シニアいろいろ 御殿いろいろ

先日、大学の先輩(S35年卒、S38年卒、S41年卒)に拉致されて、4名のグループで1泊2日で湯西川温泉へ行った。因みに筆者はS50年卒の若輩者(高齢者活躍支援協議会の某副理事長にはガキと言われている)である。1泊2日夕食・朝食付きで5,500円、都内からのバスの送迎費往復600円で合計6,100円。昼食処(グループ経営)とおみやげ屋に立ち寄るところは何処のツーリストも同じである。栃木県の鬼怒川温泉に本拠地を置くおおるりグループのバスツアーであるが、このような格安値段でどうしてビジネスとして成り立つのか、不思議であったが実際に経験してよく分かった。

まず、バスの送迎であるが、首都圏18個所から鬼怒川温泉3ホテル、塩原温泉5ホテル、湯西川温泉1ホテル、奥日光中禅寺温泉1ホテル、那須高雄温泉1ホテル、草津温泉4ホテル、熱川温泉2ホテルに向けて、「ゆけむり号」というバスで出発する。筆者は池袋駅から乗車したが、数台のバスがなんと満席状態である。その理由は、行き先の違う客が同乗しているからである。そして、鬼怒川温泉にあるグループのバスのターミナル拠点で最終目的地別に乗り換える、という仕組みである。これは、宅配便システムと同じである。よく考えている。このターミナルに併設して、ヘリコプター遊覧もある。聞けば3分4千円とのこと。金が飛ぶとはこのことか。

もちろんバスにはそれほど金をかけているわけではなく、古くてやや狭いが往復600円なら、それも仕方がない。文句は言えない。

しかし、この安さのため、利用客の大半はシニアである。グループ・団体客が多い。ワイワイガヤガヤしゃべりっぱなしの方がいるかと思えば、途中のトイレ休憩の時に時間内にバスに帰ってこれない方もいる。シニアもいろいろである。

湯西川温泉に行く途中で、湯西川ダム工事の現場を抜けていく。帰ってきて、WEBで改めて調べてみると、湯西川ダム工事事務所のサイトがあった。湯西川はそもそも利根川の支川であり、そこに重力式コンクリートダムをつくるようである。サイトを読む限りは多目的ダムのようであるが、果たして計画当初の目的が現時点で本当に機能するか、さらに言えば必要とされているかは不明である。このダムの本体工事は281億円で落札され、工期は来年の3月25日とされている。そもそも、このサイトが現場用のサイトそのもので、納税者、国民目線でできていない。全貌がよくわからない。

しかし、工事はあと半年弱ということで、構造物(トンネル、橋)が多い付け替え道路もできており、立ち退き移転したと思われる民家、各種施設が真新しく建ち並んでいる。いわゆるダム御殿か。御殿も太陽光パネル付きからいろいろある。湯西川温泉の某寺のお墓の墓石が一様に新しい黒御影石であったがこれも立ち退きの一貫かどうかは不明。

このダム工事で立派になった建物、道路の一方で、途中にある温泉街で廃墟と化したホテルがやたら目に付く。確かに、バブルがはじけた現在では過剰にホテルが立地しているのは否めない。

さて、バスは鬼怒川温泉、奥日光湯元温泉を経て、ようやく14:00頃に湯西川温泉のグループの旅館につく。着いたホテルに入り、このグループのビジネスモデルがわかるような気がした。まず、ホテルの手入れ・修理がされていない。掃除をしていない。かっての大規模ホールと思しき個所はダンス会場に転用している。これで社交ダンスの団体客を取り込んでいる。よく考えている。ホテルは倒産したホテルを居抜きで買い取り、何ら手を加えることなく、使用し、使い倒して、使用不能になれば別のホテルを買い取り営業しているのでは思えるようなホテルの施設状態である。確かに、そうでもしなければこんな値段でビジネスはできないであろう。

しかし、この時期に、放射能汚染も心配される温泉地のホテルをほぼ毎日、満杯にしているこのグループのビジネスモデルはすごいと感嘆せざるを得ない。バスによる集客システム、ホテル運営システムを見ていると、サービスではなく、仕組みが全てであると再認識知る。

夕食、朝食も5,500円の中で提供されるが、多くを望んではいけない。しかし、ホテルの施設、サービスは別にして温泉はなかなか良い。庭にある露天風呂(かっての庭園風呂)、内風呂及び露天風呂とある。2日間で3回ほど入浴した。到着した夜には食事の後、別のグループと酒盛りが始まる。旅なれたグループは手作りのおつまみ持参である。見ると、冷蔵庫が満杯である。シニアの皆さんは元気である。

そして、元気なシニアは寝ている時も元気に寝言を言っている。

さて、翌朝、食事の後、チェックアウト時間の9:30で部屋から出され、ロビーで出発時間の10:30まで待つ。そして、着た時の逆のバスの集配システムで池袋まで帰ってきた。

今回はなかなか得難い経験をした。ビジネスモデルの勉強にもなった。