2009年11月8日、讃岐・琴平の「こんぴらさん」に行った、というより登った。小学校か中学校時代の遠足以来である。琴電琴平駅に降り立ったのであるが、案内板がない。これだけ、古くから親しまれ全国から参拝客が来ていると思われるが、何の案内もない。どちらに行けば「こんぴらさん」なのか、方向すらわからない。地域としての意気込みが伝わってこない。しかたなく、駅前で工事をしていた人に道を聞き、歩き出す。
「こんぴらさん」は、正式には「金刀比羅宮(ことひらぐう)」という。
公式ホームページによれば、この「こんぴらさん」の祭神は次の通りである。
<祭神> 金刀比羅宮には主たる祭神の大物主神(おおものぬしのかみ)とともに、相殿(あいどの)に崇徳(すとく)天皇が祀られています。大物主神は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の弟、建速素盞嗚命(たけはやすさのおのみこと)の子、大国主神の和魂神(にぎみたまのかみ)で農業殖産、漁業航海、医薬、技芸など広汎な神徳を持つ神様として、全国の人々の厚い信仰を集めています。
とにかく、階段の多さで有名である。本宮まで785段、さらに本宮から上にある奥の院までが583段、合計1,368段ある。海抜は421メートル。単純平均すると、1段約30cmといったところ。足腰が強くないと上まで登れない。このため、有名な駕籠かきが参道入り口からある。途中にもある。小さい頃はこの駕籠に乗った年輩の方を見た記憶があるが、今回は全く見かけなかった。みんなの足腰が強くなったのか、それとも景気の足腰が弱くなったためか。
駕籠以外にほとんどの人が竹でつくった杖を借りて上がる。この杖を貸し出すのが参道のおみやげ屋さんとか食べ物屋さん。お店によって杖に巻き付けてあるテープでどの店のものか識別できる。何れにしても、これは杖を返しに来たときの買い物狙いのお客の囲いこみ作戦。よくできた伝統的仕組みである。
そして、階段を上る境内の参道沿いには寄進した人の石塚が立ち並んでいるが、これをよく見ると2列目に入っている。つまり、古い時代に寄進した人の前に近い時代の寄進者の石塚が遮るように立ち並び、古い寄進者の名前が見えなくなっている。これが壁のように延々と続くのである。昔からあった眺めの良いホテルの前にホテルが建ち並んでいく景勝地を思い出したが、はたしてこんなことでいいのだろうか。寄進のありがたさも時間とともに薄れゆくということか。
この「こんぴらさん」、漁業航海の神様ととして縁が深いこともあり、そうした関係物の寄進が少なくない。堀江研一さんの太陽パネルを張ったマーメイド号や船のプロペラまで様々ある。
さて、騒がしいおみやげ屋さんが並ぶ参道を抜けると、二層入母屋造りの「旭社」(あさひしゃ)につく。ここで629段。
そして、次が大社関棟づくりの「金比羅宮 御本宮」。785段。ここで大半の参拝者が降りていく。
さらに意を決して、上に登り進むと崇徳天皇が祀られている「白峰神社」。951段。
そして、ここからが長い。長く感じる。息も上がってくる。そして、ようやく最後の階段を上りきって「厳魂神社」(いづたまじんじゃ)に到着。ついに、1,368段を登った。この神社は修行の末に天狗化したと言われる金比羅宮の元別当職が祀られている。そういえば、宮の横の山肌の岩に天狗に見える岩が1対あった。
琴電琴平駅を降りてからこの「厳魂神社」まで約2時間半。そして、再び降りていく。下りは登りで疲労している上に、膝への負担がきつい。下りでは杖も役に立たない。この時期としてはかなり暖かい日で、Tシャツでも汗だくとなった。
階段を下りきった先にあるうどん屋さんで昼食をとる。讃岐うどんはやはりおいしい。水沢うどんとはまた違った腰の強さと食感がある。腹ごしらえをした後、汗を流しに日帰り温泉に入った。洗顔タオルとバスタオルがセットでついて700円。これはきわめてリーズナブルな値段である。他の温泉旅館やホテルは1,500円ほどしていたが、この値段でも温泉は同じ。聞くと、町で源泉を汲み上げ供給しているとのこと。
1,368段の階段を上り下りし、温泉で疲れをいやし、高松空港から心地よい帰路についた。