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主権者−立法−行政−司法に緊張関係が出現

2009年12月17日、「タヌキの森」事案の最高裁判決が出た。

「タヌキの森」事案とは、新宿の「タヌキ」もすんでいた森を伐採して、そこに、マンンションを建築していた事案である。新聞報道、及び本事案に係る高裁、最高裁の裁判要旨、そして本判決を踏まえた一般人、専門家(法律家、住宅専門家)のコメント等は以下の通りである。

要するに、自民党から民主党に政権が交代し、八ッ場ダムの工事執行を停止(政治が行政の執行をストップ)したが、同様のことが地方・民間でも起きたということである。区の認可を取り付けた民間のマンション建築事業を完成間近の段階でストップ(司法が行政判断を違法判断)したのである。

いずれもかなりの進捗度合い(執行中)のものであり、従来の枠組みではおそらく止まらなかったであろうと思われる事案である。しかし、主権者(国民)と政党支持の関係が変わり、政権が交代し、主権者(国民)と立法(国会・政府)、そして行政(中央省庁)の間にあった従来の関係構造が溶融し、新たな関係づくり、引いては新たな仕組みづくりに向けた緊張関係が起きている。

こうした流れを反映したのか、最近、行政事件訴訟法で主権者(住民)すなわち原告側勝訴の判決が従来になく出ている。何れも従来だといわゆる「門前払い」(訴えの資格無しあるいは訴えの利益無し等)とされたと思量される事案がそうではなくなってきている印象を受ける。司法と行政の緊張関係が生じている。

それは当然ながら、従来以上に、住民と行政(地方公共団体)の関係に緊張関係を惹起する。本来は、この間に介在し機能すべき議会が住民の代表としてその任にあたるべきであるが、その機能を果たし得ていないのではなかろうか。それも不作為ではなく、積極的にである。その積極的機能放棄を象徴する一つの事例が、栃木県旧氏家町(現さくら市)事案や神戸市事案のように、住民が自治体に現首長や旧首長に対する公金の返還請求(住民訴訟)をしたことに対する措置として、当該返還請求を放棄する議会議決や条例制定を行っている事例である。これについて、高裁は「議決権の乱用で、三権分立の趣旨に反する」、「住民訴訟制度を根底から否定するもので無効」と裁決している。

つまり、

主権者(住民)−住民の代理者(地方議員・地方議会)−行政(首長・地方公共団体)−司法

主権者(国民)−国民の代理者(代議士・国会)−行政(中央省庁)−司法

という関係が、新たな関係構造化への流れの中で、本来の牽制機能が働き始め、新たな仕組みづくりが求められている。

今年はこうした意味で歴史的な構造変化に立っていることを改めて感じさせられた1年であった。

来年は更なる景況悪化が加わり、この流れがさらに加速する可能性が大と腹をくくる必要がある。

その先にある新しい価値観に基づく新しい仕組みについては新年において記したい。

新宿・たぬきの森 建設中マンション 区の建築確認『違法』2009年12月18日 東京新聞朝刊  「たぬきの森」と呼ばれ、緑地が残っていた東京都新宿区の住宅跡地で建設中のマンションをめぐる訴訟の判決で、最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は十七日、「区の建築確認は違法」として建築確認を取り消した二審東京高裁判決を支持、区側の上告を棄却した。完成間近のマンションが違法建築と確定する異例の事態となった。   建築に反対する周辺住民が、「安全基準を満たしていない」として、区の建築確認の取り消しを求めて提訴していた。区側は今後、マンションを取り壊すなどの対応を迫られる。業者側は「区への賠償請求も含めて対応を検討する」としている。  問題となったのは、新宿区下落合で建設中の三階建て約三十戸のマンション。都建築安全条例では、災害時の避難路の確保などのために、この規模のマンションでは幅八メートル以上の通路が必要と定めている。しかし、周囲が住宅地やがけとなっているため、もっとも狭い所で幅四メートルしか確保できていなかった。区は「中庭などがあり、安全に支障はない」として特例で建設を許可していた。  一審東京地裁判決は、住民側の訴えを退けたが、今年一月の二審東京高裁判決は、区の建築確認は条例に反すると判断し、住民側が逆転勝訴した。  マンション建設現場は、樹齢二百年の古木などがあった屋敷跡で、タヌキの生息も確認されていた。周辺住民は公園用地として買収し、保存するよう区に要望。しかし、区による買収は進まず、二〇〇六年からマンション建設工事が始まった。〇九年春に完成予定だったが、二審で住民側が勝訴して以降は、工事がストップしていた。  中山弘子・新宿区長の話 司法の最終判断を真摯(しんし)に受け止め、適切に対応したい。
第一審までの経緯<下落合みどりトラスト基金サイト

