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ブルー・オーシャン戦略


昨日の夜(2/15 22:00〜22:54)、テレビ東京カンブリア宮殿をみた。ホームセンター等でよくみかけるプラスチック製の収納製品等が「アイリスオーヤマ」社のものだということを初めて知った。

アイリスオーヤマの社長である大山健太郎(おおやま けんたろう)氏の経営姿勢に共感するところ大であった。特に、リスク(責任)はすべて社長がとるということで商品化の決定はすべて社長がやる(新商品開発責任者を兼務)という姿勢には大いに感じいった次第である。このような覚悟をどれだけのサラリーマン社長が持てるであろうか。

大山社長は「『不満』がある限り 市場拡大は無限だ」と言う。不満があるということは、商品と市場とに「ギャップ」があるということであり、そのギャップを探しそれを埋めることがビジネスの仕組みの基本であるがまさにそのことに通じている。そして、そうした「不満」をなくせば、そこには「感謝」の念が生まれる。ここに思いが至ったとき、おもわず、前回のブログで書いた「感謝」されなくなった建設業の世界を思い浮かべた。

アイリスオオヤマの業績は好調のようであるが、「不況は変化へのサイン」であり、「常に新しい畑を探し、種を蒔き、常に先頭を走る」と大山社長は語る。そして、「価格は値ごろ感で決め、そこからまず利益を引き(確保)、残りの範囲で製造原価、販管費を工面する。製造原価等がその範囲に収まらなければやめる。引き算経営である。」という。要するに、自らの考える土俵(値頃感という価値観)で勝負し、他社と単なる価格競争はしないということだ。これはマーケティングで言うところのブルーオーシャン戦略」の実践そのものである。

因みに、この真逆の「足し算経営」の仕組みで成り立っているのが行政である。消えた年金問題の時の解決策の経費感覚を見れば明らかである。この発想で行く限り、コストは下がらない。市場とのギャップは拡大する。「事業仕分け」しかない。もっと言えば「仕組み改革」しかない。

そして、一旦決めた価格は下げない。それに変わるのが原価を見直し作り方を変え価格を下げた新製品の開発ということと理解した。それを可能とするツールとしてすべてを「見える化」するシステムを導入している。番組では言及していなかったが、映像を見る限りBI(Business Intelligence)そのものであった。

BIについてはまた別途の機会に譲るとして、ブルーオーシャン戦略について少し言及したい。というのは、現在、デフレスパイラル的にプライスダウン(価格のみによる競争状態化)が進んでいるが、あの状態はまさにレッドオーシャンである。コモディティ化を避け、新たな価値を提供し土俵をずらす「ブルーオーシャン戦略」こそが今問われているのではなかろうか。

ブルーオーシャン戦略」は、W.Chan Kim & Renee Mauborrgne 著「Blue Ocean Strategy (邦訳:ブルー・オーシャン戦略)」、ランダムハウス講談社、2005年6月、1,900円(税別)で話題になり、「ブルー・オーシャン」という言葉自体もすっかり定着した。

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
著者:W・チャン・キム
販売元:ランダムハウス講談社
発売日:2005-06-21
おすすめ度:4.0
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そもそも、レッド・オーシャンとは「各産業の境界、競争のルールがあり、各社は限られたパイのシェアの奪い合いをするため、競争相手が増えるにつれ、利益率は縮小し成長見通しは厳しくなっていく。製品やサービスのコモディティ化が進み、価格競争が加速し、競争が激しさを極めるため、レッド・オーシャンは赤い血潮に染まっていく」ことに由来している。

著者は「競合他社に勝つただ一つの方法は、相手を負かそうとする試みをやめること」であると言う。その意味は、「従来の戦略論は『領土が限られているため敵を打ち負かさないと繁栄できない』兵法に根ざし、軍隊用語が溢れているが、産業史を見れば明らかなように、市場領域や業界の垣根は決して一定ではない」と言う。

それ故、「ブルー・オーシャン戦略は、競争を土台とした戦略論とは一線を画する」ものであり、「ブルー・オーシャン戦略とは、血みどろの闘いが繰り広げられる既存の市場(レッド・オーシャン)を抜け出し、競争者のいない新しい市場(ブルー・オーシャン)を創造し競争自体を無意味なものにする戦略」であると説く。

