不都合な事実の諸相

近年、勝手はあり得なかったような事態「不都合な事実」が相次いでいる。逆の意味で常態化している。国としての構造的な劣化ではないかと危惧される。次から次へと起こる事態に流されるなか、当事者を異動させ、組織を改廃し、忘れ去られていくのをいささかなりとも今後に活かすため、アーカイブとして残しておく。

 

公文書に関する事実

近年、政府統計の改竄・不正放置問題、「森友学園」の国有地払い下げ問題、「桜を見る会」の招待者名簿破棄問題、日本学術会議任命拒否問題、等々に関わる公文書の不開示、改竄、破棄、さらには、そもそも記録しない(議事録を取らない/残さない)/「不存在」等が相次いでいる。政府統計、公文書は国の基本となる記録であり、後世の歴史的評価に委ねる事実データであるにも関わらず、ずさんな扱いがなされている。

制度設計・運用に関わる事実

国が自らつくった制度を無視し、恣意的運用がなされ、説明責任を果たしていない不都合な事実として、「日本学術会議の任命拒否」問題や「外国人技能実習生」問題がある。

日本学術会議の任命拒否」問題は、コロナ禍における専門家に対する扱いの問題と同根の専門家に対するリスペクトのなさがあるのではなかろうか。この専門家をリスペクトしない状況は「ポスドク」問題に象徴的に現れている。科学立国、イノベーションを標榜しながらその源泉となる「知」を生み出す専門家を大事にしない国の未来に危惧を感じる。

そして、コロナ禍であぶり出された不都合な事実が「外国人技能実習生」問題である。以前から、その実態についてはいろいろ問題が指摘されていたが、コロナ禍で水際対策が厳格になされるべき時期にも外国人技能実習生の入国が続いた。この制度に対しては、米国が「2021年人身売買報告書」でその問題を指摘した。労働力不足問題と移民問題が絡む難しい問題であるが、キチンとそのあり方を議論するべきではなかろうか。

人権問題に関わるものとして、新疆ウイグル自治区における強制労働問題もある。原材料のサプライチェーンと関わる問題であるが、一部の日本企業と政府の対応は鈍い。

ウイグル自治区における強制労働と日系企業の関係性及びその責任  認定 NPO 法人ヒューマンライツ・ナウ 日本ウイグル協会 2021年4月8日

説明に関わる事実

直下のコロナ禍下でのオリンピク開催に対する「安全・安心」の根拠事実を説明しない事態も常態化している。何をもって「安全」と云っているのか、リスクマネジメントの観点からの説明はない。そもそも、TOKYO2020は東日本大震災(含む福島第一原発事故)からの「復興」を謳ったものであった。しかし、それが「コロナに打ち勝った証」に変わり、いまやそれも使わなくなった。

地方自治体の行政に関わる事実

熱海の土石流災害が人災ではないのかとの疑義が生じ、盛土事業者への行政対応が問題として浮上している。当該盛土事業者はその界隈の業界、行政では有名人だったと聞き及んでいる。

不適切な盛土(産廃処理)に対する監視、指導、処分等がなぜできなかったのか。この問題は静岡県熱海市だけではなく、全国で見られる。同じような問題に、太陽光発電の設置場所の問題もある。山肌の木を伐採したり、川沿いの自然堤防を崩したりして太陽光パネルを設置することは洪水被害を発生させる原因となる。今一度、自然災害対応の観点からの山、川を点検する必要がある。

懸念する「熱海土石流」型災害の増加 :必要な人口減少社会に適した開発規制への転換を 戸所 隆(事業創造大学院大学 特任教授・元(公社)日本地理学会 会長)021.07.19

最後に

これに対して、警鐘をならす報道もされている。しかし、こうして諸相を眺めていると、やはり時代の変わり目というか、切り替え時ではなかろうかと感じざるを得ない。制度疲労を機会にイノベーションの勃興を期待したい。