お盆と介護

今年のお盆の帰省は久しぶりにフェリーを利用した。高速道路を利用して、早朝出発、そして夜につく行程が肉体的にきつくなり、運転事故のリスクが高くなっていることが原因である。数年前には、居眠り運転による自損事故(その場で廃車)を高速道のトンネル内で起こした。若い時のようにはいかない。

フェリーはオーシャン東九フェリー(東京-徳島-北九州)の全員指定ベッドタイプのカジュアルフェリータイプ。いままでは、雑魚寝スタイルのスタンダードフェリータイプしか利用したことがなく、初めてこのタイプを利用した。例えてみれば、カプセルホテルのようなイメージである。小さな子供がいない大人だけでのグループ、家族はこのベッドタイプのほうが落ち着く。

数年前と違い、フェリーターミナルには切符の販売窓口機能しかなく、他のサービスコーナーは全て廃止。単なる待合空間になっている。そして、船旅の楽しみでもあった船内での食事のサービスもなく、自動販売機のみである。このことを知っている人はみんな弁当等を持ち込んでいる。全て、経費削減のためと思われるが、なんともわびしい。単に人・車を運ぶだけになっている。なんとももったいない。

船内サービスの事業をやりたい会社とコラボレーションすればもっと違った船旅を演出できるのではなかろうか。コラボレーションの仕組みを考えるべきであろう。船内に居る人はみんな長時間手持ちぶたさなのであるから、適切なサービスがあれば喜んで利用するであろう。

19:30に東京港有明埠頭フェリーターミナルを出港し、翌日13:20に津田港フェリーターミナルに着く。

フェリーから下船して、市内を抜けそのままさらに田舎の実家に行く。翌日は、今年1月に亡くなった母の初盆である。お盆の時だけ、手伝う住職の息子が来て読経する。お坊さんも稼ぎ時で多忙のようである。読経の途中に遅れて駆けつけた娘も加わる。兄弟・親戚が一堂に会する。夕方にかけて三々五々散開。

我が一家も徳島市内の家内の実家に行くことにする。行きがけに、家内の父親が入っている介護老人保健施設(いわゆる老健施設)に立ち寄る。介護保険制度導入時に制度検討支援絡みの仕事をしていた部署をみていた関係で、仕組みとしてはなんとなくわかっているつもりでいたが、初めて、こうした介護施設に入り、入所者の様子を伺い、そして介護士、機能訓練士等の業務の実態を垣間見た。

その日はそのまま帰り、翌日10:00に義父を迎えに行く。お盆の時ぐらいは家で過ごさせてあげたいという家内や義母の願いがあり、翌日の11:00までという外泊許可をもらう。

軽い心筋梗塞脳梗塞を患った関係で右半身がやや麻痺しているため、車椅子からの車への乗り換え、家の椅子やベッドへの移動が何人かで抱え込んでの状態になるため、結構オオゴトである。車椅子での移動においても、田舎の農家の古い家は段差が多く、その都度、3人で車椅子を持ちあげなければ移動できない。さらに、オムツも替えなくてはならない。「人」としての尊厳とは何か、しみじみと感じさせられる。

自宅介護の難しさを実感する。お盆の時は、帰省した身内がいるから何とかこうした自宅介護が可能であるが、みんなが帰ったあとはまさに老老介護になり、無理である。介護支援機器のない普通の家で介護するには、少なくとも家の中に力のある大人が2人はいないと厳しい。意識調査を見ても、介護施設の重要性が明らかである。ベッドに寝かしておくだけの病院よりも、老健施設のような機能訓練ができる施設の方がいいのではなかろうか。

【参考資料】 シニア・高齢者の介護に関する意識調査 ―自分の介護は誰にしてほしい?配偶者でも子でもなく、トップは「施設や病院」― シニア・高齢者の介護に関する意識調査 ―自分の介護は誰にしてほしい?配偶者でも子でもなく、トップは「施設や病院」― ■家族や親族の介護、経験者は57.0% ■介護をしていて辛いと感じた事柄、「精神的な面」が87.0% ■介護される側になった際不安な事柄、1位「家族への負担」、2位「金銭面」 調査会社:株式会社ジー・エフ

こうして、今年は阿波踊りを見ることなく、お盆が終わった。帰りは、11:30徳島出港、翌日5:30東京港有明埠頭着。早朝の銀座通りを走って自宅に着く。自宅を出てからの車の走行距離は約200km。フェリーを使わなければ約1400kmの走行になるので、やはりずいぶんと身体にはやさしい。その分、介護にエネルギーを回せた。

団塊世代(800万人)が介護される時代が来たとき、介護の仕組みがどうなっているのか、。このままでは、年金と同じで、支える若い世代がそっぽを向く恐れがある。真剣に考え、きちんとした仕組みを作り上げべく、今後も身近な問題として考えていきたい。