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[書評] 結局『仕組み』を作った人が勝っている

荒濱一・高橋学「結局『仕組み』を作った人が勝っている」、2007年7月30日、Kobunsya Paperbacks Bussiness、光文社

この本は人材ビジネス関連や起業関連の取材を多くこなしてきたライター二人が「回し車の中で走り続ける」ハムスターのような人生、「これでいいのかと考える暇さえない」状況から脱する鍵となる「仕組み」をどう作り上げるかにスポットを当てた本である。

この著書で定義し取り扱っている仕組みとは「いったん作ってしまえば、自分がさほど動かなくとも自動的に収入を得られるシステムで、しかもそれは普通の人が1人で、出来る限り小資本かつローリスクで実現できるもの」であり、結果して「(経済的)自由」を手に入れられるというものである。従って、この本で紹介されている10のケーススタディは”仕組みをベースにしたスモールビジネスのオーナーモデル”と言ったところか。

人は「自分が働かなくても収入が入ってくる仕組みを所有する」か、逆に「仕組みの一部に組み込まれる」かのいずれかである。「金持ち父さん、貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ)流にいえば、前者は株主(=投資家)・ビジネスオーナーであり、後者は従業員である。自営業者はスモールビジネス指向であれば「従業員」と大差がなく、ベンチャー指向であれば成功すれば「ビジネスオーナー」になれる。サラリーマン経営者はその中間といったところか。「ユダヤ人大富豪の教え」(本田健)流の定義によれば、大企業の社長・役員も「不自由人」の範疇に入る。「自由人」は店のオーナー、印税・特許料・家賃・配当の収入が入る人等々、要するに自分が働かなくても収入が入る人である。

投資家・ビジネスオーナーが回し車(仕組み)をデザインし、サラリーマン経営者がそれを形にして回し始め、従業員が回り始めた回し車に乗り込み一生懸命回し続ける、回し続け疲れたら振り落とされる(リストラ)、といった構図になる。

いまや40代で役員になれないサラリーマンの年収は頭打ちとなり、公的年金制度の崩壊も現実味を帯び、そして中高年齢者の平均余命が伸長する今後において、経済的自立(彼らの表現では「経済的自由」)は不可欠となる。従業員側から株主側に回るか、ビジネスオーナーになるしかない。しかし、わが国の教育は、未だかって良い従業員になるための教育はあっても、良い自由人になるための教育はなかった。この著書を含め、「金持ち父さん、貧乏父さん」「ユダヤ人大富豪の教え」のシリーズ本等がそうした意味で教科書となって売れているものと思われる。

さて、この本で取り上げているカテゴリー(ビジネスモデル)は次の5つに分類されている。

?インターネット・ビジネス(アフィリエイトは除く)

?情報起業

?ビジネスオーナー

?投資(不動産投資、個人ベンチャー投資事業)

?発明

最初の『インターネット・ビジネス』は、お客をインターネットを通じて集めることに原点があり、特定の分野で圧倒的に集客力を持てばポータルサイトしての媒体=プラットフォーム価値を持つことができ、それを儲けの仕組みの核とする。また、トラブルを避けるため、「ユーザの自己責任」を原則としている。従って、圧倒的な集客力をどのように組み上げていくかがポイントで、「勝てる市場を探し、小さくてもトップに立てれば、成功への道は開ける」とのこと。

ポータルサイトのようにパッシブ型の媒体ではなく、アクティブ型の媒体としてはメルマガがある。これも発行部数が多くなれば当然ながら広告媒体としての価値が増す。「毎日執筆のネタ切れの心配なく、良質な読者を確保し、かつ継続させるか」がポイントとのこと。アクティブ型の媒体としては、今後はBLOGを始として多様化していくものと思われる。

ポータルサイトという場の提供ではなく、自ら販売する場合は、製作・調達〜販売・配送〜料金回収のプロセスを徹底してアウトソーシングしたり、システム的に自動化する仕組みづくりが必要となるが、顔の見えない相手を商売にするだけに何が売れるかは分からない。「とにかく、思い立ったらまずやってみて、成功するまであきらめない」とのこと。強烈な意志と馬力がなければこのモデルは難しい。

