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実態と仕組みのギャップ拡大 その1:空間利用

Business Model History Life 時評

最近、いろんな場面で、仕組みと実態のギャップが大きくなっている感がする。仕組みには、旧来の仕組みだけでなく、新しくつくられた仕組みも含まれる。時代の節目となっている今、基底に流れる時代構造の変化の本質を捉え、実態とのギャップを解消するた仕組みの見直し・創造が求められている。「規制緩和」ではなく、仕組みそのものの「仕立て直し」である。今回は、そのなかでも特にギャップが大きい空間利用に関して述べる。

土地利用

現在、地方創生が重要な政策課題とされ、その中において農林水産業という地場産業の活性化が喧伝されているが、その際の大きな問題が土地利用に関する私権と規制である。そもそも、我が国において現在に通じる土地の私権(特に、所有権)は、明治期の地租改正を経て確立した。そして、土地利用に関する現在に通じる規制は、戦後以降の急速な人口増大に伴う都市域のスプロールを如何にしてコントロールするかにあった。

しかし、今は、総人口の減少過程に入り、土地の所有から利用へ、土地利用の抑制から効果的な利活用へと、時代の要請は変化してきている。建築物、まち空間、農地・林地空間は利用し手入れを継続的に行われないと、朽ちたり荒れる。逆に、適切に利用され手入れがなされると、時代を経ると共に文化財的価値を帯びてくる。文化財は重要な観光資源であり、ハードを新たにつくるよりも遙かに低コストで地方の持続的活性化に資する。

そうした実態と仕組みとのギャップの現れが空き家であり、耕作放棄地であり、手入れができていない山林である。手入れができていない山林(特に、里山)の荒廃は、川を通じて海にも影響する。こうした視点で、市街化区域であれ、調整区域であれ、白地であれ、抜本的に土地利用に関する仕組みの見直しが求められている。巷間云われる6次産業化云々もこうした土地利用に関する仕組みを変えないと実効が伴わない。

都市・農村における土地利用の計画と規制、参議院国土交通委員会調査室、2006年我が国の土地利用の課題と展望(これからの土地利用を考える懇談会 報告書) 、国土交通省 土地・水資源局、平成20年7月

住 宅

総人口減少、世帯数減少の影響を最も受けるのが住宅であるが、これまた、実態と仕組みのギャップが大きい。空き家が急増している一方で、新築住宅の大量供給(いまでも年間約90万戸)も続いている。まち中の古い住宅の跡地を業者が買い取り、土地を細分化して従前よりも小さな住宅を建て販売する状態が続いている。

住宅は普通の人は一生に一度あるかないかの高額な買い物であるが、その品質はブラックボックスである。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」があるが、所詮、初期性能の書類審査が基本である。住宅は当然ながら経年劣化するが、その品質の検証ができない。仕組みもない。そして、経年的な品質状態(使用価値、物理的価値等)と関係なく、市場・税制上の資産価値はゼロ化する(例えば、木造住宅であれば実質20年)。一方で、資産価値ゼロになる期間を超えて、35年ローン(フラット35)なるものが販売されている。こうしたローンは売りやすくなるため、供給側・金融機関にとっては良い仕組みだが、需要側にとっては人生のリスクを内包する仕組みとなる。

「老後破産」しないための回避術 住宅ローン、浪費癖、無謀なライフスタイル…

例えば、自動車の中には数多くのセンサーがキーパーツとして組み込まれ、何時でもその性能把握が可能となっている。然るに、住宅は、自動車よりも高額で使用年数が長いにも関わらず、なんらのセンサーが組み込まれていない。見た目でのゆがみ、ねじれ、腐朽等しかない。住宅(特に、構造躯体)の経年的品質を常時把握できる技術的仕組みを組み込み、住宅の流通財としての評価の科学化・健全化を図らなければ、中古住宅の流通市場の成立はおぼつかない。

人口急減時代に急がれる中古住宅市場の活性化、ケンプラッツ、2015/05/15

上 空

最近、技術の進歩が社会の仕組みに大きな影響を及ぼしそうな状態になりつつあるのが、無人航空機・飛翔体(ドローン)である。各種資料によると、現在の航空法は、基本的に航空機を「人が乗り込んで操縦するもの」という前提で制定され、農薬散布などに使われる大型ラジコンなどを想定した法律を持っている程度である。

特に、都市域の上空において、こうした交通物(超小型のドローン)が飛び交うことはこれまで想定していなかった事象であり、当然、仕組みそのものがない。「航空法に照らし、航空機の飛行ルートに当たる場所では地上から150mまで、それ以外の場所では250mまで、国へ通知することなくドローンを飛ばすことができる。」(出典:ドローンとは何か?価格は?誰でも購入できる販売実態が明らかに)との。同じことが、公道上の無人自動車でも起きている。

従って、米国のホワイトハウスの敷地内にドローンが墜落したり、日本の首相官邸の屋上で無人機が墜落していたり、その後も各地でドローンによる騒動が起きているが、「空の産業革命」と云われるほど、そのもたらす影響が大きい。下記のサイトを見ていると、実態の進歩が早く、仕組みが追いついていけないのがよく分かる。

すごい未来がやってくる!無人飛行機(ドローン)が今、アツいドローン初体験の小泉進次郎政務官『ゼロリスクはありえない』(発言全文)ドローン産業で日本は大きく出遅れ!? 米連邦航空局とグーグル・アマゾンは急接近、DIAMOND Online、2015年5月18日目が離せない!ドローンの商用利用とその市場の可能性、GE REPORTS JAPAN、May 13, 2015

こうした新たな技術によるイノベーションのリーディングプレーヤーはAmazonであり、Googleであり、従来のプレーヤーとは異なる。ビジネス化の仕方を含めて世界のデファクトスタンダード獲得競争を睨みつつ、日本としても新たな仕組みづくりが急がれる。