 

判年月日:平成21年01月14日、 東京高等裁判所 裁判要旨 1 東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づき,建築計画につき安全上支障がない旨の安全認定処分がされた場合,同条例4条1項及び2項の定める,建築基準法42条1項の規定する接道要件よりも厳しい接道要件は適用されないことを前提として同法6条1項に基づく建築確認処分がされるところ,従前は,建築主事が,安全上支障がないかどうかの判断も建築確認処分の際に判断していたが,条例の改正により安全判断については外の行政庁が行政処分の形ですることになったため,安全判断に対して独立した争訟の機会が付与されることになったが,それは申請書の権利保護のため争訟の機会を増やす趣旨のものと捉えるのが相当であって,改正前と異なり建築確認の段階においてはもはや安全判断の違法を争うことをできなくするという趣旨までは含まれていないと解するのが相当であるから,安全認定処分の違法は,建築確認処分に承継される。 2 建築主事がした建築基準法6条1項に基づく建築確認処分につき,東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく,建築物が安全上支障がない旨の安全認定処分の違法は,建築確認処分に承継されると解した上,知事から授権を受けた都の特別区の区長が,前記建築安全条例に基づいて,安全認定処分は,合理的根拠なく路地状部分に幅員8メートルの通路がある場合と同程度に安全上の支障はないと判断した点で裁量権を逸脱濫用した違法な処分であるから,前記安全認定処分がされた場合に前記条例4条1項を適用しない旨規定した同条3項が適用されない結果,建築基準法42条1項の規定する接道要件よりも厳しい接道要件を規定した同条1項が適用されることになり,建築確認の対象となっている建築物は同項の接道要件をみたさないとして,前記建築確認処分が違法であるとされた事例
裁判年月日:平成21年12月17日、最高裁判所第一小法廷 裁判要旨  東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために同条1項所定の接道義務の違反があると主張することは,安全認定が取り消されていなくても,許される。
最高裁、東京都建築安全条例の安全認定の違法性が後続の建築確認に承継されることを肯定
特報! タヌキの森裁判が全面勝訴。 [気になる下落合] 建築基準法もなにもかも無視して、新宿区建築課が区長にさえ告知せずに出した「特例」認定をベースに(建築課は、区長が地元住民と会合する数時間前に「特例」認定を業者に出すという狡猾さで、区長も意図的にカヤの外へ置かれていた)、旧・前田子爵邸Click!の移築建築を解体し、森の樹木を伐りまくり、目白崖線に残る縄文遺跡の埋蔵文化財包蔵地を掘り返して強行してきた、メチャクチャなマンション計画なのだ。  おかしなことに、新宿区の公園課では公園化予算として5億4,000万円が計上され、この金額は「集合住宅」が建てられない特殊な旗竿地としての評価価格を前提にしている。つまり、公園課は現状の建築計画を認めていない。また、建築指導課は南側のバッケ(崖地)を「急傾斜地崩壊危険箇所」と指定し、大きな人的・物的被害が生じる危険性があると、つい先年“網がけ”を行なった。そして、新宿消防署は消防車両の出入りに問題があり緊急災害時の安全性が確保できないという、前代未聞の意見書を提出している。中山弘子新宿区長も、議会で早々に「遺憾」として建設計画には一貫して“反対”だった。・・・つまり、建設計画に賛成しているのは、新宿区のオバカな「特例」認定を出した建築課だけで、他の部署は下落合の住民たちを期せずして「応援」してくれるという、奇妙奇天烈なことがタヌキの森では起きていたのだ。
