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農業の「営農」と「楽農」について

ある方から「楽農」と云う言葉を教えられた。そのような言葉がすでにあるのかWEB検索してみると、いろんな主体で使われているようである。

楽しくて、楽な農業 ⇒ 『楽農』を実践、情報共有 及び 普及していきたい! 「楽農しよう会」遊農(遊びながら農に親しむ)+習農(農作業しながら自然から学ぶ) 「楽農くらぶ」(NPO法人自然工房めば)楽しみながら農業を「体験」「学習」する事を目的に活動している農業サークル「楽農」4H(明治大学)暮らしの中で県民の誰もが気軽に「農」を学び、体験し、実践できる拠点を「楽農生活センター」(公益社団法人兵庫みどり公社)自然の中で芸術・文学・健康・楽しい農園をテーマにした施設「楽農クラブ小谷」

要するに、これまでの農政が主眼としてきた農家でもなく、産業としての「営農」でもない、非農家の方が非営農の農業を楽しむと云う意味での「楽農」である。

これは、昨今の農家の後継者がいない、耕作放棄地が拡大している、一方で農地を何らかの形で使いたいというニーズは多いとい状況を考えると極めて重要な概念を示している。

そもそも日本の農業は確かにかっては重要な産業であったが、果たして現在も産業として成り立っているのであろうか。補助金がないと農業・農家経営が厳しいこと、農家としての継続意志の減退、農家の後継者がいないあるいはさせたくないこと、JAの営農支援機能が低下していること、耕作放棄地が拡大していること等は、産業としての農業すなわち営農が成り立ち難い証左と思われる。

2015年農林業センサス結果の概要(概数値)(平成27年2月1日現在) [11月27日公表] 0004

耕作放棄地の推移

0003 耕作放棄地は、「2017年の日本全体の耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達し、近年は、販売農家の耕作放棄地面積が減少している一方、土地持ち非農家(農家以外で、耕地及び耕作放棄地を5アール以上所有している世帯)や自給的農家の耕作放棄地面積が大きく増加している。特に、生産性が低い中山間地での耕作放棄地が多い」と農水省のHPに記載されている。

そして、その対策として、「担い手へ貸し付けるか自ら耕作するなど、耕作の継続が重要である」(農水省HP)としているが、これができないから耕作放棄地が増えているのであり、ソリューションになっていない。いつまでも、営農・農家至上主義ではこうした状況を打開できないのではなかろうか。

農業/農用地空間、特に里山林業)も含めた中山間地は、国土保全、流域圏(山場-平場-漁場)維持、地域創生、鳥獣対策等の観点からも守っていく必要がある空間である。とすれば、どうすべきか。農業をどう考えるべきか。

まず、農業の概念を次の3つの分けて考えるべきではなかろうか。そのいずれにも該当しない場合は農転(他用途への転換)とならざるを得ない。 ①営農:農産品の生産・販売を目的とする産業としての農業(従来の農政の主軸) ②楽農:非農業人を相手に農地を利用したサービス提供を目的とする農業 例:観光農業、クラインガルテン/市民農園、体験農園、 その他各種サービス(林業・林家等との連携を含む) ③自農:自ら食べる農産物を生産するだけの自給農業

生産性が低くならざるを得ない中山間地や、耕作放棄地となる可能性の高い農地、そしてすでに耕作放棄地となっている農地等は、「営農」ではなく、「楽農」あるいは「自農」を軸として考えるべきである。従来の営農だけを念頭に置いた農業政策とは法制度等においてギャップが生じるが、政策ターゲットが変われば、当然、政策体系・運用基準も変わらざるを得ない。

そして、重要なのは、営農、楽農とも、その空間を持続的に維持していくには、経営的に成り立つことが不可欠であるが、もはや、農家単独では経営的に限界があることは現状が証明している。これを打開するのは、組織的経営ができる事業体に向けた農家群の組織化(農業法人)が不可欠である。その際、農家群は農業法人の一員と参加するも、組織経営、マーケティング等のノウハウ・経験を有したプロフェッショナルの参加も欠かせない。一般企業と連携した農業法人でも良い。一般企業が農業法人を起こすも良い。

いずれにしても、営農をめざす農業法人は国内外を相手に農業法人として採算のとれる道を探れば良いし、楽農は非農業人を対象に新たな枠組みの農業サービスの提供者として道を探れば良い。ポイントは、「農地」の集約化・集団化ではなく、「農家」「農業人」の集約化・集団化(経営事業体としての組織化)である。JAもそうした意味での組織体に再生できれば存続の意味があるかもしれない。

農業の担い手としての経営事業体(農業法人)への脱皮ができて始めて、営農も楽農も自律でき、農地・農業がダイナミックに維持され、イノベーションも起こるのではなかろうか。それこそが、地方創生の真の道筋かもしれない。各地で、こうした動きが勃興することを期待したい。