従って、ブルー・オーシャンを切り開いた企業は、よく言われる「競合他社のベンチマーキング」を行わない。「バリュー・イノベーション」こそが重要であると言う。アイリスオーヤマの大山社長も、放映の中で社員に「他社との違いばかりに眼をやるのではなく、お客様目線で考えろ」と言っていた。確かに、ベンチマーク先の企業をとうして市場をみるのではなく、直接、市場(お客)を自分の目で見た方が確かである。そして、そのお客に一番近いのが現場である。現場がお客の不満(ギャップ)をいちはやく聞き出し、それをスピーディに製品化すれば、他社を気にする必要はない。

ブルーオーシャンの著者はさらに次のように説く。「『バリュー』と『イノベーション』を結びつけられなかった場合、市場パイオニアや技術イノベーターは往々にして、自分たちで卵を産み落としながら、他社にそれをふ化される、という運命をたどりかねない」。よくある話である。

「従来の(産業・業界の)常識を問い直し、課題そのものを新しく設定し、新しい概念を生み出す。バリューを生み出すにはストーリー性が必要。リピーターを確保するにはリピートのための理由・動機付け(オプション)が必要。要するに、お客が自ら価値づける仕掛けが必要。」 つまり、従来になかった新しい概念を生み出し、その概念に対してお客が価値を見出す仕掛けとして、いわゆる「物語(ストーリー)」が必要であると言うことである。

そして、「バリュー・イノベーションとは、コストを下げながら買い手にとっての価値を高める状態を意味する。買い手にとっての価値は、売り手の提供する効用と価格によって決まる。売り手にとっての価値は、価格とコスト構造によって決まる。つまり、効用、価格、コストがそろって始めて、バリュー・イノベーションが実現する。売り手と買い手の双方にとっての価値を高める方向にアプローチすべきである。」

「コストを下げるには、業界で常識とされている競争のための要素をそぎ落とす。買い手にとっての価値を高めるためには、業界にとっての未知の要素を取り入れる。時が経つにつれ、優れた価値に引き寄せられるようにして売上が伸びていき、規模の経済性が働くため、いっそうのコスト低減が実現する。」

著者は、ブルー・オーシャンオーシャン戦略の6原則を以下のように記している。

■ブルー・オーシャンオーシャン戦略の6原則 《策定の原則》 原則1.市場の境界を引き直す ⇒ 探索リスクの縮減     ・いかに事業機会を最大化し、リスクを最小化すべきか     ・代替産業の幅間にバリュー・イノベーションの機会がある 原則2.細かい数字は忘れ、森を見る ⇒ プランニング・リスクの縮減     ・資料を作成するのではなく、戦略キャンパスを描く     ・「いかにして競争を避けるか」という大きな方向性から検討を始める 原則3.新たな需要(潜在顧客)を掘り起こす ⇒ 規模のリスクの縮減     ・ブルー・オーシャンを大きくする需要をかき集める。 原則4.正しい順序で戦略を考える ⇒ ビジネスモデル構築のリスクの縮減 《実効の原則》 原則5.組織面のハードルを乗り越える ⇒ 組織面のリスクの縮減     ・4つのハードル      1) 従業員の意識      2) 経営資源の不足      3) 従業員の士気      4) 社内政治 原則6.実効を見据えて戦略を立てる ⇒ マネジメント・リスクの縮減     ・人は成果と同じぐらい、成果に至るプロセスを気にかける。      手続き的正義(公正プロセス)が保たれれば、成果への献身と満足も  大きくなる。     ・公正なプロセスを支える3つのE       1) 関与 Engagement       2) 説明 Explanation       3) 明快な期待内容 clarity of Expectation

こうしてみると、他社に左右されず、景況に左右されず、さらには官・政に左右されず、顧客に直接向き合って企業経営をなしていくには、基本をきちんと押さえ、基本を実践可能とするツールを用い、リーダー自らが責任(リスクを引きうける)をもって決断し、全社で実行していく仕組みづくりにつきる。こうした眼で現在の各社の経営を見れば、単に企業規模、社歴だけではみなない光景が見えるであろう。