超高齢社会における駅の価値の見直し

辻堂駅

最近、とある居住支援法人の代表にお話を伺いに同行した帰りに、同行者と最寄り駅(辻堂駅)でコーヒーでもということで喫茶店を探すため、駅に直結したテラスモール湘南に行った。この施設は、2011年(平成23年)に駅隣接の工場跡地の再開発により整備された複合商業施設(開発・管理・運営:住商アーバン開発㈱)で、湘南地域最大級とのこと。

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出典:テラスモール湘南 Wikipedia

確かに、モール内を歩くと、広大で平日にもかかわらずそれなりに来訪者がいる。入った喫茶店のお客は我々以外は全員女性であったが。こうした施設が女性をターゲットにせざるを得ない理由が実感できる。先日、とある地方創生に関する講演で、「若い女性に魅力あるまちづくりをしないと地方に人は帰ってこない」といっていたことを想起した。

同行者のふと漏らした「駅に直結しているので来やすい」と云う言葉にハッとした。確かに高齢者になると、車を自在に運転できる若壮年層の者と違って、駅だと電車にさえ乗れば来られる。ましてや、今後、さらに高齢者は増え続け、高齢単独世帯が太宗となる。免許を返納した高齢者は電車でないと買回品を購入できる場所に行けない。駅ビルあるいは駅直結施設の商業サービス施設は超高齢社会には不可欠な機能であることを思い知らされた。

所沢駅

そういえば、地元の所沢駅でも駅ビル整備(現在も残り半分の整備中)がなされ、その中に店舗が出店し、大いに賑わっている。一方で、駅に直結していた百貨店が閉店し専門店ビルに衣替えした。商店街通りを少し歩いた先にあるスーパー(元ダイエーのイオン)も閉店した。

そして、それらに変わるように、所沢駅西口の西武鉄道の車両工場跡地で大規模な再開発が進行中である。実は、その事業主体がテラスモール湘南事業主体と同じとのこと。不思議な縁を感じる。確かに、辻堂駅テラスモール湘南と同じような条件下にあり、広さも十分ある。所沢市も買い回りがしやすい街になる。所沢駅を中心とした拠点が生まれようとしている。

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集客拠点の変遷

かっては、神社仏閣とその参道沿いの商店街。そして鉄道時代になると、鉄道駅と駅前商店街(含む百貨店)で集客ゾーンが形成されていた。それが自動車時代になると、郊外に大規模駐車場を備えた大規模商業施設に買い物客は流れ、駅前商店街はシャッター通り化し、百貨店は廃れた。徳島県などは唯一残っていた「そごう徳島店」も2020年8月に閉店されることになり、ついに国内で最初の百貨店ゼロ県になるとのこと。徳島県出身者としては寂しい限りである。

交通の変化に加え、近年は業態変化も進展している。その流れの一つは、コンビニの普及である。これにより、まちなかの単品的小売店はほぼ消滅(業態転換)した。二つ目の流れは、IT技術革新により、Amazonに代表されるECの拡大、さらにはヤフオクやメルカリのようなC2Cプラットフォームの活用が進展して、リアル店舗は単にモノを売るだけの機能ではもはやその存立が難しくなっている。

そうした時代の流れが、人口構造の変化により、超高齢社会が到来した。移動弱者すなわち買い物難民が増え、再び、公共交通に依存せざるを得なくなり、鉄道駅の価値が高まっている。

集客の拠点が何処に位置するか、それは時代構造を反映している。近い将来、移動弱者を支援する自動運転車やMaaSが主流になったとき、集客拠点は何処になるか、リアル店舗施設とバーチャル店舗サイト(EC)の融合はどのようになるか、まちづくりはそうした来たるべく未来を見据えながら考えなくてはならない。