防災訓練に参加して

今日、地元(町内会組織)の防災訓練に参加した。町内会の組長中心に、総勢約400人程度。8:15に集合場所に集まり、8:30過ぎに避難先兼防災訓練実施場所となっている地元の小学校に行く。実はこの移動が「避難誘導訓練」となっていたことを後で知る。一言の説明もない。そもそも誰が誘導しているのかすら分からない。

小学校に着くと「情報収集・伝達訓練」と称して避難者名簿?を本部席に届けるようにアナウンスされているが、情報収集を誰も現場でしていない。参加している小生への確認すらない。何のために、どのような情報収集をしているのか、さっぱり分からない。担当者が事前に用意していたと思われる名簿のようなものを本部席に届けるだけ。「避難者名簿作成訓練」なら、現地で実際に作成する訓練をしなければ意味がない。市役所の設置されている災害対策本部にこのような出来合いの名簿を集めても全く意味がない。非常時における情報収集は、その後の行動の基本となることを考えるとなおさらである。

所定の場所に着くと、日よけ&休憩用を兼ねてテントを設営する。これも訓練の一種であるが訓練名称が分からない。「避難所設営訓練」か? 非常時に、このようにすぐにテントが確保・調達できるかも分からない。

そして、給食・給水訓練(参加者用の麦茶づくりと、防災食品の一つであるアルファ米の炊き出し)、初期消火訓練(消化器の使用訓練)、救出救護訓練(けがをした人のための包帯等の巻き方)、防災用資機材取り扱い訓練(防災倉庫からの備品出し)。この中で、問題は防災用資機材取り扱い訓練である。防災倉庫の防災用資機材を外に出すだけで梱包をあけることすらない。従って、実際に使用可能かどうかも分からない。さらには、備品リストと備品が一致しないこともあるようである。被災者の目線で備品項目のチェックなども恐らくしたこともないであろう。

訓練実施後、改めて市役所等のホームページを見ると訓練概要は明日の衆議院総選挙のことを考え、従来よりも簡易にしたようである。

訓練概要  訓練は8月29日(土)午前8時、県南西部と東京都西部の都県境付近を震源とするマグニチュード7.3の直下型地震が発生。所沢市では「震度6弱」の激しい揺れを記録し、建物の倒壊・道路の損壊ほか電気・ガス・水道・電話などのライフライン施設にも大きな被害を及ぼし、さらに余震の続くなかで火災も発生。多くの市民が死傷しているものと見込まれ、市内は著しく混乱しているといった想定で進められ、これらの事態に対処するため、市は災害対策本部を設置するとともに、各地区ごとに現地対策本部も設置。災害応急対策を開始し、また市民はそれぞれの自主防災組織で活動を開始する。  訓練会場は市内11行政区、概ね30数会場でおこなわれ、必須・選択の訓練項目が設けられている。 訓練形態  災害対策本部設置訓練(市役所4階入札室)  現地災害対策本部設置訓練(各出張所および並木公民館)  各地区自主防災活動訓練  ▼必須訓練=情報収集・伝達訓練、避難誘導訓練、避難者名簿作成訓練  ▼選択訓練=初期消火訓練、救出救護訓練、給食・給水訓練、防災用資機材取扱い訓練、避難所運営訓練

また、この訓練のための費用は20万円(市からの交付金)程であるとのこともホームページを調べて初めて知った。

所沢市防災訓練交付金交付要綱 (目的) 第1条 この要綱は、所沢市が実施する総合防災訓練において、各出張所が所管する区域及びこれらに属さない並木地区(以下「各行政区」という。)ごとに、地域住民が主体となった自主防災活動訓練を実施するのにあたり、実施主体となる各行政区の自主防災会連合会又は自治連合会に対し、市がその事業費を交付金として交付することにより、住民による自主防災活動訓練を促進し、防災意識の高揚を図ることを目的とする。 (交付団体) 第2条 この要綱により、交付金を受けることができる団体は、前条に規定する自主防災会連合会又は自治連合会で市長に届け出たものとする。 (交付金額) 第3条 交付金の額は、各行政区の自主防災会連合会又は自治連合会に対して、1年度20万円を限度として交付するものとする。

いずれにしても、参加して改めて実感したのは、災害時において必要とされる訓練、シミュレーションとはほど遠いものであるということだ。非常時を想定した緊張感も全く感じられない。こうした防災訓練は、平常時から非常時へのモードの切り替えを意識して組立なければならない。平常時には当然のように可能なことが非常時はできないからである。そして、訓練目的に合致した訓練仕様にしなければ、訓練を実施する意味がない。高々20万円の予算では話にならない。

「防災」がかけ声だけになっている。まさに、行政の机上の実績づくりでしかない。本当の意味での大災害に対するリスクマネジメントの仕組みを平常時から組み込んでおく仕掛けが必要である。

32℃の残暑の中でいろいろ考えさせられた訓練であった。