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地方をベースとした新たな働き方の実践 ~サイファー・テック社に学ぶ~

先日(2014年11月12日)、主宰している創発交流会において、徳島県美波町に本社を移し話題になっているサイファー・テック株式会社の吉田基晴社長に基調講演をお願いし、意見交換もさせて頂いた。

東京に本社を置き、出身地の美波町サテライトオフィスを置いていた会社形態を、東京側をサテライトオフィスにし、美波町に本社に移転させたとのこと。逆転の発想である。

これにより、いろんな事が大きく変わったとのこと。

まず、社長以下、社員一人一人が「半X半IT」という仕事のために大切なもの(X)を捨てずに働ける生き方を標榜し,実現できているとのこと。「X」には、社員それぞれのこだわりのサーフィンあり、狩猟あり、農業(コメ作り)あり、漁業(釣り)、等々。確かに、こういう働き方、生き方は田舎でしかできない。

これは、自らの生き様を貫き持続するためにビジネスをしているとも言える。当然、心身ともに健康にもなる。このような余裕(遊び心)を持ったビジネスの仕方の方がクリエイティブにもなるし、イノベーションも起こせるかもしれない。現在の「田舎で生きる」、「田舎でビジネスをする」一つの形を示している。成長のピークを過ぎ、成熟社会に移行した時代においては、このような会社起こしや経営、生き方をしたい人は、日本のあちこちにいると思われる。

結果して、東京で一IT企業として、人材募集しても集まらなかったのに、美波町での「半X半IT」を打ち出し求人すると、3人の募集人員に180人も応募してきたとのこと。社員も増え、増収増益とのこと。これはすごい。それだけ、今の日本には、働く場所と生き様を一致させたいという人が多いということを物語っている。

また、田舎(本社)と東京(サテライト)と行ったり来たりしているとのことであるが、これは地方をもベース拠点の一つとする「兼居」スタイルであり、ビジネス活動空間のネットワーク化である。本社、ラボ等がハブであるということである。「知」あるいは「IT」ベースのビジネスであればこうした兼居・ネットワーク活動空間形態は成り立つ。仰々しく、行政が金と口を出さなくても、民主導で地域の新たな生き方が実現できるのではなかろうか。

事実、吉田社長は田舎で事業体を置くことの社会的な存在感の大きさを語っている。確かに、東京ではあまたある企業の単なる1社に過ぎない存在が、田舎ではその存在感が大きくなる。まして、若く新しい感性をもつベンチャー企業の存在はその地域にとってはものすごく刺激になると思われる。地域興しにもなる。

吉田社長は、そうした地域興しの期待・ニーズに応えるための会社(株式会社あわえ)も興している。ボランティア組織ではなく、株式会社にしたのは自律した持続性を維持するためとのことであるが、同感である。日本のボランティアは何故か無償に近いイメージがあり、行政も単に安い労務提供体として利用しているがそれはおかしい。欧米では日本の株式会社以上にしっかりした収入を得て経営をしているボランティア団体が少なくない。残念ながら、今の日本では、ボランティア事業的な活動においても、ソーシャルビジネス体としての株式会社、あるいは一般社団法人形態の方が持続的な活動を可能とする。

地域に生まれ育ち、都会でビジネス感覚を磨いた者がその生き様を発揮する場、空間が都会である必要はない。日本である必要もない。いまや、ビジネス空間はネットワーク(移動、通信)で繋がっており、1カ所である必要はない。組織もネットワーク状であっても良い。社長が居るところが本社機能所在地である。

新しい感性の持ち主が新たなビジネス形態をあらゆる場所、あらゆる業種で興して欲しいものである。そうした雑多な勃興が絡まり合って次代に向けての大きなうねりとなり、イノベーションを引き起こすのではなかろうか。自らもそうしたうねりの中に身を於いてもうしばらく汗をかいてみたい。