HICPM メールマガジン第331号(12月21日) (略) この訴訟の基本的な焦点は、「たぬきの森」訴訟とも言われているとおり、新宿区の中の貴重な緑を切り払った環境破壊の事件が争点です。それを建築基準法で引っ掛けて阻止しようとしたところが訴訟の争点でした。 (略) 本来住民が要求している「たぬきの森」を護る戦いは、環境・景観と言う都市環境の問題ですから、それを扱う場所は都市計画法です。この訴訟も、本来、都市計画第29条に規定されている開発許可違反で争われるべきです。 なぜ、裁判所がその指摘をしなかっただろうか。裁判所は、都市計画法の問題として提訴されていなかったと言うでしょう。裁判所の実体は、都市計画法の知識が浅く、知らなかったからです。これまでも都市計画法違反の判決を、最高裁判所を筆頭に繰り返しています。都市計画法は、都市空間のあり方として、都市計画区域の居住者のコンセンサスを都市計画決定として決定すると同時に、面積500平方メートル以上の開発をしようとする場合いには、その開発が都市計画法第33条に定める「開発許可の基準に適合していることを条件にしています。 この開発敷地は、約1900平方メートル弱あって、開発許可を受けなければならないにも拘らず、東京都が作った都市計画法違反を詰め込んだ「開発許可の手引き」と言う違反開発の手引書を違法に受けなくてもよいと言う扱いを受け、開発許可をすり抜けて、建築確認申請を受けたのです。 建築確認は、建築基準法第6条で、建築計画が建築基準関係規定に適合することを規定していて、そこでは、都市計画法に関しては、面積500平方メートル以上の敷地の場合には、開発許可を受けたとおりの開発行為が完了した敷地であることを確認することが規定してあります。 開発許可の基準では、開発が既存の環境に適合することが規定してあります。都市計画法でいう「環境」とは、歴史文化を扱う人文科学的環境、自然科学的環境と社会科学的環境の3面が含まれます。 今回の事件は、接道幅員9メートル規定とこの環境規定「第33条第1項第二号」に抵触しています。しかし、これまでの東京都の開発行政は、先に開発許可の手引き」と言う開発許可をすり抜ける法律違反を教唆する手引きにより、開発業者に不正利益を与えてきました。そのため、東京都への開発審査会に審査請求を出しても、東京都OBが「開発許可の手引き」を正当であるとして訴えを却下し続けてきました。 司法に対して行政事件訴訟を起こしても、司法は、行政法知識が貧弱なため、東京都という行政機関の言うなりの判決を繰り返し、正攻法は悉く討ち死にをさせられてきました。 今回の「たぬきの森」事件で、都市計画法の手続きを違法に逃れ、脱法により都市環境を破壊した計画を隠し、建築基準法違反の確認申請を提出し、不正利益を手に入れようとした「開発許可偽装事件」と言うべきものを、ジャーナリズムは、業者の偽装には触れず、行政の欠陥に全責任があるとして、次の3つの間違った情報をばら撒きました。 第1は、「違反建築物は取り壊されなければならない」と言った「耐震偽装事件」のときと同じ間違った考えです。 第2は、「その取り壊し費用は行政機関が損害賠償をしなければならない」という「耐震偽装事件」とは違った考えです。 第3は、今回のジャーナリズムの対応は、「処分庁に全責任があるとし、違反業者を免責にする」という「耐震偽装事件」のときとは全く逆な論調を展開したことです。 第1の件は、「違反建築物」は、違反部分を是正すればよい。今回の違反は、敷地と道路との取り付け部分の道路拡幅で是正できるもので、基本的に建築物自体を壊す必要はありません。「違反建築であれば取り壊せ」というジャーナリズムの主張は間違っています。 