吉見百穴を観る

関東の桜祭りも終わりを迎えた頃(2019年4月9日)、国指定史跡である「吉見百穴(よしみひゃくあな)」をドライブを兼ねて観に行った。翌日からの寒の戻りの前日で暖かい1日であった。

 

 吉見百穴

自宅を9時半頃に出て、11時頃、まだ桜が残る埼玉県吉身町にある「吉見百穴」についた。確かに、「百穴」に相応しい眺めである。パンフを見ると、237基発掘(明治20年)され、現在確認されているのは219基であり、国内最大規模とのこと。横穴墓の数が減ったのは、太平洋戦争時にこの横穴墓の岩盤の下部に地下軍需工場をつくった際に横穴墓が十数個崩されたとのこと。

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パンフより

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この吉見百穴は、古墳時代の後期から7世紀後半にかけてつくられた横穴墓で、1923年(大正12年)3月7日に国の史跡に指定されている。横穴墓が存する山は横穴墓の前でお土産屋を営む大澤家の所有であるが、管理は吉見町の教育委員会が行っているとのこと。横穴墓の山の所有者なので出土品も一部所有し陳列できる、と店主は云っていた。

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横穴墓は大小様々であるが、実際に穴の中に入れる横穴墓もあり、入ってみると、中に入って立てる高さと畳数枚分ほどの空間規模のものがあり、一時は住居跡と解されていたのもそれなりに納得がいく。現在の公式見解は、「墓」であり、一つの横穴墓に次々と死者を埋葬する追葬(ついそう)が行われていたとのこと。

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横穴墓の中から外を見る

横穴墓の一部には、ヒカリゴケが自生しており、「吉見百穴ヒカリゴケ発生地」として国の天然記念物に指定されている。確かに、横穴墓を肉眼で見ているとよく分からないが、写真を撮るとヒカリゴケが写っている。

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横穴墓からは左方向には富士山が、真正面には秩父武甲山等が見えるなどなかなかの眺望で日当たりも良い。こうした場所で、かつ、凝灰質砂岩という掘りやすい山肌故に、これだけの横穴墓が集積したと推察される。

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岩殿山 安楽寺(吉見観音)

吉見百穴の山の所有者の大澤家の方(お土産屋の店主)が、「吉見観音」と「道の駅」も廻ると良いですよ、無料の駐車場もありますよ、と勧められたので、まずは吉見観音(安楽寺)に行く。着いたのは、12:45頃。

吉見観音(安楽寺)は、開基:坂上田村麻呂、創立:大同元年(806)の坂東三十三番観音霊場の11番札所である。創建当時の本堂、三重塔等は源範頼と北条氏との戦いで全て消失し、現在の本堂は約350年前、三重塔は約380年前に再建されたものであるとのこと。いずれにしても、伝統的木組みの建物はいつ観ても良い。金物で固められた現在の建物にはない味わいが時を経るほど出てくる。

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道の駅「いちごの里よしみ」

続いて、道の駅「いちごの里よしみ」に行く。結構大きな規模の道の駅である。子供用の滑り台を始め、家族で楽しめるつくりになっている。この規模なら、防災拠点にもなり得る。最低限の駐車スペースとトイレから始まった「道の駅」が地方創生の拠点、さらには防災拠点へと進化していることを実感した。

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道の駅「いちごの里よしみ」HPより

恥ずかしながら、駅名に「いちごの里」と称するほどに吉見町がいちごの産地とは知らなかった。まずは、遅い昼食(13:30過ぎ)をとり、そのあと、施設の一部であるJAの直販所を観に行くと、いちごがメインとして販売されている。値段も安い。せっかくなのでいちご1箱といちご大福を購入。

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はじめて、吉見町を訪れ、吉見百穴を見ながら、同じく横穴墓を有する大磯町に思いを馳せ、伝統的木組みの寺社建築をみながら歴史に思いを馳せ、道の駅の進化を再確認し、人の暮らす空間の歴史的移ろいを感じた1日でした。