平均余命と企業寿命のギャップを埋める専門家サービス3.0

平成23年簡易生命表厚生労働省)によると、男性は人生80年、女性は人生86年の時代に入っている。そして、政策主導により、年金支給開始年齢並びに定年退職年齢が60歳から65歳へとシフトしている。統計によると、60歳以降の家計収支には、約5万円超の不足が生じ、60歳以降も年金以外に収入を得ることが不可欠となっている。最近のシニアの元気さを考えると、70歳ぐらいまでは何らかの形で働くことが可能である。

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LCP(Life Continuity Planning 人生継続計画)~自分史、終活・エンディングノートを超えて~

年末が近づくと、気候の変化もあり、予期せぬことが起こる。亡くなる方も少なくない。筆者も、長兄が11月下旬 に脳出血で倒れ、亡くなった(享年68歳)。長兄の最後を看取りながら、想うことがいろいろあった。その一つが 、自らもいつ死を迎えてもいいように人生の整理をしておこうと思ったことだ。

こうした死に備えることを最近、「終活」あるいは「エンディングノート」という言葉で語られることが多い。そ れではと、自ら改めてその気になって調べてみた。サイトを検索すると、いくらでも出てくる。

例えば、 ◆くらしづくり 終活一般社団法人 終活カウンセラー協会

いろいろ見たが、なんとなく単なるハウツー的な感じが否めない。ハウツーっぽいのに、その雛形fileの提供がPDF版のものも少なくない。なかには、コピーペーストできない仕様のものまである。今どき、何を考えているのかと いいたくなる。ましてや、IT時代に対応した証憑(戸籍抄本、住民票、各種保険証書、保険証、免許証、診断書・入院・手術同意書、各種履歴書、写真等々)をスキャンして貼り付ける、さらには火災や自然災害等に備えるため 、あるいは同居していない親族と共有するためにクラウドに置く、という発想のものは殆ど無い。

技術的なことはさておくとして、死への備えとは何か。それは、覚悟を持った生き様とは何か、いつ死んでもいいように過去へのけじめ・身辺の整理をどうつけるか、急変時にどうするか、と思うのだそこまでの精神的深さが感じられない。同じような感じを持つ人もいるようで、懐疑的なブログ記事もあった。

「ブーム」としての終活の怪しさ

何はともあれ、まずは、既存のエンディングノートを参照しながら、自分なりのエンディングノートの枠組みを編纂してみた。編纂しながら、これは、節目節目で過去の自分史を整理しながら、今後に向けて前向きに生きていく ためのLCP(Life Continuity Planning人生継続計画)を作成・更新することではないのかと思うようになってきた。企業等の組織体にはBCP(Business Continuity Plan)という概念があるが、個人あるいは家庭にはこれまでそうした概念がなかった。

◆自分史の例:一般社団法人自分史活用推進協議会

筆者の編纂したLCP(表紙、目次込み全21頁)の目次 1. 人生の節目年表(LCP更新時期) 2. 緊急連絡先 3. 医療・介護について 4. 葬儀・お墓 5. 解約・削除・変更が必要なもの 6. 財産・相続 7. 我が家のプロフィール 8. 私のプロフィール 9. 人生の銘・次のステップに向けて 10. メッセージ

人生の節目、その多くは意思決定にリスクを伴い、良いことも悪いこともある。卒業・就職、転職・失職・退職、結婚・離婚、転居、大病、完全リタイア等。何れも、次のステップにおいて思い切って前向きに生きるには、過去を 振り返らず(引きずらず)にすむように過去を整理・記録し(場合によっては棄て)教訓を得て、次への道筋を思索し目標として形にするということが必要である。人生の自らによる創造的破壊(イノベーション)である。

賢人とは意識せずそうした飄々として透徹した生き様ができている人のことはなかろうかと、ふと想ふ。

自ら編纂しなおしたLCPの目次とその内容を見ながら、過去の健康診断・病歴の整理、保険等のリスク商品の見直し、銀行口座等の整理・統合、学歴・職歴・社会的活動履歴書の整理、SNS等の公開情報の整理等々、いろんなことを改めて整理する必要を感じ、年末の大掃除と併せ、すべてを整理することにした。

そのための最大事は蔵書類の整理である。学生時代から今日までの間に蒐集し読んだ本、Dr.論、論文別刷り、執筆・刊行本、講演資料、自ら手がけた記念碑的報告書類や関連資料が家中に溢れている。「ゴルゴ13」や「こち亀」等のコミック本もある。書棚に入りきらず段ボール箱に詰めたり、廊下に積み上がっている。これを、次の3つの基準に基づき、すべて処理した。この3つの基準に適うものは極めて限定される。

◆残すか棄てるかの3つの基準 ・歴史的な価値ある資料か ・自分以外の誰かが必要とするか ・今後の自分にとって必要なものか

シュレッダーすべき書類・報告書類等は家にあるシュレッダー機ですべてシュレッダーした。大量のごみと化す。書籍類はBOOK・OFFに20箱ほど売れるものは売り、引き取ってもらえそうにないものは地元の市のゴミ処分場に持ち込んだ。ほぼ1週間を費やし、家にあった30年来の紙ベースのストックをすべて選別・クリアした。なぜか、さっぱりした気分になる。

残したものも、年明け以降、LCPに記入しつつさらに整理・処分することにする。さあこれで一段落と思ったら、今度は自宅のパソコンが不具合を起こす。急遽、パソコンを買い替えることにする。某外資系の通販サイトで即納モデルを購入する。早朝に注文すると、翌日夕方には自宅に届いた。以前のHDの突然のクラッシュに懲りて、その後はスケジュールとmailはGoogleを利用し、自らが作成したり関係しているfileはDropBoxに置き、それ以外の参考資料的なfileはEverNoteに置くというクラウド環境を利用していたのでData引き継ぎに関する問題はなかった。EverNoteのデスクトップへの同期が最初はうまく行かなかったがこれもサポートデスクに問い合わせ解決した。問題は、マシンを変えたことで各種のアプリケーションソフトやドライバーの設定し直しに時間を要したことである。DeskTop環境も、マシンを変えても関係なく使えるようなクラウド環境にできないものか。シンクライアントの個人版的仕組みである。もちろん、中小・零細企業用にもなる。

