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中村修二氏のノーベル物理学賞受賞と成長戦略

ノーベル物理学賞受賞者に青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇・名城大教授、天野浩・名古屋大学教授、そして母校の後輩である中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が選ばれた。「20世紀に火をつけた白熱電球に変わるエネルギー効率が良く環境にも優しい革新的な新しい光源を発明した。21世紀はLEDランプによって点灯する」と公式発表で評価されている。

公式発表で中村修二氏は、「Shuji Nakamura, American citizen. Born 1954 in Ikata, Japan. Ph.D. 1994 from University of Tokushima, Japan. Professor at University of California, Santa Barbara, CA, USA.」とアメリカ国民として紹介されているが、もちろん出自は日本人である。

二重国籍の実態:「ノーベル賞中村氏は日本人」とする安倍首相、「日本国籍を喪失」とする日本大使館、2014年10月12日

中村修二氏 略歴 1977(S52) 徳島大学工学部電子工学科卒 1979(S54) 徳島大学大学院工学研究科電子工学専攻修了。日亜化学工業 入社 1994(H 6) 徳島大学より工学博士取得

1999(H11) 日亜化学工業 退社 2000(H12) カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)教授に就任 2003(H15) 米国国立アカデミー(工学)に選出 2014(H26) ノーベル物理学賞受賞

中村修二氏は、小生と同じ大学出身(小生の2学年下)であり、中村修二氏が在学当時の指導教官の一人である多田教授(当時)は、大学のプールでよくお見かけしていた。当時はそうした関係は知らなかったが。

徳島大学のサイトには、中村修二氏のDr.論の表紙の写真が掲載されている。タイトルは「InGaN高輝度LEDに関する研究」とある。

中村修二教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)がノーベル物理学賞を受賞、2014年10月7日、徳島大学

地方の大学に光…中村氏ノーベル賞、YOMIURI ONLINE、2014年10月10日 09時00分

カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のサイトには、受賞を祝い、特集が組まれている。 ▶UCSB Materials Professor Shuji Nakamura Wins Nobel Prize in Physics

受賞者3人は日本の応用物理学会の会員であり、学会のホームページに特集が組まれアップされている。 ▶【特集】2014年ノーベル物理学賞受賞

中村修二氏が在籍していた日亜化学工業のサイトには、このノーベル賞の受賞に関する正式発表はない。産経新聞号外(2014.10.7 20:26)に『ノーベル物理学賞を受賞した中村氏がかつて所属していた日亜化学は7日、「日本人がノーベル賞を受賞したことは大変喜ばしい。とりわけ、受賞理由が中村氏を含む多くの日亜化学社員と企業努力によって実現した青色LEDであることは誇らしい」とコメントした。』とある。

この淡々としたコメントの背景には、よく知られた裁判がある。 ▶Tech-On! スペシャルレポート 中村裁判  食い違うそれぞれの「真実」 日亜化学工業社長と中村氏 「青色LED訴訟」の深層、Tech-On!、日経BP社

実は、昨年の今頃、中村修二氏の来日機会の折りに、母校である徳島大学工業会(工学部のOB会)の関東支部総会(於:東京)に基調講演をお願いしたが、その際に、もしノーベル賞の受賞が決まれば講演どころではなくなるという心配をしながらお願いをしていた。幸か不幸か、昨年は受賞がなく、基調講演をお聞きすることができた。1年遅れでノーベル受賞が決まったという次第である。

その基調講演の感想を記したのが下記のメルマガである。基調講演時の質疑応答の際の「研究の原点、原動力は怒りである」と言っていた中村修二氏の言葉が忘れられない。

月刊メルマガ「FellowLink 倶楽部」 2013/11/1 #4 【1.何がスタンダードか】

なお、渡米当時の中村修二氏へのインタビュー記事が下記に再掲載されている。 ▶苦境に陥ればこそ,新たなアイデアがわく―中村修二氏が語る渡米後の生活 中村修二氏(University of California Santa Barbara, Materials Department, Professor)、2014/10/08 13:07 出典:日経エレクトロニクス、2001年4月9日号、pp.180-185(記事は執筆時の情報に基づく)

中村修二氏がアメリカに流出したことに関して、今後とも優秀なエンジニアほど海外に流出するのではと懸念する声が上がっている。そうした流出を防ぐ仕組みとして、中島聡氏はストックオプション制度の活用を提言し、「そういうシステムがあるからこそ、米国には世界中から優秀な技術者たちが集まり、そしてそこで得た財産を元に彼らがまた別のビジネスを立ち上げたり、投資家として起業家たちをサポートする、そんなエコシステムが成り立っているのです。」と指摘している。

中村修二さんだけでなく優秀なエンジニアの海外流出は続く ローリスク・ローリターンからハイリスク・ローリターンに変わったエンジニアの環境、日経テクノロジーonline、2014/10/16

青色LED特許訴訟に関する一考察、中島聡、 2014年10月09日、ハフィントンポスト日本版

イノベーションは国の成長力の源泉であり、イノベーションを惹起するのはイノベーショナルなプロフェッショナルである。イノべーショナルなプロフェッショナルをリスペクトし、適切に報い、かつ知的刺激のある土俵という仕組みがなければ、グローバルな土俵で生きられる人ほど海外に流出するのは必然である。そうした人(海外出身者も含めて)が、日本に本拠地を置きつつも、グローバルレベルで活躍できる仕組みをつくることこそが日本の真の成長戦略ではなかろうか。地方や企業に補助金をばらまくだけが成長戦略ではない。