北海道の電力系統のブラックアウトについて

2018年(平成30年)9月6日3時7分59.3秒、「平成30年北海道胆振東部地震」が発生し、18分後に道内全域約295万戸で停電するという日本では初めての「ブラックアウト」と云われる事象が発生した。東日本大震災の時に実施された「計画停電」の実施も検討されたが、実施には至っていない。

北海道胆振東部地震 - Wikipedia


ブラックアウトの詳細な原因究明は第三者の検証委員会で進行中であるが、震源近くにある苫東厚真火力発電所への依存度の高さにあると思われる。この発電所は道内最大の火力発電所で、地震発生時の需要量310万キロワットの半分以上の165万キロワットの供給をしていた。この発電所が緊急停止し、需給バランスが崩れ、連鎖停電に至ったと云うことである。

北海道電力の電力設備分布図

f:id:newseitenx:20180923154010j:plain

簡易図(ブラックアウト、苫東厚真火力の「一本足打法」あだに、産経ニュース、2018.9.13より)

f:id:newseitenx:20180923154135j:plain

 幸いだったのは、泊原発が停止中であったため、東日本大震災のときの東京電力福島第一原発で発生した「全電源喪失」が引き起こす事故という事態が発生しなかったことだと原子力研究関係者が云っている。

 一般に、あるノード(今回の事象で云えば、苫東厚真火力発電所)が故障した時に、連鎖的に他のノード(火力発電所)も故障するという現象をカスケード(雪崩)故障と呼ぶ。そして、局所的な故障が、ネットワーク全体に影響を及ぼすことをグローバルカスケードと呼ぶ。

1996年に起こったアメリカ西部停電事故は、たった一本の送電線(リンク)が切れただけで、11州に被害(停電人口約5000万人)が波及した。この停電は、切れた送電線の送っていた電流分を他の送電線に振り分けたところ、 その送電線を流れる電流が許容範囲を超えてしまったため、その送電線も切れてしまう・・・ と言ったことが立て続けに起こったために生じた停電であり、典型的なグローバルカスケードとされる。

すなわち、電力関係者であれば、当然にこうした過去の大規模事故のネットワーク論的リスクを知っていたにもかかわらず、苫東厚真火力発電所に過度に依存した電力供給システムとなっていたのは、経済効率優先、コスト優先が過ぎたと云わざるを得ないのではなかろうか。

 

今回の北海道でのブラックアウトは、集中発電による効率化だけを追求するのではなく、非常時の被災リスクを想定して、電力供給システムの自律分散型ネットワーク化の必要性を示唆している。自律分散型の発電システムとは、地域に分散した再生エネルギー(地熱、太陽光、風力、波力等)のことであり、原子力発電の代替にも繋がる。改めて、電力システムの在り方が問われている。