今年もあと1週間。新たな気持で新年が迎えられる。

 

偽装問題とその対策の仕組みについて

イオンの偽装米や、阪急阪神ホテルズ、リッツ大阪に端を発して、食材偽装問題が再び続々と表に出ている。食材以外でも、宅配便のクール便やチルドゆうパックの輸送偽装(常温輸送)、JR北海道のレールデータ改ざん、みずほ銀行の反社会的勢力への融資の偽報告、ノバルティス・ファーマの血圧降下剤開発に係る論文データ偽装等々、個人というよりも企業・業界としての体質に起因する偽装が発生している。発生しているというよりも、隠していたものが発覚しているといった方が適切かもしれない。

偽装問題の例「米の産地偽装」過去最大の約4400トン イオンの業者を刑事告発へ偽装米、8割が中国産…イオンは危険な食品だらけ?告発本は即撤去の横暴

阪急阪神ホテルズ元従業員「原価率は10%が上限だった」 あ~あ、火に油を注いでしまった阪急阪神ホテルズの社長記者会見

「看板に偽りあり」はなぜ繰り返されるのか?(後編)/日沖 博道

利用者の不信さらに増幅 JR北海道 レール幅データ改ざん

みずほ銀行 暴力団融資問題 メディアも理解に苦しむお粗末な対応 変われない銀行の実態

ノバルティス捏造論文問題 製薬企業間チェックで不正防止を

こうした偽装の根幹は、要は、利益を確保するために、組織を守るために、偽装したことにある。食材偽装を例に取ると、利益を上げるために、食材費を切り詰める必要に迫られ、その方法として一般客には見分けがつきにくい食材を偽装したということである。

「誤表示」「誤報告」なる釈明の表現も出てくるが、意図を持った誤表記、誤報告は「偽装」以外の何物でもない。見苦しい限りである。こういった言い方自体が社外の人達を馬鹿にしている。すべてが内向きの経営の目であり、顧客第一、品質第一とは名ばかりとしか言いようがない。組織としての責任のとり方も、儀式のように、頭を下げるだけで、トップ自らが責任をとった経営陣の刷新は殆ど無い。いつから、日本は責任を取らない社会になったのだろうか。

いつまでたっても、こうした偽装を起こす体質が改善されなければ、せっかく日本がものづくりの世界で築いてきた品質に対する世界的な信頼そのものが喪失する恐れがある。和食の世界遺産登録どころではない。他国の食品の安全問題を云々できる資格すらなくなる。事は深刻である。

そもそも、こうした偽装の発覚の大半が内部告発によるものであり、組織のコンプライアンス、ガバナンスの機能発揮によるものではない。内部告発があるまで、動かない。言葉を弄して責任を取りきらない。

製造業を中心に品質管理の進んだ日本で、こうした偽装がなぜ無くならないのか。発覚した後に、組織としての責任のけじめが何故つかないのか。最終経営責任者としての経営トップの挟持はどうなっているのか。関わっているそれぞれの専門家の専門家としての挟持はどうなっているのか。

組織としての怠慢、仕組み・マニュアルが現場実態に合っていない、取締役会や監査役が機能していない等々考えられるが、当該組織内部だけでは、偽装に走る根源を断つことは難しいという前提に立つ必要がある。一方で、こうした民間企業の行動に対して、安易に行政による規制強化に頼る方向に走るべきでもない。

とすれば、偽装で被害・損失を被るユーザー側が自らチェック機能を果たすしかない。もういい加減、大手、一流、老舗、行列の出来る店等々、ブランドやメディアに無批判に頼ることをやめるべきではなかろうか。

自ら体質改善できない、責任を取れない経営陣・企業に退陣・退場してもらうには、ユーザー側が動くしかない。その一つの仕組みが、ユーザー側による監視の目ではなかろうか。最終的には、買わない、利用しないという行動をとれば、当該偽装企業がいかに策を弄しようとも退場せざるをえない。

いまは、ほぼ全員がスマフォを持ち、SNSが使える。ユーザー側にもいる専門家も含めて、ユーザー側が品質、評価等に関する情報交換ネットワーク網をつくれば、偽装に対するものすごい抑止力になる。食材で言えば、単に、お美味しいか不味いか、高い安いのサイトはいくらでもあるが、食材の品質に関するSNSサイトはない。いわば、食材のGメン・ネットワークのようなものがあっていい。最近、注目されているマンションの口コミとランキングサイト「マンションノート」のようなものである。

これは、ユーザー自身による第三者評価ネットワークである。こうした仕組みを多様な分野で起こすことがいまや可能である。ユーザー一人ひとりが評価者であり、メディアとなれる時代が来ている。

御岳山を登って

2013年10月13日(日)、東京都青梅市にある御岳山(標高929m)に登った。9:30過ぎに御嶽駅に着く。途中のホリデー快速おくたま号が既に結構混んでいた。御岳登山ケーブルに乗るため、御岳駅前で西東京バスの滝本行きのバスを待つこと約1時間。待っている間に待ち行列は更に伸び、恐らく、我々の後に御嶽駅に到着した人は2時間程待たされたのではなかろうか。バスではなく、歩くと40分弱で行けるらしいが、後の御岳山の昇り降りを考えると体力を温存して正解であった。

