1.はじめに
2025年(令和7年)6月13日、「地方創生2.0基本構想」が石破内閣において閣議決定された。その背景にある考え方は、第217回国会における石破内閣総理大臣施政方針演説(令和7年1月24日閣議決定)に示されている。
第217回国会における石破内閣総理大臣施政方針演説(令和7年1月24日閣議決定)
2.地方創生2.0、「令和の日本列島改造」の具体化
(「令和の日本列島改造」)
「楽しい日本」を実現するための政策の核心は、「地方創生2.0」です。これを、「令和の日本列島改造」として強力に進めます。
都市対地方という二項対立ではなく、都市に魅力を感じる方、地方に魅力を感じる方、そうした一人一人の多様な幸福が実現できる場として、都市も地方もその魅力を高めていきます。
かつて、田中角栄元首相の「日本列島改造」では、道路や鉄道といったハードなインフラの整備を起点として人の流れを生み出し、国土の均衡ある発展が目指されました。
「地方創生2.0」は、官民が連携して地域の拠点をつくり、地域の持つ潜在力を最大限引き出し、ハードだけではないソフトの魅力が新たな人の流れを生み出す。新技術を徹底的に活用し、一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会を構築していくものです。
「令和の日本列島改造」は、5本の柱で、厳しい国際競争の中、日本全体の活力を取り戻すべく進めてまいります。
第1の柱は、「若者や女性にも選ばれる地方」です。
第2の柱は、「産官学の地方移転と創生」です。
第3の柱は、「地方イノベーション創生構想」です。
第4の柱は、「新時代のインフラ整備」です。
第5の柱として、都道府県域を超えた広域連携の新たな枠組みである「広域リージョン連携」を強力に推進します。
この2025/06/13に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」は、石破茂首相が師と仰ぐ田中角栄元首相の看板政策「日本列島改造論」(1972年)[工業再配置と交通・情報通信の全国的ネットワークの形成をテコにして、人とカネとものの流れを巨大都市から地方に逆流させる“地方分散”を推進する]を意識しており、総理大臣所信方針で自ら「令和の日本列島改造」と称している。「令和版日本列島改造論」である。このため、上記の閣議決定された「地方創生2.0基本構想」には、「日本列島改造論/地方創生1.0/地方創生2.0の比較表」なるものが参考資料として付されている。
参考:田中角栄『日本列島改造論』 均衡ある発展、未完の見取り図 2025.3.19 滝田 洋一/名古屋外国語大学特任教授、日本経済新聞客員編集委員 日経BOOKPLUS
その比較表によると、高度成長を背景に「国土の均衡ある発展」をめざした日本列島改造論から、バブルが崩壊し低迷する経済を背景に人口減少に歯止めをかけようとする「地方創生1.0」(まち・ひと・しごと創生総合戦略)の失敗(人口減少抑制や東京一極集中是正できず)を受け、人口減少が進む中でも経済成長、地域社会維持をめざす「地方創生2.0」という大きな流れを読み取れる。
「地方創生1.0」で謳われた「移住人口」も、定義・解釈次第でどうにでもなる「関係人口」にシフトしている。「広域リージョン連携」は、村上総務大臣が2025/02/13の衆議院総務委員会で言及した「(長期スパンの話として)県庁も全部いらないし、道州制も意味がない」につながる。
参考:「県庁も道州制も不要」国会発言の真意を村上総務相が激白、人口が半減する時代を見据えて議論を本格化すべき 村上誠一郎・総務相インタビュー 2025年5月17日 5:20 DIAMOND onlkine