあげないといけない。夜は夜で、なかなか寝ない上に夜泣きをするので、面倒を見ている方も寝不足状態になる。孫はかわいいが、この状態が出産の前後各1ヶ月続くと、なかなかきつい。

出産帰省に係る保育受入体制の整備を

こういう実態をみると、少なくとも、出産帰省に伴い一緒に帰省する上の子を帰省先近傍保育園で短期(2ヶ月ほど)受入ができれば、親は安心して二人目の子供を産める。実家の親も助かる。通常の預かり時間の長さでなく、もっと短い短時間預かりだけでも助かる。2箇所の保育園費が発生するため、出産帰省受け入れ側の保育園費は無料になるように補助する仕組みが必要となる。

保育所そのものが足りない状況下では無理では、と云う意見が出てきそうであるが、教育費無償化の前に、まずは出産・保育に係る仕組みの充実の方が優先されるべきである。順序が逆ではなかろうか。

「近居」の有効性

さらに、2人以上の子供を産んだとしても、その後の子育てを考えると、母親の正規雇用での就業は難しそうである。小さな子供はすぐに熱を出すし、熱が出れば保育園は預かってくれないので、親が休んで面倒をみるか、実家の親に頼むしかない。ましてや、三交代制の準夜勤や夜勤の勤務のある職業は特に難しそうである。この意味で、実家の近くに親子が住む「近居」は子育て世帯に有効である。これは、実家の親の介護と云った面からも有効である。わが家は、「近居」ではないが、同様の効果をもたらす「同じ鉄道路線の駅近傍」に親世帯と子供3世帯が住んでいる。

働き方の多様化を

子育て女性が安心して働ける子育て環境の整備は、まずは働き方の多様化(在宅を含めた就業形態の多様化、就業時間の柔軟化等)がなければ成り立たない。加えて、地域コミュニティ、企業等事業主体コミュニティの協力(共助)が不可欠である。特に、地域コミュニティにおけるシニアは若い子育て世代の保育(コミュニティビジネス)の担い手となりうる。こうした流れの結果として、将来を担う子供が維持され、社会の活性化が維持されるのではなかろうか。

 

娘の一人目(2歳)の子供の寝顔を、そして皮がむけ始めた(新生児落屑)二人目の子供(0ヶ月)をみながら、思いを馳せた。自らは5人兄弟で、併せて12人の子供ができた。わが家は3人の子供で、今日現在3人の孫である。娘は、「三人目は絶対無理」という、・・・。