満員電車並みのぎゅうぎゅう詰めのバスに乗り、ケーブルカー(御岳登山鉄道)の駅がある滝本に向かう。滝本駅に近づくに連れ、駐車場待ちのマイカーの渋滞がひどくなる。バスの車掌が時折降りて交通整理をしながら登っていく。ようやく到着。バスの車掌に訊くと、昨日(土)はこんなに混んでいなかった。今日は特別とのこと。三連休の中日で天気も良く混むのが予想されたため、会社の幹部に増便を要請したがきいてもらえなかったとのこと。せっかくの増収チャンスを逸している。何処も、現場と経営層との間にはギャップがあることに妙に納得。サービス業は現場の声を吸上げ活かす仕組みが不可欠である。

ケーブルカーの滝本駅でもしばし待たされるがこのケーブルカーは約10分間隔で運転されていて、バスほどの待ちはない。最大傾斜25度の斜面を6分ほどで御岳山駅に着く。眺めが良い。軽く昼食のおにぎりを食べ、御岳山の頂上にある武蔵御岳神社に向かう。全く知らなかったが門前町があり、意外と賑わっている。宿坊、旅館も結構ある。外国人も少なからず訪れている。

推定樹齢1000年と言われる国指定の天然記念物「神代ケヤキ」を仰ぎ見、「馬場家恩師住宅」を覗き見、武蔵御嵩神社の階段下にたどり着く。階段脇には「」の石碑が立ち並ぶ。石階段には寄進者の名が刻まれている。修復された石階段を登りきり、神社に到着。二礼二拍一拝。この境内に御岳山山頂の石柱が立っている。遠くを見ると、かすかに東京スカイツリーが見える。

ふと板書を見ると、奉賛会が本殿の彩色・漆工事に1.1億円かかり、その内の4千万円の寄付(協賛金)を募っている。3万円以上の寄付者は石碑に刻して境内で永久保存されるとある。神明造りの彩色の修復には高価な岩絵具が必要でお金がかかることは埼玉の妻沼聖天山で知ったがここも同じようである。そして、地元の青梅市補助金3千万を申請し、残り4千万円は神社資金とある。要するに自己資金のことである。この資金調達の仕組みは、マッチングファンドのようで参考になる。

奉賛会は、こうした寺社が寄進を募る際に組織される。大きな会社には奉加帳が回ってくる。伊勢神宮式年遷宮奉賛会は総事業費550億円の内、奉賛会で220億円を集めたとのこと。出雲大社御遷宮奉賛会事業費80億円の内のいくらを集めたかはサイトでは不明。

日本における寄付文化は東日本大震災を契機に根付いたと言われるが、実はこうした「寄進」という形で古くからあったわけである。時代とともに、寄付の形態が多様化するのは当然である。その先進の仕組みがWEBによるクラウドファウンディングである。クラウドファンディングも単に金銭の寄付ではなく、知恵も一緒に出す、さらには協働するといった形への進化・深化がその先の姿かもしれない。板書を眺めながら、いろいろ想いを馳せる。

さて、神社から次はどこへ行こうかと案内図を見ながら悩むが、結局、「七代の滝」から「ロックガーデン」を廻るコースを行くことにする。この滝は行って分かったが、谷底にある。つまり山頂から谷底に一気に降りていく。自然を利用した階段状の道が一応あるがその段差はきつく、足がガクガクする。この下り道は足の膝が弱い人には歩けない。ようようの思いで七代の滝に着く。滝を見ながら、しばし休憩。

七代の滝から「天狗岩」の横顔を見ながら、「ロックガーデン」へ廻る。滝からの最初の登り口の階段が結構きつく長く、足に乳酸が貯まる。若い頃との体力の違いを実感する。ロックガーデンを経由して、「綾広の滝」をみて、ゆるやかな上り道を上がってケーブルカー駅に向かう。高々1000m未満の山と軽く観ていたが、結構きつい。

御嶽駅から電車で帰路につくが、河辺駅で臨時停車。その先で人身事故があり1時間ほど止まるとのこと。しかたがないので駅から出て、休憩した後、バスと電車を乗り継ぎ帰宅。

足の疲労感を覚えながら、色々考えさせれ、いろいろ体験できた1日であった。翌日、翌々日と太ももに筋肉痛。この筋肉痛は久しぶり。足腰が強くなくてはこうした山岳寺社にも行けない。体力維持が欠かせない。

 

[caption id=“attachment_1183” align=“aligncenter” width=“512”] 滝本駅に到着するケーブルカー[/caption]

[caption id=“attachment_1180” align=“aligncenter” width=“512”] 馬場家恩師住宅[/caption]

[caption id=“attachment_1184” align=“aligncenter” width=“512”] 恩師住宅正面。住んでいるため、建物の中には入れない。[/caption]

[caption id=“attachment_1185” align=“aligncenter” width=“512”] 宿坊の一つ。趣がある[/caption]

[caption id=“attachment_1186” align=“aligncenter” width=“512”] 神代ケヤキ(推定樹齢1000年)[/caption]

[caption id=“attachment_1187” align=“aligncenter” width=“512”] 参道。飲食ができる店が並ぶ[/caption]

[caption id=“attachment_1188” align=“aligncenter” width=“512”] 講の石碑が並ぶ石階段[/caption]

[caption id=“attachment_1189” align=“aligncenter” width=“512”] 武蔵御嵩神社本殿[/caption]

[caption id=“attachment_1190” align=“aligncenter” width=“512”] かすかに東京スカイツリーが見える山頂の神社からの眺望[/caption]

[caption id=“attachment_1191” align=“aligncenter” width=“512”] 寄付を募る板書[/caption]

[caption id=“attachment_1192” align=“aligncenter” width=“512”] 神社敷地内に建てられている御岳山山頂の石柱[/caption]

[caption id=“attachment_1194” align=“aligncenter” width=“384”] 七代の滝[/caption]

[caption id=“attachment_1195” align=“aligncenter” width=“512”] ロックガーデン[/caption]

[caption id=“attachment_1197” align=“aligncenter” width=“520”] 綾広の滝[/caption]

