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久しぶりに「日展」を観て

昨日、国立新美術館で開催されている「第40回日展」を観てきた。学生時代にいわゆる地方への「巡回展」をみて以来の本当に久しぶりであった。

赤に白抜きの日展というデザインイメージは変わらないが、全体の印象としては「おとなしい」という感じで、感動を感じるまでには至らない。既視感のある作品も少なからずある。芸術家としてのパッションを会場全体から感じないのは何故だろう。

そうした中でも、「日本画」が一番良かった。伝統的な色使いのものもあるが、洋画の良さを取り入れた新たな流れを感じられた。これは久しぶりに見たからこそ感じられることかもしれないが。気になるのは、日本画の人物描写の殆どが色がくすんで見えること。人物の肌も、自然物と同じとしての表現かもしれないが。

一方、「洋画」は今ひとつ。洋画がビジュアルアート風、写真風、さらには日本画風になってもちょっと違うのではと思う。写真風と写実との違いはよく分からないが。何れにしても、洋画全体としての進歩が感じられない。う〜ん、訴えてくるものが何か足りない。退化さえ感じられるのは何故か。若手の登竜門的位置づけ故か。

何れにしても両者を続けて観て感じることがある。それは、使う画材は異なるも、日本画が洋画風になり、洋画が日本画風へと融合しているということである。

「彫刻」は、大型の彫刻が所狭しとおかれ、まるで大規模な日曜大工品店のカーデニング用の商品陳列みたいな感じである。あれでは、なかなか彫刻の良さを鑑賞するのは難しいのでは。彫刻の良さの違いを評価できるほどの鑑識眼はないが、彫刻というのはやはり置かれた場所というか、空間にマッチする、あるいは空間に影響力を与えると思うので、展示空間そのもののデザインにもっと気を遣うべきでは。主催は芸術家集団で、開催場所は最新の美術館なのであるから、分野別に展示空間の作り方に違いを持たせることができないわけではないと思うが。

「工芸美術」については、日本人の繊細な感性、伝統が持つ感性を感じさせる作品が多かった。なるほど、こういうものがまだ日本にはあるのか、こういうものをまだ創る人が日本にはいるのか、と認識を新たにした。そして、こうした造形美を持つ人たちがうらやましい。

「書」については、とにかく多すぎて観るべき焦点が定まらない。そして、情けないが読めない。漢詩、そして日本文であっても流麗な草書体で恐らく「書」を書かない人には読めないのでは。周りを見ていても、言葉を発しているのは恐らく同業者(書道教室の先生と弟子等)と思われる人たちのみである。お茶やお花とおなじ自己満足的な閉鎖的世界を感じた次第である。

茶道、華道、書道、・・・、「道」がつく世界は「業」として成立する仕組みを長年かけて作り上げてきている。これに対して、日本画、洋画、彫刻家、工芸美術の分野の人たちは、ごく一部の人を除いて、どうやって生計を立てているのかついつい心配してしまう。WEB2.0的表現をすれば、ロングテールに棲む人が圧倒的に多いという世界であろう。これに対して、「道」の付く世界はロングテールのお客までも対象としているからこそ、長年にわたって営々と生きながらえることができるのであろう。

何れにしても、全体に量が多すぎる。ホームページによれば、応募点数14,519点に対して入選点数2,349点、入選率16.2%ということで展示点数が多いわけである。審査員はこれでも厳選と書いているがそれは身内の評価に過ぎない。入選の閾値が低すぎるのでは。「日展入選」を一種の「免許証」と解すれば逆に妥当かもしれないが。

日展は現在、「社団法人日展」(昭和33年設立)が主催しているが、その歴史的由来から「官展」(政府主催の展覧会)と称されてきた。明治40年、美術審査委員会官制が制定され、これに基づき文部省第1回美術展覧会(略して「文展」)が開かれたのが最初である。この文展を礎とし、以来、時代の流れに沿って「帝展」「新文展」「日展」と名称を変え、日展は100年の歴史を有する。現在の日展開催主催の社団法人日展は、昭和33年に創立され、第1回日本美術展覧会を開催し、昭和44年に改組し今日に至っているとのこと。

とにかく大量展示故、観るのも疲れる。次回は心して準備の上、観に来よう!

番外編:疲れを加速させるのが腹ごしらえが十分にできない点にある。国立新美術館の中にあるレストランは規模も小さい上、出される量は少なく、決して美味しいとは言えず、値段だけ高い。さらに、今時、ペットボトルを200円で売るところはそうそうない。外の出て、六本木の東京ミッドタウンhttp://www.tokyo-midtown.com/jp/index.htmlの地下街の方が遙かにリーズナブル。ここには何たってスーパーマーケットすらある。国立新美術館に行く人、行った人はこちらでの昼食がお勧めである。