コロナ禍の諸相

コロナ禍対応の現状

今月一杯(2021年5月31日)まで、新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言が出されている。2021年5月9日時点で日本の9割以上が英国由来の変異株に置き換わり、その感染力、重症化はより強くなることが予想されている。ワクチン接種もこれから本格化すると思われるが未だそのスケジュールは曖昧である。オリンピック・パラリンピック2020東京の開催の是非の議論も表面化し始めた。

 参考1:全国で9割以上が英国由来の変異株に置き換わり 感染研まとめ 毎日新聞 2021/5/12 20:59(最終更新 5/13 14:53)

参考2:政府の取り組み 厚生労働省 

参考3:チャートで見る日本の接種状況 コロナワクチン 日本経済新聞 <随時更新>

医療従事者のうち新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は7割に達した。2回接種完了は5月13日時点で3割。高齢者向けのワクチン接種も本格化するなか、約480万人の医療従事者への接種完了が課題となっている。

参考4:新型コロナウイルスワクチン 日本国内の開発・接種状況は(5月14日更新) 2021/05/14Ansews News 

「政府のまとめによると、5月12日時点の接種実績は計527万4683回。うち医療従事者は466万9140回(139万4574回は2回目)、高齢者は60万5543回(3万5392回は2回目)となっています。少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の人口に占める割合は3.0%、2回のワクチン接種を完了した人の割合は1.1%です。」

参考5:ネットサロン ヒューストン在住IT会社経営者 2021年4月28日 

「米国では医療関係者と同等に米軍、警察、消防については最優先でワクチン接種を終了させています。国としての優先順位で国家安全保障が最優先ですので当然の結果です。」

コロナ禍がもたらした専門的用語と社会的用語の流布

コロナ禍によって、それまで一般的にはあまり使用されていなかった専門的用語や社会的養護が使用され流布された。その代表的な3つの用語を以下に記す。

行動変容:心理学、経済学、科学、工学(計画学、安全学等)、医学、そしてビジネス等の分野において、使用されていた専門用語である。

参考:Google Scholar 「行動変容 学問」

そもそも、「変容」とは、「全体の様子がすっかり変わること。また、変えること。」(第七版『新明解国語辞典』より)。そして、親しい用語の「変化」とは、「時間的・空間的な推移によって物事の性質や状態などに違いが現れること。(第七版『新明解国語辞典』より)」。つまり、変容とは自らの意思で変わろうとすることであり、その結果事象として「変化」が認識される、と云える。今回のコロナ禍対応で云われる三密回避、外出自粛/ステイホーム、手指洗徹底、マスク着用、テレワーク等々は、行動を自ら変えましょうという意味で「行動変容」が適切であると言える。しかし、この「変容」という用語を初めて知り、初めて使用した人が多かったのではなかろうか。

「超過死亡数/過小死亡数」:恐らくこの用語も、今回のコロナ禍騒動の中で、一般社会に知らされた専門用語である。国立感染症研究所によると、「過去のデータをもとに統計モデルから予測された死亡数」と「実際に観測された死亡数」の差として定義される。今回のコロナ禍下での日本の死亡者の原因、影響の程度の議論の際にこの超過/過小死亡者数が鍵となる。

資料:我が国におけるすべての死因を含む超過死亡数および過少死亡数 (2020年11月までのデータ分析)掲載日:2021年3月5日 国立感染症研究所 感染症疫学センター

「2020年11月時点でも日本のすべての死因を含む超過死亡数は、おおよそ同時期の米国およびヨーロッパにおけるそれよりも相対的に小さい可能性があります。一方で、同時点の過少死亡数は例年より大きく、新型コロナウイルス対策等で例年以上の感染症対策や健康管理が行われている状況の中、それらの正の影響が考えられますが、季節性インフルエンザの流行状況の影響等、2020年の過少死亡数が偶然起こりうる範囲のものかどうかも含め、今後死因別の詳細なデータ解析が必要になります。」

「観測された過少死亡数は、主に以下の内訳等の死亡数の減少分の総和と解釈できます。

 「ネットデモ」:これは、コロナ禍で街頭デモなどが難しい中、ネット(SNS)上で行われるデモのこと。現在、東京五輪組織委員会日本看護協会に500人の看護師の「動員」を要請したことに対して、ネット上でデモが広がっていると報じられている。

参考:五輪500人“動員”に看護師決起 「反対」のネットデモ拡大中 公開日:2021/04/30 14:20 更新日:2021/04/30 16:25 

そもそもは、「中東諸国の民主化運動「アラブの春」や経済格差に反発する米国の「オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)」運動など2010年代から本格化した。当時のネット利用は主に街頭での集会につなげるためだった。コロナ禍では人が集まることが難しくなり、オンラインが「集会」の場になった。」とのこと。

出典:ネットで続くデモ ゲーム感覚が現実世界に流れ込む危うさ 木許はるみ 毎日新聞 2021/3/30 11:30(最終更新 3/30 12:52)

2019年の香港デモもこの流れにあると考えられる。中国政府は、リアル、ネット双方でデモを制圧した。かたや、米国のトランプ前大統領は、一人ツィッターデモをしていたのかもしれない。煽られた支持者はネットでもリアルでも色々物議を醸した。

見直される「お一人様」

NHKが「先人たちの底力」という番組で、2週に渡って、お一人様の実践者(先人)を紹介した。

鴨長明 ひとりを愉(たの)しむ〜不条理な世を生きる極意」【放送日時】2021年4月6日(火)22:00~22:45」

八方塞がりな時代に「ひとり」を実践し豊かに生きた達人がいた!「方丈記」で有名な鴨長明。達観者と思われがちだが実像は処世術が下手で、内に籠もりがちな性向。当時は自然災害が相次ぎ、死や貧困などネガティブ要素満載な平安末期。その中で個の時間の大切さを見出し自分に楽な生き方を模索した極意とは?

兼好法師 ひとりを愉(たの)しむ〜自分の居場所を作る極意」【放送日時】2021年4月13日(火)22:00~22:45 

兼好法師がおひとりさまを始めたのは30歳!ねらいは「キャリアアップ」。多くの著名人が座右の書とし、現代でも社会人のバイブルとして注目される「徒然草」。自分探しの旅ではなく、今あるこの自分を見つめ直すことで、今を真剣に楽しんでいく…兼好流の乱世で自分を生かす極意・知恵とは?

そして、大人の男のあり方を説くエッセー「大人の流儀」(講談社)が売れている。シリーズは10巻目に入り、累計発行部数は200万部を突破。最新刊のタイトルは「ひとりをたのしむ」。

コロナが、「人間にはひとりになる状況がいや応なしにやって来て、ひとりで生きることと向き合わなければならない時が必ず来る。ひとりで生きる心構え、覚悟があれば、その時が訪れても慌てふためいたり、ヒステリックになることはない。そう思うようになりましたね」「常識で物が考えられないというか、コロナは人間の冷静さを失わせている。コロナに関して明確な答えを示せた人はまだいないわけだから。果てはコピーライターが考えるような『ウィズコロナ』なんて言い始めた。〈バカ野郎、なんで一緒に歩かなきゃいけないんだ〉〈必ず負かして社会の隅に追いやらなきゃダメだろ〉って言うべきなんだけど、いま論客がいないからね。」

出典:伊集院静氏「ひとりで生きること」と向き合う時は必ず来る 公開日:2021/05/04 06:00 更新日:2021/05/04 06:00

 

コロナ禍がまだ1年ほど続くと見込まれる今、静かに深く物事の本質を考えてみたい。今は、そういう時期かもしれない。