DX白書2021等にみる日本のDXの実態

コロナ禍が発生してから約2年、日本のIT/デジタル化の遅れ、及びそれに起因する各種の仕組みの遅れが露わになった。そこにおいて、「Digital transformation(DX)」がにわかに脚光を浴び、「デジタル庁」も発足した。しかし、DXの本質的意味合いは、「データ及びITデジタル技術を活用した仕組み革新による新たな価値創出」にあるが、多くは単なる情報化/IT/デジタル化推進に留まっている。

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出典:D X レポート 2中間取りまとめ(概要)令和2年12月28日 デジタルトランスフォーメーションの加 速に向けた研究会

IT/デジタル人材

こうした中、2021年10月11日に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が取りまとめた「DX白書2021」が公開された。IPAはこれまで、人材に関して「IT人材白書」(2009年~)、技術に関して「AI白書」(2017年~)を発行してきたが、これに「戦略」の要素を加え、統合したものが「DX白書2021」である。この白書は「ビジネス」を対象としているが、「行政」にも通用する内容である。

これによると、今回のパンデミックをはじめとした外部環境変化に対して、ビジネスへの影響を尋ねた結果(図表12-1)やデジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)の取組成果(図表12-2)、さらにはアジャイルの原則とアプローチ[顧客価値を高めるために企画、実行、学習のサイクルを継続的かつスピード感をもって反復すること](図表12-3)をみると、日米でその感度の違いが大きいことがよくわかる。

これは、危機意識の違いであり、構造的にはビジネスモデル/組織運営がIT/デジタル技術を駆使したものになっているか否かの違いを象徴的に著していると云える。ペーパーレスで大騒ぎするようなレベルでは話にならない。

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DXの本質からして、経営トップ/経営層のコミットメントが不可避であるが、IT分野に見識がある役員の割合(図表22-2)をみると、大いに懸念を感じざるを得ない。組織の壁を越えた協力・協業(図表24ー5)、さらには金融庁の監督下に置かれたみずほ銀行のシステム問題にその懸念が象徴的に現れているのではなかろうか。

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IT人材そのものについては、「IT人材白書2017」にすでにその量的・質的不足が指摘されている。IT人材が圧倒的に供給側(IT事業者)に偏在し、ユーザー企業側に少なく、自らのビジネスモデルを自社主導で迅速にIT/デジタル化対応できない。欧米・中国とのビジネス展開・拡大のスピードのギャップを生み出す構造的問題がここにある。供給側からユーザー側にIT/デジタル人材がシフトするか、中学・高校・高専・大学・専門学校等で人材育成を急ぐしかない。

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デジタル庁

2021年9月1日発足のデジタル庁の陣容規模は約600人規模でスタートし、このうち民間IT人材は200人程度とされている。民間IT人材については、デジタル庁と民間企業の間を人材が行き来する「リボルビングドア」の仕組みが採用されている。

日本のデジタル人材不足環境の中、デジタル庁の掲げたミッションの遂行が叶うのか、心配ばかりしていては先に進めない。必ずや人材はいる。若き優秀な人材を発掘し、最先端の環境で育ち活躍できる場を創って欲しいものである。

デジタル庁のミッション
「デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します。

徹底的な国民目線でのサービス創出やデータ資源の利活用、社会全体のDXの推進を通じ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を実現すべく、取組を進めてまいります。」

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 出典:新たな推進体制について デジタル庁 

最後に

何れにしても、デジタル社会時代に追いつき、さらには先導できる日本づくりに向けて、人材育成から含めた仕組みづくりに注力するしか日本の生き残る道はないではない。次代を担う若い人材に期待したい。