コロナ禍の前・後

現在、そして恐らく今後数年続くと予想される新型コロナウィルス感染症の影響は、黒死病第一次世界大戦スペイン風邪第二次世界大戦に匹敵する大きな社会経済的変革をもたらすことが確実視される状況を多方面で惹起している。

参考:関係情報は新型コロナウィルス感染症特設コーナーを参照下さい。 

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コロナ禍の前

コロナ禍が発生する昨年末まで、世界は効率最優先・利益拡大をめざし、グローバル競争に邁進していた。結果、取り残された国・地域・民族・人は数知れず、2015年9月の国連サミットで「地球上の”誰一人取り残さない”(leave no one behind)」社会の実現に向けて、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されるに至っていた。しかし、その取り組みはまだ始まったばかりであった。

日本企業が真にSDGs に貢献するために 表層的な貢献表明は大きなリスクとなる、
 リシ・アガワル 黒田 由貴子、Harvard Business Review、2019.10.02

グローバル経済の拡大、経済成長至上主義は、世界的に自然環境破壊、生態系破壊を拡大させ、野生動物と人間の活動空間の近接化・相互侵入を招くことになり、動物由来のウィルス感染症のリスクの高まりや、鳥獣被害の拡大を招来していた。

ウイルス流出は野生動物に対する人類の行動の必然的結果 2020年4月10日(金)18時00分 松岡由希子 Newsweek日本版

グローバルな交通手段(航空機、船舶)もまた長足の進歩を遂げ、世界の移動時間距離は縮まり、世界各国・地域間の人流・物流が拡大してきた。人流はインバウンドを対象とした市場を拡大させ、物流はグローバルなサプライチェーンの構築に寄与してきた。

一方で、今回のコロナ禍以前より、世界は地球温暖化による気候変動、そして自然災害の激甚化、頻発化を招いていた。その発生リスクは依然として存在し、地球温暖化が止まらない限り、自然災害リスクも高まり続ける。特に、自然災害多発国である日本はコロナ禍下での自然災害の発生が危惧される。

市民への緊急メッセージ 「感染症と自然災害の複合災害に備えて下さい」(防災学術連携体 幹事会)(2020/5/1) 防災学術連携体

コロナ禍の今

現在も続いているコロナ禍の中、従来の常識では想定外的な事態が多発している。

1.非常事態宣言、緊急事態宣言
   ・国境封鎖、都市封鎖、都市間移動禁止、外出自粛
2.上記に伴う消費需要とサプライチェーンの同時停止
3.都市機能の停止、非常時システムの麻痺(医療崩壊等)
4.上記の対応のためのオンライン社会の加速(先触れ体験)

これらの状態を招いたコロナ禍の収束には1~2年、影響の回復には3~10年を要すると見込まれ、コロナとの共生が長期化・常態化することになる。そこにおいて、世界の景色は当然変わらざるをえないと思われる。

まず、コロナ禍により改めて公衆衛生・防疫の重要性を再認識した社会は、これまでの防衛・防災に加え、防疫も含めたリスクマネジメントが当然視されることになると思われる。

また、今回のコロナ禍で、特に注目されるのが、在宅勤務(テレワーク)、オンライン講義、オンライン診療等、これまでなかなか進まなかったことが一時的とはいえ体験したことで、オンライン社会化への流れは止まらず加速するものと思われる。

テレワークの常態化は、オフィス機能・規模の見直しや、就業者にとっての住む場所(=働く場所)を見直すきっかけになると思われる。

これらは、これまでとは違った意識・考え方を覚醒させ、スコープを拡大させ、結果として新たな知の爆発をもたらすことになるものと思われる。まさに、パラダイムシフトである。

コロナ禍の後

このようなパラダイムシフトを余儀なくされるコロナ禍の後には、適応力のある社会(レジリエントな社会)への変容による持続可能な社会が求められるのではなかろうか。それは、換言すれば、「社会システムのイノベーション」である。

消費者は、働き方・住まい方・暮らし方、つまりは生き方を変えることであり、企業等はそうした社会システムイノベーションのエンジン役としての機能が求められる。グローバル的にはSDGsの本格的実践であり、ローカル(日本)的には地方創生(地方の課題解決)の支援である。

地方発の社会システムに係るイノベーションを通じた地方創生は、その集合体として日本創生につながり、さらには世界創生(SDGs)にとつながるリバースイノベーションを惹起させる。

 

コロナ禍を凌ぎつつ、その先を見据え、適応力(レジリエント)を日本として、個人として発揮したいものである。