マナー・プロトコロールと外見力

ある縁で「外見力」養成コースなるものに参加した。これは日本マナー・プロトコール協会が主催している研修の一つである。「マナー・プロトコロール」なる言葉も始めて耳にしたが、確かにマナーはプロトコール(手順、決まり事)そのものである。

日本の文化としての流派にとらわれないマナー・プロトコロールは基本的素養として確かに必要である。特に、日本人が海外に行くときには是非、身につけておきたいものである。逆に、訪日する外国人にも是非、一度は日本のマナー・プロトコロールに接し、引いては日本文化に接して欲しいものである。

わが国はいま総人口減少期に突入しているが、こうした時期は歴史的にみて文化熟成の時期となっている。堺屋太一流の表現をするならば、様式美を問われる時代となるらしい。「様式」まさに「プロトコロール」である。そうした意味で日本マナー・プロトコロール協会がめざしている方向は時代の流れに合致している。

ところで、わが国の慣習・文化・伝統的世界は家元制度を基盤として組織化されていることが多い。この家元制度こそは、まさに普及システムと集金(収入)システムが一体化した仕組みそのものであり、さすがに長年にわたって築き上げられてきただけのことはある。家元サイドから見て、いろんな意味で実に良くできている。ある意味、市場価格がなく、お布施的価格であり、しかも段々とスパイラルアップしていく。ギャンブルにおける胴元と同じである。すべてが、家元、胴元に流れてくるのである。

家元制度は継続的に顧客を囲い込みリピーター化したビジネスモデル(仕組み)である。胴元制度は例えば携帯電話業のようなインフラ業であり、お客が勝手にお金を落としていくビジネスモデル(仕組み)と言える。

日本マナー・プロトコール協会は、NPOであり、既存の流派にとらわれないマナー・プロトコールということであるが、コンテンツはそれで良いとしても、その普及と存立のための仕組みには、家元制度と胴元制度の融合的な新たな仕組みが必要と思われる。

さて、「外見力 」養成コースであるが、「外見力」はこのコースの講師役を務めている大森ひとみ氏の株式会社大森メソッドの登録商標とのこと。先だって紹介した「生涯現役」も登録商標であった。こうした普通名詞的な表現が商標登録されるのも時代の流れか。

この養成コースでいろいろ教わったが、最もショックだったのが、「メラビアンの法則」なるものである。その具体的内容は次の示すように、人の印象はその殆どが話の中身ではなく、見た目と声の印象で決まっていると言うことであった。

 1.眼からの情報(要するに服装などの見た目)が55% 

 2.声の調子・話し方(要するに声の印象)が38% 

 3.言葉(要するに、話の中身)が7%

これは、話の中身、すなわちコンテンツ重視の業界で長年生きてきた者にとって、いささかショックである。コンテンツの創造に情熱を燃やしてきた者にとって、見た目と声がすべてと言われては、立つ瀬がない。忸怩たる思いである。

考えてみれば、そうした外見を良くし、それに見合った振る舞いを続けていれば、中身が次第に着いてくることかもしれない。「立場が人を創る」とはよく言われるが、「外見が中身を創る」とも言えなくはない。人は見栄を張り、やや背伸びをしてこそ、成長するということか。

しかし、「外見」が「外見力」にまでならず、「外見」だけで終わっている人が多いのが実態ではないか。その象徴がブランド品に身を固めただけの人。ブランド品だけに目がいき、その人そのものには目がいかない人。・・・。日本が世界で一番、ブランド品が売れる市場であるにも係わらず、その人に見合った外見力が身に付いていない実態は寂しい限りである。