これは耐震偽装のときも同じで、「構造補強すれば足りる」にも拘らず、大騒ぎをしてマンション全体を破壊し、住宅所有者と建設業者に巨大な損失を与えてきました。このような「不当な取り壊しを指導した行政は、実損を住宅所有者やマンション業者に与えたわけですから、損害賠償をしなければならない」わけですが、「知らぬ顔」を決めています。 第2の違反建築物に対する「損害賠償の理屈」は、全く間違っています。開発業者自体が指定確認検査機関の教唆と幇助を受けて不正利益を得ようとして、違反承知の設計をし、違反承知の工事をしたわけですから、これらの違反者(ダーテイハンド)には、違反者を訴える権利はありません。指定確認検査機関や特定行政庁が違反幇助をし、又は、過失により違反を容認していたとしても、違反業者の責任が行政に転嫁できたわけではありません。 第3の違反業者に対するジャーナリズムの扱いは、「違反業者に責任はなく、行政責任に対し、違反業者が行政に損害賠償ができる」と言わぬばかりの主張を支持しているのは、なぜでしょうか。このような情報の扱いは、「野次馬根性」で、批判精神のあるまともなジャーナリズムとすれば、その見識が問われます。
請求権放棄の議決は無効=市に返還請求命令−浄水場用地費訴訟・東京高裁 <時事ドットコム>  栃木県氏家町(現さくら市)が浄水場用地を不当に高額で購入して町に損害を与えたとして、住民が市を相手に、適正価格との差額を当時の町長に返還させるよう求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、元町長への約1億2000万円の返還請求を命じた一審判決を支持し、市側の控訴を棄却した。一審判決後、元町長への請求権を放棄した議会の議決を違法と判断した。  同種訴訟では11月、大阪高裁が神戸市の条例改正を無効と判断している。  一審判決後の今年9月、合併後の市議会は元町長への損害賠償権を放棄することを議決。市側はこれを根拠に、請求を退けるよう求めていた。  房村精一裁判長は、市議会の議決について、「高裁で、土地購入価格が不当に高額と認定されることを阻止するために決議された」と認定。「議決権の乱用で、三権分立の趣旨に反する」と指摘した。  一審宇都宮地裁は昨年12月、住民側の請求を全面的に認め、差額の支払い請求を命じていた。(2009/12/25-01:18)
違法支出返還 請求権放棄認めず 大阪高裁 神戸市条例は「無効」 産経関西  神戸市が職員を派遣している外郭団体への補助金支出は違法だとして、市民団体が、矢田立郎市長などに対し違法支出分の返還を請求するよう神戸市に求めた住民訴訟控訴審判決が27日、大阪高裁であり、大谷正治裁判長は、神戸市に約55億円の返還を請求するよう命じた。市側は上告する方針。  この訴訟は、1審で神戸地裁が約47億円の返還請求を命じたが、神戸市側が請求権を放棄する条例を市議会に提案。可決、制定され、市長の高額「賠償」を回避する措置が取られていた。大谷裁判長は「決議は市長の違法行為を放置し、損害回復を含めて是正の機会を放棄するに等しい。住民訴訟の制度を根底から否定するもので、議決権の乱用にあたり、効力を有しない」と神戸市の姿勢を厳しく批判。市長側の「請求権放棄が確定している」との主張を退けた。  住民訴訟の判決で自治体の首長の責任が問われるケースでは、同様に自治体が請求権を放棄する条例を制定する例が少なくなく、今回の判決は注目を集めそうだ。原告の「ミナト神戸を守る会」の東條健司代表(69)は「ここまで踏み込んだ判決は初めてで、今後の住民訴訟を展望を開く」と話した。  矢田立郎市長の話 「判決はきわめて意外で、大変驚いている。地方自治法の定めに従い、適法に行われた議会の議決を否定するものだ」(2009年11月28日 08:11)。