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仕組みづくりのプラットフォーム

最近、「プラットフォーム(Platform)」という言葉をいろんな場面で聞くようになってきた。一般的には、Platformとは「(駅の)プラットホーム、壇、台、踏み台、演壇、教壇、乗降口、基盤、基本骨格、コンピュータ・システム、土台、政治要綱」と定義されている。【出典:英辞郎 on the WEB

そして、専門的には、例えば情報通信分野においては「プラットフォームとは、アプリケーションソフトを動作させる際の基盤となるOSの種類や環境、設定などのこと」【出典:IT用語辞典 e-Words】、自動車分野においては「プラットフォームとは、モノコックボディの駆動方式やサスペンション型式、パッケージなどを決める最も基本となるシャシー(台車)のこと」【出典:いまさら聞けない!?自動車用語辞典】という意味で使用されている。

Platformのそもそもの語源は、「そのまわりの部分よりも高くなった水平で平らな場所(台地)をさす英語。中期フランス語(plate-forme)から英語に入ってきた」ようで、「駅のプラットホームとして日本に入ってきた。通常、駅以外ではプラットフォームと表記される。現在では、意味が拡大解釈され、階層構造全体の中の下側(下部、底部、基本部分)に位置するものを指し示す場合にも転用されるようになっている。」とのこと。【出典:Wikipedia】 つまり、プラットフォームとは、土台あるいは基盤というモノそのものあるいは概念を表す言葉である。

この「概念」としてのプラットフォームの更なる進化形として、国領は「プラットフォームとは、第三者間の相互作用を促す基盤を提供するような財やサービスのことであり、それを民間のビジネスとして提供しているのが、プラットフォーム・ビジネスである。(國領、1999 年) 多彩な音楽やコンテンツを消費者につなぐソフトウェアもプラットフォームだし、クレジットカード会社なども多くの企業と消費者が相互信頼して取引を行いうるサービスを提供するプラットフォーム・ビジネスといえる」という考え方を展開している。【出典:國領二郎、情報社会学会 招待論文「情報社会のプラットフォーム:デザインと検証」、情報社会学会誌 Vol.1 No.1 2006 (41-49)

そして、泉田は「政策形成を行う『場』としては、参加人員や開催時間が限られるものの、これまでも、審議会、中央官庁等に設置される私的諮問機関等が存在していた。これに対し、本稿では、情報通信技術も活用して知識循環の輪を拡大し、組織を超越して特定の政策形成について共通の問題意識や利害関係を有する者から構成される『場』のことを『政策プラットフォーム』と呼称する。この政策プラットフォームは、これまでの審議会等に比して、会議の運営にあたり、開催時間や参加者等の制約を大幅に緩和する。これにより、多様な者(人、会社、NPO等)が参画できることとなり、結果として、暗黙知を含むより多くの知識を持ち寄り、適合性の高い政策形成(=知識創造)を行う可能性が高まる」と提唱している。【出典:泉田裕彦、「知識国家論序説」

要するに、いまやプラットフォームという言葉は、元々の様々なモノを載せたり、作業をしたり、移動させたりするための「平らな面・床」という意味合いを超え、様々な分野において、新たな主体やアクティビティを生み出す「共創的な機能場」という意味合いで用いられていると言える。

共創的機能場としてのプラットフォームは複数主体の連携による共通的価値・機能の創出を目指すものであり、「範囲の経済」が働く。つまり、より基本的な機能であればあるほど、プラットフォームがカバーできる範囲は拡大し、その存在価値は高まるし、そこから生み出されるアウトプットの品質・性能や生産性も高まる。

それではこうしたプラットフォームに最も相応しい基本的機能として何が考えられるか。それがまさに「仕組みづくり」機能である。既に述べたように、社会には常にギャップが存在し、そのギャップを埋める新たな仕組みづくりこそが次へのダイナミズムを生み出すが、この「仕組みづくりのプラットフォーム」こそが現在の日本に欠けているものであり、これからの日本に最も必要とされているのではなかろうか。

もちろん、日本においては、「霞ヶ関」が法制度という分野での仕組みづくりのプラットフォームとして存在するが、新たなダイナミズムを生む出す仕組みづくり(新事業、新理論等)の先導役は、民間(個人、企業、大学等)こそがリスクをとりながら担うべきである。

それでは、「仕組みづくりのプラットフォーム」として何が必要か。第一は仕組みを考案する専門家群であり、第二はその考案した仕組みを形だしする際に必要となるそれぞれの分野での実務的専門家群である。その際、専門家群の中から、専門家を「組成」するという概念が重要である。組成は何も同じ組織内である必要はなく、必要なときに必要とされる旬な専門家が組成されればよい。

第一段階で必要となる多様な分野に対応可能な「仕組みを考案する専門家」はそれではどこにいるのか。仕組みを考案するには、冷静に課題(ギャップ)を抽出・認識し、本質を押さえた仕組みを考案する必要がある。それも机上の空論ではなく実効性と実現可能性を有したものである必要がある。そのためには、産・官・学に通じた経験と知識・ノウハウが欠かせない。現在の日本で、こうした経験、知識・ノウハウを有して者が群として存在しているのは一部の総合シンクタンクの研究者から政・官、産、学に転じ、それぞれの分野で研鑽を積んでいる一群ではなかろうか。こうした一群をプラットフォームに結集し、そのノウハウ・スキルをプラットフォームに蓄積していくことが日本の仕組みづくりのパワーアップにもつながるのではなかろうか。

次に、第二段階で必要となる「仕組みの形だしの実務専門家」はどこにいるのか。まず形だしの分野にかかわらず共通的な実務専門家として士業(弁護士、弁理士公認会計士、税理士、社労士、司法書士行政書士 等)や、金融・保険(資金調達、保険設計等)さらには立ち上げた仕組みを廻すマネジメント・リクルート・事務処理の実務専門家の方々が存在する。こうした分野以外は、当該分野それぞれに通じた専門家が必要となるが、それはまさにその分野の先端で頑張っている方々そのものである。

こうした観点で見たとき、既存の「プラットフォーム」は第一段階対応がなく、第二段階対応のみで、しかも手続き支援や助言・紹介・仲介的支援、あるいは施設環境的な支援等に留まっていることが多い。従って、まずは第一段階対応に主眼を置いたプラットフォームを構築し、第二段階対応は既存の「プラットフォーム」のプラットフォームになるという構造の「仕組みづくりプラットフォーム」の確立が急務である。