2020東京オリンピック・パラリンピック開催決定を受けて

H18年9月から招致活動に249億円を費やし、2020年夏季オリンピックパラリンピックの東京開催が決まった。久しぶりに日本の先行きに期待感を抱かせる目標が具体的に設定された。日本人は目標が具体化されれば集中力を発揮できる。いろんなことをブレイクスルーする良い機会である。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会計画 オリンピック競技大会開催概要 正式名称:第32回オリンピック競技大会 英文名称:The Games of the XXXII Olympiad 開催期間:2020年7月24日(金)~8月9日(日) 競技数 :28競技

パラリンピック競技大会開催概要 正式名称:第16回パラリンピック競技大会 英文名称:Tokyo 2020 Paralympic Games 開催期間:2020年8月25日(火)~9月6日(日) 競技数 :22競技

■関連諸費 2016年オリンピック招致活動費 149億円(決算ベース) 2020年オリンピック招致活動費 75億円(予算ベース) 東京都の開催準備金:4,088億円 大会組織委員会の収入:1,825億円 施設整備費:4,100億円余(招致活動段階より2,500億円余増)<NHKニュース> 関連インフラ整備費:詳細不明

■投資効果(2013年~2020年) 経済波及効果(生産誘発額)3兆円、雇用誘発数15万人<東京都> ※インフラ投資は対象外 生産誘発額7~12兆円、雇用創出効果40~70万人分<㈱日本総合研究所>

経済波及効果(生産誘発額) 29.3 兆円<三菱UFJモルガン・スタンレー証券>

前回と今回の時代環境と期待の違い

前回の1964年東京オリンピックの時代環境は、敗戦からの復興を果たし、高度経済成長の途上にあり、先進国化、国際化へのトバ口に立ち、全てが右肩上がりの躍動する日本であった。砂利道が舗装され、新幹線、首都高等が整備され、そしてカラーテレビが一気に普及した。すべてが、前向きな時代で、将来に期待が持てた。

一方、今回の2020年東京オリンピックは、日本の総人口が減少し、超高齢社会が進展する成熟社会にあり、財政再建を目指しつつ新たな成長への模索がなされる中、東日本大震災からの復興、福島第一原発の事故収束という歴史的な課題を抱えた時代環境にある。将来を見据えた視座の下、構造的転換を行い、前向きに転じる機会として今回の東京オリンピックが期待される。

参考:【1964年という年】斎藤順の経済バーズアイ 日本経済研究センター 東京オリンピックが開催された1964年という年は、日本経済が高度経済成長を遂げる中で蓄えた経済力を背景に、先進国としての地位を国際社会において固めた年でした。この年の4月に日本は先進国クラブである経済協力開発機構OECD)への加盟を果たしました。また同じく4月には、国際通貨基金IMF)の8条国(経常取引に対する為替管理の撤廃等)に移行し、外国為替予算制度を廃止しました。また、海外旅行が自由化されたのもこの年です。これらを受けて、9月には東京でIMF・世銀の年次総会を開催しました。 他方、1964年という年は、日本経済にとっては大きな転換点でもありました。オリンピック直後から日本経済は、「(昭和)40年不況」、「構造不況」「典型期」と呼ばれることになる不況(1964年10月から1965年10月)に陥ります。この不況期間中、山一証券や山陽特殊鋼が破綻し、日銀が戦後初めて特別融資を行いました。また、証券不況に対応するため、株式買取機関が設立されました。そして、この年、初めて国債(1965年度は特例国債)が発行され、それ以降、国債発行(1966年度から建設国債、1975年度から建設国債)が常態化することになります。 この不況も1年で終息し、1966年以降になると、高度成長期の第二期に入っていきます。この第二期は、第一期が「投資が投資を呼ぶ」内需主導型であったのに対して、外需主導型の高度成長でした。これ以降、いわゆる「国際収支の天井」から解放され、経常収支が黒字化するとともに、外貨準備が増加し始めることになります。 このように、戦後復興から高度成長を果たして先進国の仲間入りをするという日本経済の一つの頂点の時期であるとともに、国債発行と外需主導型経済成長という、現在直面する大きな問題につながるような現象が初めて現出するようになった端緒の時期でもあったのが、1964年という年だったのです。

追記:2013年9月27日、総務省統計局が「東京オリンピック時(1964年)と現在(2012年)の日本の状況」という統計値を対比表で集計発表した。

 

今回のオリッピック・パラリンピックに期待すること

2020東京オリンピックパラリンピック開催決定は喜ばしい限りである。開催までの期間、世界の関心が集まる。開催時には、世界から人が集まる。日本を知ってもらうチャンスである。では、何を知ってもらうか。知ってもらうために何をすべきか。開催地は東京湾岸部であるが、その効果を日本全体に及ぼすにはどうするか。色々考えらえるが、少なくとも以下の4点の実現を期待したい。

1.東日本大震災の復興を知ってもらう 日本は多様な自然災害が頻発する国土であり、自然災害に対する防災技術(治水、耐震等)、レスキュー技術・復興技術は元々日本の優れた技術であった。東日本大震災を教訓にさらにその技術が進化している。被災時に世界各国(174 ヶ国・地域、43 国際機関)から寄せられた救援・支援に対して、オリンピックに訪れた世界からの来客に直接、復興状況を見てもらい、感謝を示す絶好の機会である。進化した日本の関連技術を世界に披露する機会でもある。オリンピック会場周辺、ホテル、そして現地ツアー等々なすべきことはいくらでもある。そのためにも、世界に誇れ、後世に誇れる真の震災復興を急がねばならない。

