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「孤独」の時代

共同通信の配信に目がとまった。

「高齢者の万引「動機は孤独」 4人に1人、警視庁調査」とある。

この調査は、4月20日から6月30日にかけ、警視庁が万引で摘発した合計1,050人対象に、取り調べ内容を基に、担当者が規定の調査票に記入する方式を採ったとのこと。

 少年:428人

 20〜64歳の成人:418人

 65歳以上の高齢者:204人 

そして、高齢者が万引きをする心理的な要因(複数回答)は、次の通り、「孤独」がその最大の理由となっている。

 孤独:24%

 特に理由なし:9%

 生きがいがない:8%

 むしゃくしゃしていた:7%

 単に欲しかった:4%

万引をした高齢者の40%は「独り暮らし」で、53%は「友人がいない」と回答。高齢者の64%は収入がなく、19%は生活保護を受けていた。日本の高齢者のおかれた寂しい生活像が目に浮かぶ。

高齢者の犯罪について、「平成20年版犯罪白書」は次のような内容の特集を行っている。

〈第二部〉特集「高齢犯罪者の実態と処遇」

 20 高齢犯罪者の増加の現況(7編1章)

 21 犯歴調査(7編3章)

 22 特別調査(7編3章)

 23 高齢犯罪者の同居状況(7編3章)

 24 高齢窃盗,傷害・暴行及び殺人事犯者の犯行動機(7編3章)

 25 特別調査等から見た最近の高齢犯罪者増加の原因・背景(7編6章)

 26 高齢犯罪者の特性に応じた対策の在り方(7編6章)

 27 高齢窃盗,傷害・暴行及び殺人事犯者への対応(7編6章)

 28 まとめ(7編6章)

この特別調査等から見た最近の高齢犯罪者増加の原因・背景として、白書は次のように述べている。

「高齢犯罪者は各手続段階で高齢者人口の伸びを上回る勢いで増加している。・・・ そして、・・・高齢犯罪者には,高齢に達する以前から犯罪を繰り返し,高齢の域に達して更に犯罪を行った者が相当数おり,実刑に処せられ受刑した経験を持つ者(「受刑歴あり群」)が,調査対象全体の3人に1人の割合でいるなど,犯罪性の進んだ者が少なくないことなどがうかがわれた。一方で,高齢になって初めて犯罪を行った者(「高齢初発群」)が調査対象全体の4人に1人の割合でいた。 ・・・現在の高齢犯罪者を取り巻く環境に目を向けてみると,高齢犯罪者の犯罪性が進むにつれ,住居が不安定になるとともに,配偶者がなく,単身生活の者が増えている。これらの者は,親族との関係も希薄である。このように,犯罪性の進んだ高齢犯罪者は,孤独な生活状況に陥っており,周囲から隔絶されている状況がうかがわれる。犯罪性が進んだ高齢犯罪者には,犯罪に結び付きやすい物質依存関連疾患にり患した経歴を有する者の比率が高いが,このような問題について福祉的なサポートを受けないままでいる者が少なくないこともうかがわれる。 就労状況,収入源等の経済状況についても,犯罪性が進むにつれ,就労の安定しない者,低収入の者の比率が上昇しており,また,生活保護などの福祉的支援を受けないまま無収入でいる者の比率も大幅に上昇している。経済的に不安定な状態に置かれて,生活に困窮していることから,更に犯罪の危険性が高まっているといえる。 このように,犯罪性が進んだ高齢犯罪者ほど,社会的な孤立や経済的不安といった深刻な問題を抱えており,このことが高齢犯罪者全般の主な増加原因であると言えよう。」

国立社会保障・人口問題研究所による「日本の世帯数の将来推計(全国推計)の概要」<2008年3月推計>によると、2015年をピークに日本の世帯総数は減少に転じる中、、2005年から2030年の間に、「単独世帯」は1,446万世帯(全体の29.5%)から1,824万世帯(37.4%)へと増加し、その中でも「65歳以上の単独世帯」は、387万世帯(2005年)から717万世帯(2030年)とほぼ倍増する。

つまり、今後の日本は、少子化による総人口減少、総世帯数減少という流れの中で、長寿化に伴い独居高齢者が世帯の太宗となり、孤独化が確実に進展するということである。当然ながら、従来は想定していなかった高齢者が引き起こす様々な社会的問題が惹起するであろう。

然るに、現在の社会システムはそうした社会を想定した仕組みとなっていない。大いなるギャップがある。高齢者の犯罪なるものはそのような歪みのトリガー事象と言える。家族形態的には孤独となっても、社会存在的には孤独でない形態はいくらでもある。地域ボランティア集団に参画するもよし、高齢者派遣として働くもよし、ネットで繋がるもよし。そうした新たな社会形態に相応しい仕組みの創出に向け、従来とは発想を変えて取り組む必要がある。