終活のエンディングノートを超えて

集合知サービス事業推進協議会が進めてきたソーシャル・コラボレーション・サイトFellowLinkが12月1日にオープンした。専門家の知・スキルの蓄積・伝承・融合・創発・ビジネスの場づくりをめざす群衆智の曼荼羅サイトのコアサイトである。 これを受けて、高齢者活躍支援協議会のリレー執筆によるブログ「群像シルバーカラー」に「終活のエンディングノートを超えて」というタイトルでその背景等を投稿した。ご笑覧いただければ幸いである。

***以下、群像シルバーカラー「終活のエンディングノートを超えて」の再掲***

2010年12月06日09:31
「就活」、「婚活」、「離活」(離婚への備え)、「高活」(本協議会で提唱:シニアへの備え、生き甲斐を持って元気に活動)と続いて、ついに「終活」だそうだ。「終活」とは、人生の終末期の過ごし方を考えたり、葬儀やお墓の準備をすることをさすらしい。  「終活」の言葉を生み出したのは、「週刊朝日」で昨年8月から12月まで続いた連載記事「現代終活事情」とのこと。このあたりの詳細はasahi.com「本の舞台裏 『終活本』続々発売」で紹介されている。最近も東京新聞(2010年11月26日 朝刊)でも取り上げられている。 東京新聞によると、終活の内容を分かりやすく記載できる「エンディングノート」が人気とのこと。エンディングノートとは、遺言状のような法的な位置づけを持たないが、自由に自分の思い、考えを整理できるものである。エンディングノートのソフト版の説明文をみればおおよそのイメージがつかめるであろう。因みにこのソフトは有料であるが、WEBサイトでの無料版もある。
・経歴書(履歴書が簡単に作成できる) ・自分史(画像挿入可能、世の中の出来事装備) ・家系図(父方、母方の切替可能。『ルーツ2006』の技術を応用) ・親戚・知人リスト(慶弔管理、エクセル書き出し、取込可能) ・財産管理(不動産・動産) ・病歴管理(健康管理に最適、医者の報告にも使える) ・画像管理(家紋や遺影など) ・家族へのメッセージ(あなたのこと、介護のこと、葬儀、埋葬、供養のことなど)
こ れを眺めていると、何となく檀家帳を思い出す。檀家帳は実は貴重な歴史の保存帳でもある。檀家帳(過去帳)を見ればその町や村の人間模様や生業(なりわ い)の歴史が見えて来るという。確かに、このエンディングノートの機能はお寺がかって持っていた機能かもしれない。調べてみると、檀家帳のソフトも流通し ているようである。さもありなん。「あちら」よりも「あの世」の方がクラウドにあっている。 何れにしても、このエンディングノートは、家 族という身内に向けたクローズドな情報を前提にしているが、その中の一部(特に自分史)はオープンにして、本人の生きた証として世の中に残してもいい。名 をなした人は、自分史を日経新聞の「私の履歴書」等に掲載して社会に残し伝えることができるが、そういう機会をもてる人は限られている。世の中には、「私 の履歴書」には書けないがその一歩手前の人は無数にいる。 そして、社会にとって重要なのは、そうした人が経験して獲得した「知」を社会に 残し、伝え、そして組織、分野、時空を超えて融合し、新たな知の創発に結びつけたり、さらにはそうした知の現実社会での活用、市場価値化をいかに図るかに ある。今の日本社会は、かってはあった知に対するリスペクトが薄れ、眼前の直裁的な利益を重視する風潮にあるが、これでは今後の日本の持続的成長はおぼつ かないのではなかろうか。 その道で何十年と追求してきたそれぞれの分野における専門家(いわゆるプロ、匠等)の実証知、経験知は社会に還元し、新たな知の体系化(すなわち学問知化)を興し、レベルアップした知を次の世代につなげていくことが重要である。 然 るに、現在の日本には、こうした専門家(特に、組織を離れた専門家)が個々に有する知を活かす場がない。これまでの日本は、企業組織(人)を前提に多くの 仕組みが構築されてきたため、現在およびこれからの日本社会の主流となる組織を離れた個々人(の能力)を前提にした仕組みがない。セーフティネットがな い。つまりは居場所がない。 現在の日本の閉塞感は既往の組織体ではなく、自律した専門家としての個々人がブレーススルーしていくしかな い。しかし一方で、こうした専門家がリアルに一堂に集まる必要もない。つまり、クラウド上に専門家が集い、ソーシャルにコラボレーションする仕組みがあれ ばよい。実は、こうしたことをめざしてあるサイトが12月1日にささやかにオープンした。その名を「FellowLink」という。 「FellowLink」は、学問分野や実業分野の多様な専門家による共智・共創・共助のプラットフォームサイトをめざしているである「群衆智曼荼羅」 のコアサイトに位置づけられるものであり、今回はまずは世の中の多くの専門家にプロフィール登録をしてもらうことにフォーカスしたベータリリースとなって いる。今後、登録専門家の増加に応じて、専門家同士のコラボレーションを実現するサービスを順次追加して予定である。エンディングノート的な機能、さらに は画像と音声で残す「記憶の銀行」的機能もマッシュアップするのもいいかもしれない。クラウドの世界にさほどの制約はない。登録した専門家がまさにコラボレートしながら機能を創り込んでいけばいいのである。 FellowLinkの立ち上げに当たり、特定非営利活動法人日本シンクタンクアカデミー高齢者活躍支援協議会の協賛も得ている。リアルな集いの場を提供するノマド@ステーションとも提携し、FellowLinkの登録専門家は割引価格で共用型ワークプレースサービスを利用できるようになっている。今後さらに協賛団体や提携先を拡げる予定だ。 経験に基づくや知や技能を活かして、新しい働き方を指向できる新しい時代の器づくりに本ブログの読者の皆さんも参加しませんか。(芝原 靖典)
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