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「新百姓」業態の創出を 

人口減少と高齢化が同時に進み、コミュニティとしての機能維持が限界に達している「限界集落」(65歳以上人口比50%以上)が増えている。最近では、集落のみならず、「限界自治体」という言葉すら言われている。

そこには、放置・放棄される山林、農地、集会所、神社・仏閣、・・・。そして、町中では、シャッター通り、・・・。廃止される病院、・・・。要するに、人がいなくなっているのである。日本全体としての総人口自体が急速に減少化していく中で、就業の場のない地方から人がますます消えていく。

人がいなければビジネスが成り立たない。民需を補ってきた官需(代表的には公共事業)にも限界がきている。今や日本国としての借金は1,086兆円に達する。

農業、林業、住宅建築業(工務店)、建設業はいずれも自然(環境)を相手とする“スロー”な地場型業種である。これらの業種は、地方においては雇用の根幹をなすものであり、インフラづくりを担うものであり、非常時においては復旧・復興の実働部隊となるものであるが、いまや、それぞれが存続の危機にある。

 収入が少ない ⇒ 担い手離脱・不足 ⇒ 山林荒廃・耕作放棄地の拡大

 人口減少・公共事業減少 ⇒ 仕事不足 ⇒ 地方工務店・建設業者の倒産拡大

その原因は、

?単独業種で成立するだけの市場規模がない/事業規模になり得ない

?経営体としての経営力の未熟さ(組織経営の経験不足)

?年間を通じての安定的な事業活動が難しい

等にある。つまり、時代の流れ(存立環境)と経営力とのギャップが大きくなっている。

一方で、農業の雇用吸収力に注目が集まり、規制緩和の動きにあるが、従来の延長線上的な業態のままでの対応では本格的な“新・農業”への転換・脱皮は難しい。

こうした問題点を包括的に解決する対応策として、「これらの地場業種をホールディングする経営体を起こし、これをプラットフォームとして経営、資金、人材、資機材、マーケティング等の一括管理を行う」新たな仕組みを提案したい。

地場産業を担う者(特に、現場作業要員)は実態的には同じ人材であることが少なくない。また、それぞれのピーク/オフピーク期は異なる。つまり、これらの業種をマルチに扱う場(プラットフォーム体=ホールディング・カンパニー)があれば人材・資機材等を効率的に使用でき、稼働率を上げ、生産性を向上できる。また、ホールディング・カンパニー形態の経営体とすることにより、“経営”を分離でき、経営力の向上が図れる。このホールディングカンパニーは、大企業等で経営を身につけた人材(定年退職者等)の地方での有効活用の受け皿にもなりうる。

これは、単独では存続が厳しいスローな業種の統合による地方での就労の場の確保と自然環境保護の両立であり、「網野史学」における「百姓」(≠ 農家)の現代版化、すなわち「新百姓」とも言える。

補)網野史学にいう「百姓」とは、単業としての「農業」でも「農家」でもなく、まさに百の業を行っていたと言う。

農業を行いながら森林を再生していく「アグロフォレストリー」はさらに長い時間軸上でのマルチ形態といえる。

実は、こうした「新百姓」的経営体は既に存在する。「農協」である。新規就農者よりも農協への新規就職者が多いといわれて久しいが、あれだけの資金力と組織力を保有している農協の存在感が薄れている。農協自身がここに提案したような事業体として、改革・脱皮できればこれにこしたことはない。期待したい。

一方で、意欲ある農業家、林業家、地場工務店・建設業が協働してこのような「新百姓」にトライする地方があれば是非ともはせ参じて支援したい。