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消費税、年金、そして定年延長にみる制度設計の問題

最近、国民の生き方、働き方、ひいては人生設計に影響する仕組みの問題とその論議のされ方が非常に気になる。

東日本大震災の復興支援の財源確保という増税の目的と実際の使途のギャップ。このギャップをみると、まもなく始まる消費税増税決定時の社会保障目的税化の趣旨が本当に実践されるかどうか心配になる。一方で、過剰規制と思しき消費税還元セール禁止の特措法の成立。

消えた年金問題の解明、問題解消の確認も十分なされないまま、関連組織を改廃再編し、なし崩し的にうやむやにする一方、年金支給開始年齢の引き上げが始まったばかりか、早くも更なる支給開始年齢の引き上げが議論されている。そして、年金支給開始年齢と定年退職年齢のギャップを埋めるべく65歳定年への制度設計がなされ、さらには70歳定年への延長を奨励する動きにある。

復興財源確保法が11月30日に成立 法人税は3年間税額の10%上乗せ 東日本大震災の復興財源を確保する法律や2011年度税制改正の積み残し部分を盛り込んだ所得税法等一部改正法など、2011年度第3次補正予算の関連5法が、11月30日の参院本会議で可決・成立した。 震災復興財源確保法では、復興特別法人税が2012年4月から3年間、年税額の10%を上乗せ、復興特別所得税が2013年1月から25年間、年2.1%を賦課、また、地方税の個人住民税均等割りが2014年6月から10年間、年1,000円上乗せされる。 補:制度の詳細は、復興特別法人税のあらまし(国税庁) を参照されたし 消費税に関する議論の概要と背景、国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 746、2012.4.3. 消費税が、平成 26(2014)年4月に8%、平成27(2015)年10月に10%(いずれも地方分を含む)へと段階的に税率を引き上げることとされている。またその際、国分の消費税収については全額を社会保障目的税化するなどして使途を明確にするとともに、低所得者への対策として給付付き税額控除の導入に向け検討を進めることとされている。 特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げについて、日本年金機構 平成12年の法律改正により、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢が平成25年度から平成37年度にかけて60歳から65歳へ引上げられます。 また、坑内員または船員としての実際の加入期間が15年以上ある方についても平成30年度から平成42年度にかけて65歳へ引上げられます。 この支給開始年齢の引上げに伴い、60歳台前半における老齢厚生年金の繰上げ請求ができることとなりました。 補:年金受給開始を68歳に?年齢引き上げを検討へ 雇用延長の義務化とは?  定年延長対策センター 特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢引き上げや2007年度以降団塊の世代の定年退職とともに労働力人口の急減が経済や社会保障制度に及ぼす影響等を背景として高年齢者雇用安定法が改正され、平成18年4月1日から65歳までの雇用延長が義務付けられました。 ただし、平成18年4月1日から直ちに65歳までの雇用延長が義務付けられるのではなく、平成25年度までに段階的に雇用延長の年齢を引き上げていくことになっています。 従って65歳までの雇用延長が義務付けられるのは平成25年4月以降ということになります。 この年齢は男性の年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げスケジュールにあわせ、男女同一に、平成25年4月1日までに段階的に引き上げられます。 補:定年引上げ等奨励金(70歳まで働ける企業奨励金)

こうした動きの源泉に仕組み(制度設計)に関わる問題がある。特に、年金制度と就業制度の問題は大きい。

年金制度の財源が少子高齢化の進行とともに問題になることは、審議会等で議論するまでもなく、人口年齢構造の推移予測から数十年前から確実視されていたことである。事実を直視し、制度設計により、予想される効果と限界等をきちんと周知して議論して欲しい。「100年安心」の制度設計であったはずがいつの間にか、いままたなぜ67、68歳への支給年齢引き上げなのか。関連審議会委員はもちろんのこと、政府・国会関係者は説明責任を果たして欲しいものである。後世の評価に耐える説明責任を果たせないなら、制度設計に加わるべきではない。今に至る制度設計対応の不作為の原因は何処にありや。

集めた年金資金の運用の杜撰さ。グリーンピアや年金住宅融資の問題はどうなったのか。そして、いままた、年金資金の株式運用の拡大検討が始まろうとしているが、十分なリスク対策はなされるのであろうか。責任の所在をハッキッさせた上でなされるのであろうか。加えて、年金記録の把握の杜撰さ。消えた年金問題はどうなったのか。行政の執行を監視すべき国会やマスコミの責任はどうなのか。

年金問題の歪、制度ギャップを、企業に定年延長を強いる形で埋めようとしているが、このことが、就業問題の本質をかえって歪めることになっている。長寿社会において、同じ組織(企業、行政)で一貫して働くことを前提にした制度設計でいいのか。組織ベースではなく、就業者個人をベースとした制度設計への転換が必要ではないか。それは、正規・非正規雇用問題、企業年金問題等の問題解決にも繋がる。

池田信夫 blog : タテ社会をヨコに動ける改革(抜粋) 本来、会社は労働者の乗り物にすぎない。沈み始めたら乗り換えればいいし、沈む船を助ける必要もない。労働者を企業から解放するには、まず企業年金をポータブルにし、退職一時金の優遇税制をやめ、専門職大学院職業訓練校を増やしてITなどのスキルを身につける必要があろう。生活保護は廃止し、こうした職業訓練を条件とする失業保険に統一すべきだ。 だから企業に雇用責任を負わすのはやめ、その代わりモラトリアム法のような企業に対する補助金や政策金融は廃止すべきだ。その財源は、すべて労働者の保護に回す。企業単位のタテ型セーフティネットから、労働者がヨコに動ける社会的なセーフティネットに変えるしかない。それなしで「解雇の自由」論議だけが先行すると、またつぶされるだろう。

何れにしても、人生を左右する制度設計が国民に向けての十分な事実情報の公開も議論もなく、行政主導の審議会ベースで進められるのではなく、やはり国会主導で、ネットでのリアルタイム公開を含めてオープンに骨太に議論して欲しい。そろそろ新しい時代に相応しい新しい枠組みでの制度設計の時代となることを期待したい。