新型コロナウィルスパンデミックについて

新型コロナウィルス感染症 特設コーナーの開設

2020年04月01日、3月末までの新型コロナウィルス感染症に係る経緯等について取り急ぎ整理して本ブログにアップした。しかし、それだけでは全貌がつかめないため、4月13日、「新型コロナウィルス感染症 特設コーナー」を開設した。

日を追う毎に情報も増えているため、随時、構成も修正しつつ、コンテンツを拡充している。できるだけ、客観的かつ科学的根拠を有していると思われる情報を選別し、体系的に時系列整理している。いろいろな方々に何らかのお役に立てれば幸甚である。

 

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新型コロナウィルス感染症の正しいリスク認識を

東日本大震災は目に見える大災害であったが、現在進行中の新型コロナウィルス感染症パンデミック状態は見に見えない大禍である。かつ、それは世界スケールである。外出できないため、社会的活動の停止が日本国内だけでなく、世界規模で起きている。世界レベルで、消費経済が止まり、サプライチェーンがとまり、生産活動が止まっている。

こうしたウィルスによる感染は、感染して抗体ができるか、ワクチンが開発され全世界に供給されるまで収まらない。1年半から2年程度要することを覚悟しないといけないものと思われる。その間、世界的な規模で第2波、第3波が襲来する。高々1ヶ月の外出自粛で治まる事態ではない。

現在は大いなる非常時であり、平時ではない行動様式が問われている。

政策のトリアージュを

2020年東京オリンピックパラリンピックの延期が決まった翌日(3/25)、小池東京都知事は外出自粛要請を行った。あれほど渋っていたWHOがパンデミック宣言(3/11)してから約2週間後である。

しかも、その後、オリンピックの延期が1年後に決定されたが、世界からアスリートと観客が訪れるオリンピックが本当に開催できるのか、世界レベルでの収束のリスクを考えるとなんとも云えない。誘致するときに、福島原発事故を「アンダーコントール」と云っていたが、同じことを繰り返すのであろうか。

その他の関連する対策等の意思決定(の仕組み、手順)は平時のままのようである。例えば、手指用の消毒液が不足しているのに、その規制が緩和されたのは、つい最近(4/10)である。東日本大震災の時に、海外からの救助犬が検疫規制関係で国内に入れないという事態を生じていたことを想起した。

事務連絡 令和2年4月10日 厚生労働省医政局経済課 新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について (改定)
人工呼吸器、参入に規制の壁 非常時対応に海外格差 日本経済新聞 2020/4/10 23:53
一方で、緊急対策として、いろんな案が出されているが、非常時の疫学的緊急対策という観点からは少しずれているのではなかろうか。

「全戸に布マスクを2枚配布する」対策が466億円をかけて実施されはじめようであるが、個人のマスクは自分でつくるなり、外出自粛すればなんとかなる。優先されるべきは、いままさに医療崩壊しつつある医療・検査体制の維持・仕組みづくりに廻すべきではなかろうか。特に、医療・看護関係者の身を守る装備品の充足や、医療と検査を分離して、民間企業の活用と医療・看護の専門家でなくても可能なサポート要員の補充等が急がれる。

非常時に求められる条件、精度は、予定調和的な平時とは異なる。

布マスクの全戸配布に関するQ&A(4月13日更新)
2020.04.14[マクロ経済] メディア情報 「和牛商品券」という愚策が提案されてしまった理由:現在の農政劣化を象徴する前例なき政策提案。どうしてこんなことに...... 論座に掲載(2020年3月29日付)

時代構造に合った個人ベースの対策を

緊急経済対策の目玉として出された「新型コロナウイルスの影響で世帯主の収入が一定の水準まで減少した世帯を対象に、現金で30万円を給付する」も少しずれている。最終的には廃案とされたが、その発想が古い。

いまや、独居高齢者世帯が太宗であり、夫婦共働きが普通である。シングルマザー/シングルファーザーも少なくない。フリーランス、非正規の雇用者も少なくない。家/世帯を単位にした考え方は時代に合っていない。ダイバーシティ社会、男女参画社会は単なるキャッチフレーズであったのか。いい加減、戦時中以来の社会経済の仕組みを改廃してほしいものだ。

加えて、すべからく大禍や対策の歪みは最も弱いところをついてくる。個人ベースでみたとき、そうした歪みがもっと肌感覚で分かるのではなかろうか。

緊急経済対策の 30 万円の給付対象者概要と残された論点
ひとり親世帯や年金を受給しながら働く世帯などに検討の余地あり 大和総研 2020 年 4 月 13 日  
 

総力戦を

世界規模のパンデミックと戦うには、総力戦は不可避である。こうした観点からみた場合、見えてこないのが、企業であり、防衛医大である。

いま、日本の企業(主に大企業中心)には506兆円の内部留保金が溜まっている。現在のような非常時にこそ、この内部留保を活かして欲しい。関係取引先の存続に使用して欲しい。さらには、企業・オーナーからの貢献(寄付等)が少ない。東日本大震災時に日本にも寄付文化が生まれたが、今回の新型コロナウィルス感染症パンデミックは大災害以上の大禍である。

また、近年、大災害時に自衛隊の救援における存在感が高まっているが、今回のような防疫的大禍においても防衛医大所沢市)の存在感が高まっても良いのではないだろうか。野戦病院的設営が必要になっているとき、自衛隊並びに防衛医大が動いても良い。また、動けるような装備、要員体制を組んでいい。今後とも、大禍も、大災害も頻発することが予想されている。

適応力のある社会へ

現在進行中の新型コロナウィルス感染症パンデミックに係る一連の対応等の推移を見ていると、現在の日本社会の仕組みに内在している膿というか、劣化が露わになっている。目の前の命の危険を回避しつつ、今後も起こりうる多様な事態に適応できるレジリエントな社会に向けて道筋をつける必要がある。

そのためには、戦中・戦後以来の前提・常識・思考・枠組み等を考え直すことが欠かせない。まず、「経済合理性」(経済効率)という指標(目標)が社会経済システムの最上位的な統合的目標指標でいいのか。生活指標(ナショナルミニマムシビルミニマム)、幸せ指標(Well-Being等))、リスクマネジメント指標(国防・防災・防疫)、その他多々あろう指標の統合に相応しい指標(目標)が問われるべき時期に来ている。

国防・防災・防疫(要するに非常時)を考えたとき、経済効率のみを追求したサプライチェーンで良いのか、都市・まちづくりでいいのか。経済効率とリスク(特に、ナショナルリスク)、そして国民・住民の安寧とのバランスをどうとるのか。BCP(事業継続計画)も抜本的に見直す必要がある。

地方創生の突破口に

進行中のパンデミック対応において、地方によっては自律した対応を実施し、こうした非常時においては、現場にこそ突破力があることを証明した。

また、外出自粛がテレワーク時代の幕開けを結果としてもたらしている。現状はまだ十分な環境にないが、個人・企業のそれぞれのクラウド環境整備、ITリテラシーが普及・進化すれば、真の働き方改革にも繋がる。日本中のクラウド環境が整えば、それはイコール世界と繋がることであり、地方の自律分散ネットワーク構造が進み、地方創生の突破口となる。

最後に

東日本大震災時に変わることを期待したが変われなかった日本。今回こそは、耐え忍び生き延びる中で変わる道筋を見つけ出し、コロナ禍明けにはレジリエントな社会に変わった日本を見てみたい。