2.福島第一原発事故の収束過程を知ってもらう 現下の世界的関心事であり、オリンピック招致の際にも最後まで懸念されていた福島第一原発事故の収束に向けたプロセスを、そして対策技術を世界にアピールしなければならい。安倍首相が「The situation is under control」と表明した限りは、日本は総力をあげて、事故原因、事故実態の把握、汚染拡大の阻止、事故収束に向けた措置等々を事実ベースで世界に示す必要がある。今後の地震津波、台風等の発生リスクも考慮しつつ、いかにして廃炉に向けてアンダーコントール下におくか。第二の「trust me」にしてはならない。日本の技術力、マネジメント力が問われている。シビア環境下での活動を可能にするロボット技術、永続的に続く地下水汚染の対策技術、放射能汚染物資の管理・処理技術等、今後の世界の原発事故時にも貢献しうる技術をオリンピック時にアピールすることの意義は大きい。小手先ではなく腹を据えた対策、技術開発・導入を期待したい。

3.超高齢社会の課題先進対応生活空間を知ってもらう 日本はすでに超高齢社会に突入し、世界の高齢社会化に対する課題先進国として、その対処に世界が注目している。高齢社会課題は2つに大別される。アクティベイトなシニアを対象とした課題と、介護が必要なシニアを対象とした課題であり、それぞれに仕組みと技術での対応がある。医療・介護・年金の仕組み、健康・介護に関連する医工連携先進技術、バリアフリー及びユニバーサル技術、高齢化に伴い交通弱者化するシニアの生活を支援する交通システムや宅配・御用聞き訪問型ビジネス、さらには今後太宗化する高齢独居世帯の見守りシステム等々。シニア対応・課題は、国、地域、個人レベルそれぞれでユニークであり、究極のカスタマイズが問われる。日本人が得意とする細やかさが活きる。オリンピックで訪れる外国人にとって、日本の日常生活空間そのものがショールームとなりうる。

4.グローバルに通用する日本の良さを知ってもらう 日本食が世界に広まりつつある。日本の伝統技術に裏打ちされた匠の製品(大工道具、和包丁、・・・)も世界で受け入れられている。次は、日本の飲料(日本茶、日本酒等)や食材(米、和牛、・・・)と言われている。伝統文化・技術の継承者・企業がグローバルに情報を発信し、理解者(顧客)を獲得することにより、蘇っている。一方で、観光客の受け入れはもちろんのこと、総人口減少社会の日本の持続的成長を支える上で、外国人起業家・ビジネスマン・労働者・移民等の受け入れも考えざるをえない。社会の仕組みとしてのダイバーシティ(多様性)が問われている。今回のオリンピックがダイバーシティ社会へのトバ口になることを期待したい。まずは、オリンピックまでに、少なくともホームページの多言語対応を進めなければならない。ネット上で検索できれば、世界からバーチャルであれ、リアルであれ、人が集まってくる。日本の良さを知れば、世界の技術・知識・人材が集積するきっかけとなる。オリンピックは日本の良さを実体験できる出来る機会であり、東京をハブとして全国に足を向けさせる仕組みづくりが欠かせない。

2020年に胸を張って世界の多様な人々を迎え入れたいものである。

 

夏の風景その2 お盆と帰省そして阿波踊り

今年もお盆に帰省した。今年は暑いので、夜間に移動するべく、8/9夕方17:00過ぎに自宅を出発した。高速道路のSA/PAで休憩する度に娘と運転を交代したり、仮眠を取りつつ、自宅(所沢)~関越道所沢IC~環状八号線~東名道~新東名道~伊勢湾岸道東名阪道新名神道~名神道~阪神高速道理~第二神明道路~明石大橋~高松道~徳島道脇町IC~実家(阿波町)の690km。渋滞にも何度か遭遇し、実家についたのは、翌日午後の14:00。所要時間約20時間。ETC料金約1万円強。ガソリン代約1万円。復路はその逆のコースを8/16夕方17:00過ぎに出発し、自宅に翌日正午前の11:30頃ついた。途中、港北IC辺であったかと思うが、追い越し車線で、5,6台の玉突き衝突が起きていた。走行中に横目でみたので詳細は不明。 今回はじめて、新東名道を走った。さすがに高規格の道路のため、曲率が緩く走りやすい。特にトンネルは断面が大きく、照明も明るく走りやすい。その多くが構造物となっており、高価な道路であることがよくわかる。その設計性能に応じた交通運用(走行速度のアップ)になっていないのがコストパフォーマンス上やや疑問ではあるが。一方、路肩や車線の白線が薄れたり、街路灯がなかったり、白線の視認がしにくい路線・区間があった。トンネルも、その照明が少なかったり、壁面から上部の色が黒く、全体としてトンネル全体が暗く、車線の白線を視認しにくい箇所が少なからずあった。 若い時は道路走行空間の暗さなど気にしていなかったが、年とともに動体視力が衰えてくると、暗くて車線の白線の視認がしにくいと、さすがに一抹のリスクを感じる。超高齢社会を迎え、高齢者ドライバーが増えている昨今、高速道路(特にトンネル部)の暗さに関する道路設計・維持管理上の配慮が欲しい。色を白く塗るだけでも明るくなるし、トンネルのヒビ等が視認しやすくなると思うのだが。 また、今回、帰省中に、おばあちゃん(84歳)と道後温泉に一泊旅行(徳島道~松山道)した帰り道、暑さもあり途中で気分が悪くなり、SAで少し横になって回復を待つことにした。車椅子の貸出や横になる場所がわからず探していると、たまたま2畳ほどの横になる場所(お休み処)が見つかった。結局、3時間弱程、このお休み処で横になって回復を待った。他の高齢者にも同様なことは起こるであろう。SAに車椅子の貸出や、少し横になるスペースを含めた救護機能が欲しい。 加えて、高齢者でなくても夜間走行しているドライバーの仮眠用の横になる場所が欲しい。車の座席では仮眠が取りにくい。営業用機能(おみやげ・飲食店等)、トイレだけでなく、ドライバーや高齢者に対してもう少しやさしいSA機能が欲しい。そのことが結果的に高速道路の走行の安全につながる。ホテル機能ではなく、横になるだけの機能(できれば無料)があればよく、そのスペースを大規模災害等の非常時は避難所にも転用できるようにしておけば、さらにその価値は高まる。まずは、ハイウェイオアシス等開かれたSA/PAの接続機能に非常時用の避難所機能を追加し、それを平常時利用として仮眠用に提供する。そのノウハウを一般のSA/PAにも展開していくという仕組みはいかがであろうか。 ふるさと徳島の最大の風物詩である徳島市の「阿波踊り」(8/12~8/15)を、今年は最終日に2時間ほど歩きながら観た。途中、無料桟敷、踊り広場、交差点等の踊りを見ながらであった。学生時代に叩いていた鳴り物の大太鼓の響く音を聞くと、思わず手が動く。年々、踊りエリア内の川岸、橋が綺麗になっている。人が集まることはいいことだ。やはり、まちづくりの基本は人が集まることである。人が集まれば、いろんな可能性が生まれる。 徳島市の阿波踊りの公式ページ http://www.city.tokushima.tokushima.jp/kankou/awaodori/ 阿波踊りの動画 http://www.yomiuri.co.jp/stream/m_news/vn130816_1.htm  

