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新年に想ふ

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

本ブログも昨年の後半は別途新たな資料づくりに追われ、なかなか新規アップができなかった。今年は少なくとも週一でアップしたいと念じている。「ほぼ日刊イトイ新聞」風にいえば 「ほぼ週一ブログ」をめざしたい。

さて、2009年が明け、はや10日となった。東京にはこの冬初めての雪もチラホラ舞った。昨年は戦後以来の仕組みの澱(おり)が一気に吹き出した感があった。本年はその澱を吹き払い、新たな時代への道筋が描けるようにしたいものだ。

その新たな時代の道筋を何から描くか。やはり、まずは「人」の問題であろう。昨年末から「派遣切り」の嵐が吹いている。東京新聞(2008年12月16日)の「本音のコラム」でルポライター鎌田慧氏が昨今の派遣切り企業を称して「公害企業」と言っている。派遣労働者を吐き出し、その失業者救済のツケを税金に廻している実態(いわゆる社会的費用の外部化)をもって、かっての「公害企業」と同じではないかと言っているが、なるほど言い得て妙だ。そして、その「公害企業」と称されている企業の代表的な一つが経団連会長を出している企業である。なにやら象徴的である。

企業経営の重要な施策の一つに、無駄の排除があり、数年来コストカッター的社長がもてはやされているがこれには疑問がある。本当に無駄なコストのカットは企業経営上もちろん当然であり不可避である。しかし、リスクヘッジ上必要な(一見無駄に見える)冗長性的な機能を担っている部分までをカットすると、いざというときにリスクに対処できない。本当の無駄と冗長性との見極めは、視野の広さ、目線の高さ(時間軸の長さ)に左右される。コストカットは最も短絡的に利益出しに直結するがために、安易に数字を求めることに陥りやすい。

企業経営における最大の固定費は人件費である。企業は経営戦略上、総人件費の削減と変動費化を目指して、年功序列的賃金体系のカーブの高い部分(シニア層)を抑え、カーブの低い部分(若年層)を派遣あるいはパートに置き換え、カーブを下げる。さらには、アウトソーシングして丸ごとカーブを下げる。当然ながら、総人件費は削減され、変動費化も進む。人件費の変動費化とは、事業活動に応じて増減できる投入変数扱いできるということであり、昨今のような急激な需要減退期に削減(つまり派遣切り)することは当然の流れとなる。人件費の変動費化は相当以前から言われていたことであり、昨今の状況は急に出てきた話に起因するするものではない。

派遣あるいはパート形態はいわゆる「非正規雇用」と呼ばれる雇用形態であるが、この「非正規」と称することがそもそもおかしい。雇用されている限りにおいて「正規」も「非正規」もない。正規雇用者あるいは正社員側からみた蔑称ではなかろうか。本来は「常用雇用」「フル雇用」と「非常用雇用」「パート雇用」と称すべきである。

要するに問題の本質は、人件費の変動費化の当然の帰結としての「派遣切り」にあるのではなく、常用雇用者と非常用雇用者の間の社会的な格差にある。日本の社会の仕組みは”常用雇用”あるいはフル雇用をベースにでき上がっているため、この雇用形態からはずれた瞬間に社会的なセーフティネット(safety net)あるいはフェールセーフ(fail safe)が働かず、悲惨な状況に追いこまれてしまう。さらに言えば、常用雇用であっても、行政・大企業と、中小零細企業とでは組織に帰属することによるフリンジ・ベネフィットがかなり異なる。格差そのものでもある。そこには大いなる「仕組みのギャップ」が存在する。

こうした実態と仕組みのギャップを埋めるにはどうすべきか。その一つが、派遣のあり方の見直しである。日本の将来を担う若者は不安定な非常用雇用状態ではなく、将来に向けて腰を据え積極的にリスクテイクできる常用雇用をベースとすべきである。そのような若者の常用雇用の受け皿枠の拡大のために、シニア層(特に年金受給者層)は常用雇用に固執することなく非常用雇用をベースにした働き方とするのが日本全体にとっては望ましいのではなかろうか。これは世代間による一種の「ワークシェアリング」である。

現在の派遣事業者は若者層を中心とした派遣で成り立っているが、今後はシニア層の派遣をメインにした派遣事業者が主流となることを期待したい。シニア派遣事業者の先例が「高齢社」である。高齢社の採用条件は「60歳以上75歳未満で気力・体力のある方」と年金との併用が基本となっている。時代を先取りしている最近、話題の企業である。是非一度、ホームページへアクセスして見て欲しい。

もう一つの方策が、雇用されるのではなく、独立・起業することである。日本人は「働く」ことはイコール「就職つまり雇用」をイメージするが、雇用される側(従業員あるいは使用人)にいる限り、資本主義社会のメリット、醍醐味を享受する機会は少ない。少子高齢化・ネットワーク社会時代は個人力・小集団力を活かす時代であり、それが低コストで可能な時代でもある。大企業等の既往組織にロックインされたプロフェッショナルな人材を解き放ち、新たな成長分野へ向けて人材の流動化(独立・起業等)を促すことは、日本の活力維持の観点から不可欠である。

問題は、そうした大企業等の組織から離脱した個人・小集団に対するフェールセーフ機能が現時点においてはないことである。これが整備されないとインセンティブが働かない。フェールセーフ機能を具備するにはそれなりの母集団の規模で必要であり、独立・自律した個人・小集団の受け皿となってそうした機能を持てるプラットフォームを創る必要がある。こうしたプラットフォームができれば、大学教授(含むOB)、ポスドク、士業、さらには働かずに眠っている専門家(リタイアシニア、主婦等)等の受け皿にもなりうる。民ベースでこうしたフェールセーフ機能を持ったプラットフォームを是非実現させたいものである。