1強多弱の社会構造への傾斜

衆議院選挙が終わり、政治の世界にも「1強多弱」の世界が定着しつつある。というよりは、選択肢がなくなったというべきか。いずれにしろ、1強多弱の政界の影響は、今後、具体的に表出してくるものと思われる。WEB社会では、強いところはより強く、トップしか生き残れないと云われている。

日本の都市も、「東京」と「その他」の一強多弱都市構造化が進み、「その他」の都市・地方は疲弊し、衰退し、消滅さえしかねない状態にある。生活に身近な小売店舗でみても、巨大モール(リアル、ネット)・コンビニ店網が一般の小売店舗・商店街を衰退させる1強多弱化が加速している。そのほかの様々な業種でも1強多弱の現象がみられる。1強を目指した合併も加速している。社会構造の「べき分布」化とも言える状況が進展している。

▼正規分布とべき分布、平成20年版 国民生活白書 0004

最近の日本社会全般をみていると、1強多弱の行き着く先として、「行政」が「1強」で「その他(民)」が「多弱」という社会構造になるのではと懸念される。つまり、最近、行政の存在がますます大きくなり、行政依存あるいは行政と連携しないと何事も進まないような社会構造に傾斜している。

しかも、行政の縦割り構造が残ったままでそうした流れにあるため、ややこしくなる。省庁間の競争で、似たような政策そしてそれに付随する交付金補助金が対抗上、乱立することになる。それらは形を変えても減ることは殆どない。

▼COP20:日本は縦割り 省庁別、1国で7部屋使用、毎日新聞 2014年12月13日 11時24分(最終更新 12月13日 12時55分)

権限、金(予算=税金)、組織、・・・、そして、それらを背景にさらにあらゆる人、情報が行政に集まる。まさに1強多弱である。

結果して、例えば、本来、民が独自になすべき業界ビジョン、業界再編・事業統合、投資・ファンド、給与水準、イノベーション等々まで、行政に依存する。行政に依存することなく、グローバルな市場で稼がないといけないレベルの企業まで、国内の補助金(要するに税金)に頼るのはいかがなものか。行政側も、実績と見た目の当面の結果を求めるため、安心できる大企業中心に補助金執行を頼る。これでは、日本社会は活性化しない。

一方で、国民も何かあると「行政が何とかしろ」と云う。マスコミもそれをあおる。これでは、行政は「焼け太る」のみである。今や、地方で立派な建物は行政関係庁舎だけというところが少なくない。通りは廃れ、家屋は朽ち、人は居ない。しかし、行政コストは下がらない。ますます、行政中心の1強多弱社会化が進む。

果たして、このような過度に行政依存する1強多弱社会でいいのであろうか。日本全体がぬるま湯に浸かっている状態でいいのであろうか。成熟化し市場拡大が期待できない国内ではなく、グローバルを視野に入れた考え方、仕組み、行動に切り替えないと、日本自体が本当に衰退してしまう恐れがある。

まずは、自律できる体力を有する大企業・中堅企業は国内行政(補助金等)に依存せず、グローバル市場で戦って欲しい。中小・零細企業は企業規模としては小さくても、グローバルWEB社会では突出したコンセプト・技術・サービスがあれば生き残れる。経営とマーケティングイノベーションすればクローバル市場に打って出られる。

その際、必要な仕組みは自ら創発し、必要ならば社会的仕組みとして行政に働きかけるべきである。それぞれが自律した多強多存である。行政はそうした際の国家間の渉外に注力すべきである。

日本企業には「ロビイング力」が足りない! 勝つ企業は、自ら「市場のルール」を作っている、東洋経済ONLINE、2014年12月10日

行政中心の1強多弱社会構造ではなく、民主導の多強共存・自律分散協調型社会構造こそが今後の持続的成長の基礎となるものと思われる。その実現に向けて、各位がそれぞれの立場で、できることをやるしかない。

頑張ろう 日本!  変わろう 日本!

良い年末を・・・