夏の風景 戸田橋花火大会

2013年8月3日(土)、知人宅に招かれて、第60回戸田橋花火大会を見物する機会を得た。荒川を挟んで対岸の「いたばし花火大会」との同時開催で、約1時間45分、両岸併せて約11,000発の花火が上がった。予想以上にすごい花火大会であった。 小泉元首相流に言えば、「感動した!」である。

そもそも、埼玉県民でありながら、戸田橋花火大会なるものを知らなかった。前日に、この花火大会の会場近くのマンション10Fに居を構える知人夫妻に誘われ、はじめて知った次第である。池袋駅埼京線のホームがすでに人であふれている。浴衣姿が結構いる。全便、臨時ダイヤになっている。1便やり過ごして乗る。赤羽駅では乗りきれず積み残し。浮間船渡駅で降りる見物客が結構いる。ここで降りる客は板橋側の会場で観る見物客と思われる。浮間船渡駅から戸田公園駅の間の荒川を渡る鉄道橋から会場が見える。すでに両岸に人だかり。戸田公園駅で降りると、駅前広場で見物しようとする客がすでに一杯。確かに、ここならトイレに困らない。駅から知人宅のマンションに行く道路の辻々には、近隣の住民おぼしき人が机を出して一緒に花火見物をする様子。かっての田舎ではよくあった光景である。そして、途中にある建築中の木造住宅の構造をみてみると、花火を見るためと思えるベランダがしっかり造られていた。

知人宅につき、花火が始まるまで、しばしBBQを味わう。10Fの風にあたりながらのBBQもいいもんだ。そうこうしている内に、いよいよ花火大会が始まる。19:00に開会のセレモニーが始まる。誰も聞いていないセレモニーが終わり、19:15頃に花火の打ち上げが開始。ひたすら、打ち上がる花火を観る。以下の写真はその節目でスマフォで撮った写真。デジカメでなかったのが残念。後で、サイトで見ると、花火の打ち上げプログラムが詳細に載っていた。

花火大会の現場ならではの良さは、花火の打ち上がるスピード感を感じさせる音、ドーンと炸裂する音、火薬の匂い、煙、そしてBBQの上に落ちてくる爆発後の花火玉の残滓(これが結構大きい)を味わえることである。知人が「砂かぶり」ならぬ「花火かぶり」と言っていたが正にそのとおりである。花火かぶりという特等席に招待いただいた知人夫妻に感謝しつつ帰路についた。深謝

これだけの規模の花火の打ち上げができるのは、板橋側には、河川敷の陸上競技場や親水公園風の堤防、戸田側には特別協賛にもなっている戸田橋競艇場等があり、花火の引火の危険を回避できる空間があることである。昔から、花火はどこも河原か、海の浜辺であった。こうしたイベントをする空間は大勢の人が集まるため、親水空間として整備されることが多い。普段は堤防しか意識しない河川に対して、河原というか河川敷空間のもつ良さに、こうした機会に触れて欲しいものである。

[caption id=“attachment_1056” align=“aligncenter” width=“461”] 花火大会の序章
何故かベランダの手摺を握りしめているのが知人の奥さん[/caption]

[caption id=“attachment_1071” align=“aligncenter” width=“614”] 花火大会もいよいよ終章
最後の盛り上がりへ迫力の連弾が始まる[/caption]

[caption id=“attachment_1073” align=“aligncenter” width=“461”] いよいよフィナーレ[/caption]

[caption id=“attachment_1074” align=“aligncenter” width=“614”] 空から舞い落ちてくる花火玉の紙の破片[/caption]

[caption id=“attachment_1075” align=“aligncenter” width=“614”] 花火大会終了後の帰り道に降り注いでいる花火の残滓破片[/caption]

日本の製造業現場力の構造的劣化の恐れにどう対処するか

日本メーカー、特に家電メーカー系の国内工場の閉鎖、人員整理が相変わらず続いている。退職を余儀なくされた方々のその後はどうなっているのか。技術者については、韓国、台湾、中国等のメーカーへの流出が言われているが、統計的には明らかにされていない。そうした中、韓国サムソングループを例にとって、日本技術者による日本の特許庁に出願された特許情報を分析した例が報告されている。

サムスンに多くの転職者を出した日本メーカーは?人財の流出問題を特許情報から分析する、日経ビジネスDigital、2013年06月06日版トップ

一方で、そうした縮退が続く中で残っている国内製造現場でいま何が起きているか。製造コスト圧縮方策の一つとして、2004年3月1日から改正労働者派遣法により、製造業への人材派遣が認められた。しかし、偽装請負の問題もあり、最近は、人材派遣業と分離した製造請負事業会社を持つ会社も少なくない。厚労省委託による「製造請負優良適正事業者認定制度」は、適正な請負・雇用管理を推進しようとするものである。製造請負では、メーカーは製造現場での指揮命令権限を持たないため、製造現場の製造管理、品質管理等は製造請負会社側の責任となる。

