シェアリングエコノミーとプラットフォーム

シェアリングエコノミーとプラットフォームの本質と違いは何か

最近、シェアリングエコノミー(collaborative economy 、sharing economy)とプラットフォーム(platform)と云う言葉が時代を表す用語になりつつある。

シェアリングエコノミーとは何か? 欧州委員会報告書「シェアリングエコノミーに関する欧州のアジェンダ」の日本語仮訳[一般社団法人シェアリングエコノミー協会] 本報告書において、「シェアリングエコノミー」とは、物品又はサービス(多くの場合、私人が提供する。)の一時的な利用に開かれた市場を形成するシェアリングプラットフォームによって事業活動が促進されるビジネスモデルをいう。シェアリングエコノミーの参加者は次の3つのカテゴリーに分けられる。(ⅰ)資産、資源、時間及び/又はスキルを共有するサービス提供者―これらは時折サービスを提供する私人(「ピア」)又は専門的に活動を行うサービス提供者(「専門サービス業者」)と呼ばれる。(ⅱ)これらの利用者。(ⅲ)サービス提供者とユーザーを―オンラインプラットフォーム(「シェアリングプラットフォーム」)を通じて―つなぎ、これらの間の取引を促進する intermediaries(翻訳者注:日本法における「仲介」の概念と一致しないため、疑義を避けるため、「仲介」という訳語を用いない。)。一般に、シェアリングエコノミーの取引は、所有権の変動を伴うものではなく、営利又は非営利目的で行うことができる。

シェアリングエコノミーは、客室をシェアする旅館・ホテル業、物品(自動車、介護用具等)のレンタル/リース業、さらにはタクシー・ハイヤー等のサービス業にみられるように、従来からも成立している。これら従来スタイルのシェアリングサービスは、サービス提供主体が建物や物品・サービスを自ら提供する形態であり、資本力を必要とする。

これに対して、最近、新たなビジネスモデルとして話題となっているのが、インターネット(PCやスマホ)によるシェアリングプラットフォームを介在する新たなシェアリングエコノミーである。

プラットフォームは、様々な定義(参考:仕組みづくりのプラットフォーム)がされているが、社会システム論的に云えば、多様な主体や活動に対してインフラ的な機能を提供する仕組みの場である。最近は、場としてインターネットを活用し、人材調達・就労、ものづくり・産産連携、EC(物品等売買)、資金調達等、様々な分野で仲介・マッチング機能サイトの形態のプラットフォームが増えている。クラウドソーシング、クラウドファンディング等もこれらの一形態である。

つまり、シェアリングエコノミーは経済活動形態であり、プラットフォームは手段形態である。最近勃興している新たなシェアリングエコノミーのビジネスサービスはその実現方法として、インターネット(PC、スマホ)によるプラットフォーム形態をとり、個人同士で、サービスの提供・利用をおこなうところに特徴がある。

その本質は、個人の所有するリソースの一部(空き部屋、マイカーの空き時間等)を、利用したい個人に直接提供する仕組み、つまりは究極のカスタマイズビジネスをグローバルレベルで成立させていることにある。

その効果は、個人ベースでの新たな就労機会つまりは収入獲得源の創出、低価格によるサービス利用機会の多様化、個人ストックの共有促進=循環経済の促進等である。

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当然ながら、既存の法制度下で営業してきた当該サービス提供業界と軋轢を引き起こしているが、それは時代の変わり目には常に起きる。徒に、既存法制度・事業者を守るのではなく、既存事業形態ではカバーしきれないニーズに応えるビジネスモデルとして、市場の評価・選択に任せる仕組みを考えるべきである。イノベーション(創造的破壊)とはそうしたものではなかろうか。

海外におけるシェアリング・エコノミー型サービスの例 0004

(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年

Airbnb(エアービーアンドビー)のもたらすもの

Airbnbは、2008年に創業(米国)し、いまや世界191国、3,400都市の個人の空き部屋200万件が登録されて、累積利用者数60,000万人を超える(2016年7月31日現在HPより)。

この個人の空き部屋をAirbnbと云うシェアリングプラットフォームを利用して貸し出す仕組みは、いわゆる「民泊サービス」の仲介業的なもので、現在の日本の法律では微妙な位置づけとなっている。しかし、ホテル・旅館では味わえないサービス、多様な価値観に応える方法として合理的である。

さらには、この仕組みは、地方のお客の少ない民宿施設や、超高齢社会で空き室・空家が増えつつある日本においては、高齢者が特段の新たな投資をすることなく、年金以外の収入確保の方法としても期待できる。

参考:▶「シェアリングエコノミー」に取り残される日本民泊到来、問われる日本 わたしの構想、NIRA No.23「民泊VS旅館業」はもう古い? Airbnbで再生した地方旅館、WEDGE REPOR民泊実務集団 Team NanatsuBa

UBER(ウーバー)のもたらすもの

UBERは、スマフォで好きな場所に一般個人のドライバーが運転する車を呼び、目的地まで乗せてもらえるサービスで、今や世界の482都市で利用可能となっている(2016年7月31日現在HPより)。

このUBERと云うシェアリングプラットフォームを介した「白タク」の近代版的な仕組みは、地方において深刻な問題となっている交通弱者対策として期待できる。自動車を運転できない高齢者等が増えている一方で、人口減少によるバス、電車等が廃止され、買い物や病院に行く交通手段の確保をどうするか、新たな仕組みを創る必要性に迫られている。UBERはこうして地域においても、当該地域でマイカーを持ち、運転できる人を活かして、こうした要請に応える持続的な仕組みを提供でき、地域のビジネスコミュニティ事業としての可能性を秘めている。

行き着く先は何か

個人がサービスの重要者・供給者として成り立つ新たなシェアリングエコノミーは、インターネット、とりわけスマホの普及が大きい。いまや、スマホはあらゆる情報の受発信の窓口となっている。すなわち、スマホを利用する個人は、スマホを通じて容易にモノやサービスの売り買いが可能となり、その仲介・決済機能を提供するシェアリングプラットフォームが新しい時代のインフラとなりつつある。

この仕組みは、当然に、人の働き方にも及ぶ。従来は、企業等の組織に(正規・非正規雇用を問わず)専属し、工場やオフィスでは働くことが基本であったが、新たなシェアリングエコノミーは、組織に属することなく、個人ベースで知やスキルを売り買いする雇われない働き方が選択肢として成り立つ時代を招来している。

この雇われない働き方が、雇われる働き方の仕組みを変えるかもしれない。簡易な決済機能が金融機関のあり方を変えるかもしれない。どこに居ても収入を確保できることは、住まい方・暮らし方を変えるかもしれない。個人ベースの仕組みを起因とするリバースイノベーションが起きようとしている。この流れを棹さす一人として、一つの手段(プラットフォーム)として、Japa日本専門家活動協会を社会に根付かせたい。