ふるさと納税のその後

本ブログで2年半前(平成27年2015.02.15)に、「ふるさと納税の仕組みと効用」と云うタイトルでふるさと納税のことについて言及したが、最近、ふるさと納税の返礼品が過剰ではないかとの議論が起きている。これは、返礼品が制度趣旨を超えるような高額なものや多様なものが少なくないことや、東京都特別区等で住民税が減収したことによる異議が唱えられたこと等による。

ふるさと納税で「赤字4億円」…町田市長が批判、読売新聞、2017年02月18日 
ふるさと納税に関する現況調査結果、自治税務局市町村税課、平成29年7月4日 
 【参考】ふるさと納税の受入額に対する返礼品の調達に係る費用の比率
      109,081百万円/284,409百万円=38.4% (昨年度結果:38.3%)
     

 

確かに、ふるさと納税を取り扱う民間ポータルサイトで、返礼品を一種のECサイト的な見せ方でそうしたことを煽ったことは否めない。寄付者の多く(約7割)が返礼品を比較して購入(寄付)している。

ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
ふるさとチョイス 
さとふる 

しかし、それでも、全国の自治体が競争的環境下でマーケティングの重要さに気づく良いきっかけになったのではないだろうか。さらに、政策の一種の価値付け・評価がECサイトの仕組みで可能であり、クラウドファンディングとも連動できることを知らしめた意義は大いに評価して良いのではなかろうか。

返礼品が過剰すぎ、当該自治体の税収にさほど寄与しないとの批判もあるが、それは金が廻ること(フロー)の経済効果を無視している。国等の評価による補助金交付金よりも、国民の評価を直接受けた購入、一種の市場を通したお金の流通の方がある意味で健全である。ただし、高所得者ほど税の控除の上限が高くなるので、より高価なもの・サービスが入手できるという「逆進性」の問題は制度設計上の課題ではある。

また、東京都区内等の住民税の減収は、住民と云うより、国民という目線での全国の自治体間の政策評価・シティプロモーション評価による目的税的納税の選択結果であると云える。この観点に立てば、減収にならないように、当該自治体は住民サービスを充実すれば良いだけのことである。

こうした騒動を受け、総務省は下記2通の通知(通達でも法令でもない。助言である)を出している。
ふるさと納税に係る返礼品の送付等について、総務大臣、平成29年4月1日 
ふるさと納税に係る返礼品の送付等に関する留意事項について、総務省自治税務局市町村税課長、平成29年4月1日 

これに対して、自治体の反応は様々であるが、従前より制度趣旨に沿った運用をしていると自負する自治体は何ら変更の必要はない。山形県の吉村知事は競争が過熱化してもいいではないかと反論している。気になるのは、総務省の「通知」で返礼品を見直す、あるいは見直そうとする自治体の存在である。国と自治体の関係はいまや「上・下」ではなく、「対等・協力」に代わっていることを忘れているのだろうか。自治体として政策自律して欲しい。
滑稽極まりない「ふるさと納税」の騒動、医薬委経済社、2017年7月27日 

 いずれにしても、現在のふるさと納税サイトは、返礼品が前面に出ており、本来のふるさと応援(ふるさとの政策を支援する。ふるさとへ人・物・金を廻し元気にする)が隠れてしまっている。当初の制度普及段階にはこれで良かったもしれないが、現時点においては、真のふるさと応援的サイトにして、その返礼がなにがしかある、と云うサイトに変えられないものであろうか。全国的な基礎自治体による政策競争こそがいま地方に求められている。