製造請負優良適正事業者認定制度」とは?【制度のあらまし】 「製造請負事業 優良適正事業者認定制度」(以下、「認定制度」)は、製造系請負・派遣等を業とする製造系人材サービス事業者会員で構成される「一般社団法人 日本生産技能労務協会」が事務局運営母体となる「製造請負事業改善推進協議会」が、厚生労働省委託事業として受託した委託費の交付を受けて実施しています。

しかし、MBO(Management Buyout)、EBO(Employee Buyout)、MEBO(Management and Employee Buyout)等のように、元々製造現場の工場が分離独立した製造請負会社は製造管理、品質管理等のノウハウを持っているが、人材派遣業者が製造請負事業者になって、製造現場を請け負う場合は、製造管理、品質管理等の専門家の支援がなければがその機能を果たすことは難しい。マスコミは、職人的製造現場の優秀さを喧伝しているが、世界の製造業のボリュームゾーンになっている領域では、すでに日本は競争力を失っているのではなかろうか。

たまたま、テレビで放映されていた台湾の半導体製造請負の専門メーカーTSMCは、世界一の製造技術を武器に世界の主要メーカーと台頭に付き合っている。請負側がセットメーカーに影響力を及ぼしている。今の日本に、このようなグローバルレベルで影響力を持つ製造請負事業者が存在していかどうかは定かではない。日本の場合は、製造請負というよりも、部品・部材メーカーや特殊加工メーカーとしてグローバルニッチトップ的な形での存在感を持つ企業が存在しているのではなかろうか。

また、卑近な例では、日本の産学連携の成果である木造住宅用制振ダンパーの生産を日本のメーカーに依頼しようとしたが生産ロットが小さすぎて請け負ってもらえず、結局、中国のメーカー(自動車バンパーの製造会社)に試作品づくりから依頼した。極めてスピーディに、日本メーカーも感心する技術的レベルでの仕上がりでの量産化に持っていくことが出来、市場に投入出来た。それも低コストで。もはや、日本の中だけで製造を考える時代ではないことを自ら体感したものである。

世界とのコスト競争力にさらされている関係で、製造現場へのコスト圧縮の要請が強く働き、その解決策の一つとして、人材派遣事業者系の製造請負事業者に製造委託される事が少なくない。しかし、コスト優先で受けた請負事業者側に単独で製造管理・品質管理等の専門家をリスペクトして受け入れるだけの体力はない。

さらに、製造請負する際も、ラインを分割した形で請け負うことが少なくないという。当然、分割して請け負った製造請負事業者は請け負った範囲でしか最適化責任を果たすしかない。つまり、ライン全体としての最適化の観点が欠落することになる。部分最適は必ずしも全体最適にはならないのは当然の帰結である。こうして、製造現場力の劣化が構造的に進むことになる。

一方で、日本は、団塊の世代の退職時期を迎え、日本メーカーの製造現場を支えてきた専門家が一気に現場を離れる状況にある。専門家はいたる所に存在する。その専門家のノウハウをどう承継するか。製造現場の製造管理、品質管理等はまさに経験知の積み重ね、集合知であり、貴重なノウハウである。こうしたノウハウを有する専門家を活用しない手はないが、現在の日本には組織を離れた個人は専門家といえども居場所がない。

そうした状況下において、専門家が海外メーカーに請われてその活躍の場を得ることは当人にとって喜ばしいことであるが、日本の国内製造現場力の維持・承継という観点から見た時、喜んでばかりいられない。専門家個人にとっても、製造請負事業者にとっても喜ばれる新たな仕組みの導入が必要ではなかろうか。

その一つの案として、日本国内の製造現場力の劣化を阻止しつつ、世界に伍していく製造現場経営を維持していくには、大手メーカーで育った製造管理、品質管理の専門家(群)をマネジメントする第三者的会社が窓口となり、国内発注メーカーと製造請負事業者の間を仲介し、ライン全体あるいは工場全体を一括してコンサル・指導する仕組みが考えられる。その費用は、ラインの製造請負事業者全体でシェアすれば良い。これは、ライン全体に対する製造管理、品質管理の維持・向上に係るコンサルティング・指導のマルチクライアント方式とも言える。この形態は、日本メーカーが海外進出する際にも応用できる。

これは、最近話題になっている㈱フォトクリエイトでも採用されている仕組みと基本的構造は同じである。契約カメラマン、街の写真屋さん、そしてエンドユーザが全てwin-winである。個人の専門家がプラットフォーム的マネジメント会社を通じて、個では出来ない活躍の場を得ている。

グローバル競争時代の日本メーカーの製造現場力を維持していくには、現場で培った専門知・経験知をいかに承継していくか、メーカー自身が時代構造の変化の流れを見据え、仕組みの再構築をするしかない。製造管理・品質管理の専門家も、リタイアしても埋没することなく、企業組織・業種・業態を超えて連携するなかで新たな価値創造が出来る可能性がある。では、いつやるか?製造現場に通じた専門家人材がまだ日本に存在する今しかない。

 

消費税、年金、そして定年延長にみる制度設計の問題

最近、国民の生き方、働き方、ひいては人生設計に影響する仕組みの問題とその論議のされ方が非常に気になる。

東日本大震災の復興支援の財源確保という増税の目的と実際の使途のギャップ。このギャップをみると、まもなく始まる消費税増税決定時の社会保障目的税化の趣旨が本当に実践されるかどうか心配になる。一方で、過剰規制と思しき消費税還元セール禁止の特措法の成立。

消えた年金問題の解明、問題解消の確認も十分なされないまま、関連組織を改廃再編し、なし崩し的にうやむやにする一方、年金支給開始年齢の引き上げが始まったばかりか、早くも更なる支給開始年齢の引き上げが議論されている。そして、年金支給開始年齢と定年退職年齢のギャップを埋めるべく65歳定年への制度設計がなされ、さらには70歳定年への延長を奨励する動きにある。

復興財源確保法が11月30日に成立 法人税は3年間税額の10%上乗せ 東日本大震災の復興財源を確保する法律や2011年度税制改正の積み残し部分を盛り込んだ所得税法等一部改正法など、2011年度第3次補正予算の関連5法が、11月30日の参院本会議で可決・成立した。 震災復興財源確保法では、復興特別法人税が2012年4月から3年間、年税額の10%を上乗せ、復興特別所得税が2013年1月から25年間、年2.1%を賦課、また、地方税の個人住民税均等割りが2014年6月から10年間、年1,000円上乗せされる。 補:制度の詳細は、復興特別法人税のあらまし(国税庁) を参照されたし 消費税に関する議論の概要と背景、国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 746、2012.4.3. 消費税が、平成 26(2014)年4月に8%、平成27(2015)年10月に10%(いずれも地方分を含む)へと段階的に税率を引き上げることとされている。またその際、国分の消費税収については全額を社会保障目的税化するなどして使途を明確にするとともに、低所得者への対策として給付付き税額控除の導入に向け検討を進めることとされている。 特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げについて、日本年金機構 平成12年の法律改正により、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢が平成25年度から平成37年度にかけて60歳から65歳へ引上げられます。 また、坑内員または船員としての実際の加入期間が15年以上ある方についても平成30年度から平成42年度にかけて65歳へ引上げられます。 この支給開始年齢の引上げに伴い、60歳台前半における老齢厚生年金の繰上げ請求ができることとなりました。 補:年金受給開始を68歳に?年齢引き上げを検討へ 雇用延長の義務化とは?  定年延長対策センター 特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢引き上げや2007年度以降団塊の世代の定年退職とともに労働力人口の急減が経済や社会保障制度に及ぼす影響等を背景として高年齢者雇用安定法が改正され、平成18年4月1日から65歳までの雇用延長が義務付けられました。 ただし、平成18年4月1日から直ちに65歳までの雇用延長が義務付けられるのではなく、平成25年度までに段階的に雇用延長の年齢を引き上げていくことになっています。 従って65歳までの雇用延長が義務付けられるのは平成25年4月以降ということになります。 この年齢は男性の年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げスケジュールにあわせ、男女同一に、平成25年4月1日までに段階的に引き上げられます。 補:定年引上げ等奨励金(70歳まで働ける企業奨励金)

こうした動きの源泉に仕組み(制度設計)に関わる問題がある。特に、年金制度と就業制度の問題は大きい。

年金制度の財源が少子高齢化の進行とともに問題になることは、審議会等で議論するまでもなく、人口年齢構造の推移予測から数十年前から確実視されていたことである。事実を直視し、制度設計により、予想される効果と限界等をきちんと周知して議論して欲しい。「100年安心」の制度設計であったはずがいつの間にか、いままたなぜ67、68歳への支給年齢引き上げなのか。関連審議会委員はもちろんのこと、政府・国会関係者は説明責任を果たして欲しいものである。後世の評価に耐える説明責任を果たせないなら、制度設計に加わるべきではない。今に至る制度設計対応の不作為の原因は何処にありや。

集めた年金資金の運用の杜撰さ。グリーンピアや年金住宅融資の問題はどうなったのか。そして、いままた、年金資金の株式運用の拡大検討が始まろうとしているが、十分なリスク対策はなされるのであろうか。責任の所在をハッキッさせた上でなされるのであろうか。加えて、年金記録の把握の杜撰さ。消えた年金問題はどうなったのか。行政の執行を監視すべき国会やマスコミの責任はどうなのか。

年金問題の歪、制度ギャップを、企業に定年延長を強いる形で埋めようとしているが、このことが、就業問題の本質をかえって歪めることになっている。長寿社会において、同じ組織(企業、行政)で一貫して働くことを前提にした制度設計でいいのか。組織ベースではなく、就業者個人をベースとした制度設計への転換が必要ではないか。それは、正規・非正規雇用問題、企業年金問題等の問題解決にも繋がる。

池田信夫 blog : タテ社会をヨコに動ける改革(抜粋) 本来、会社は労働者の乗り物にすぎない。沈み始めたら乗り換えればいいし、沈む船を助ける必要もない。労働者を企業から解放するには、まず企業年金をポータブルにし、退職一時金の優遇税制をやめ、専門職大学院職業訓練校を増やしてITなどのスキルを身につける必要があろう。生活保護は廃止し、こうした職業訓練を条件とする失業保険に統一すべきだ。 だから企業に雇用責任を負わすのはやめ、その代わりモラトリアム法のような企業に対する補助金や政策金融は廃止すべきだ。その財源は、すべて労働者の保護に回す。企業単位のタテ型セーフティネットから、労働者がヨコに動ける社会的なセーフティネットに変えるしかない。それなしで「解雇の自由」論議だけが先行すると、またつぶされるだろう。

何れにしても、人生を左右する制度設計が国民に向けての十分な事実情報の公開も議論もなく、行政主導の審議会ベースで進められるのではなく、やはり国会主導で、ネットでのリアルタイム公開を含めてオープンに骨太に議論して欲しい。そろそろ新しい時代に相応しい新しい枠組みでの制度設計の時代となることを期待したい。

 

歴史に触れて ~妻沼聖天山、さきたま古墳群~

GWの2013年5月5日、久しぶりに、ドライブ(日帰り観光)した。朝8時過ぎに自宅を出発。3月末の車検の際にタイヤ交換して最初のドライブである。行き先は、埼玉県熊谷市妻沼にある「妻沼聖天山」 と、行田市にある「さきたま古墳群」 (全体をさきたま古墳公園として整備中)。共に、国宝がある。そして、古墳公園のすぐ近くにある日帰り温泉「茂美(もみ)の湯」 で純重曹泉にゆったりと浸かってから帰路についた。往復総走行距離は約130km。

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