このアウトソーシング及び自動化のプラットフォームとして、注目を集めつつあるのが「ドロップシッピングというアフィリエイトの次にブレイクすると見られている」新たな仕組みである。これは「ドロップシッピングサービス会社がすべてを代行し、オリジナル商品を在庫を持たずにオンラインショップで販売するサービス」である。問題は集客の仕組みづくりであるが、「ニッチでも世界を相手にすればボリュームがでる」。ポイントは「E-mailアドレスを獲得し、顧客リストを持つこと」で、アフィリエイトとは異なり「継続的に売っていけることが魅力」とのこと。この仕組みは、地域間、国際間の需給ギャップのあるところにはビジネスの種があり、WEB2.0的世界での商社的機能を個人的レベルで可能になったということを意味している。

メルマガ・BLOG、ドロップシッピングを組み込んだポータルサイトサイトを立ち上げ、その運営を徹底して自動化システムした上でアウトソーシングする姿が究極のインターネット・ビジネスの姿か。

次に『情報起業』であるが、これは「個人が有する知識やノウハウをインターネット上で情報として販売するビジネス」で、「海外ではインフォプレナー(information+entrepreneur)と呼ばれる」らしいが、怪しげな商材・業者も多く、何となくうさんくさい感じがしないでもない。

ビジネスの仕組みとしては確かに売れる商材とセールスレターを作れば、あとはインターネットを通じて「メンテナンスなしにかってに売れていく。まさに放っておいてもお金が入ってくる仕組み」である。問題は、商材の品質と、この分野に参入してくる人の倫理観であるが、倫理観に期待することが難しいことはリアルビジネスの世界でも明らかである。ましてや、バーチャル世界では。

第三の『ビジネスオーナー』とは、「自分の所有するビジネスの運営を、優秀な人材を雇って任せている人」(ロバート・キヨサキ)で、この本の事例は「継続的な収入の流れを生み出す」仕組み(永続的にコミッションを受け取る契約締結)を組み込んだパートナーシップ型ビジネスモデルを確立し、それを他の商材にも展開し、複数の収入の流れを得るというものである。

「ビジネスオーナーを目指すにあたっては扱う商材に関するスキルは必要ない。なまじっか持っていると、自分でやろう、となってしまう。それでは自分が忙しくなるばかりで、時間の自由が得られなくなる。自分でやってしまっては1馬力。それより他人の能力・スキルをうまく利用することを考える」べきとのこと。

確かに「21世紀はビジネスパートナーの時代」というか、規模・業種・地域・国を問わないコラボレーションの時代になると考えられるが、その際のポイント(リスクヘッジ策)は、「顧客とのコンタクトリストを持ち、パートナーの株を持ちいつでも相手の会社(パートナー)のすべてを見られるようにしておく」ことか。そして、「いかに優秀なビジネスパートナーを探すか、あるいはその母集団をつくるか」もポイントなる。そのためには、「個人(あるいは組織)ブランドの確立」が必要とのこと。この手の人のマスコミ露出が高いのもそのためであろう。

第四の「投資」についは多種多様にあるが、この本では仕組みとなりうる投資ということで不動産投資と個人向けベンチャー投資を取り上げている。

競売物件を安く購入」し続け、「日常的な大家家業の殆どを妻と地元との不動産業者に任せる」仕組みを紹介している。日本では、不動産としての上物の価値は年々低下(つまり買値が低下)し20年でほぼゼロとなりかつ地方格差(特に地価)が大きいが、賃料は経年的にみても安定しかつ地方格差も少ない。つまり、地方で安く不動産(土地付き建物)を購入し、賃料を稼ぐというビジネスモデルは理にかなっている。しかも、競売物件はさらに購入価格が安くなるので、そのうまみが増す。日本の多くの個人用不動産は資産活用の観点からは塩漬け状態にあるので、賃料を稼ぐあるいは賃料収入を活用した不動産ビジネスの仕組みはこれからもっと本格的に考えて良いテーマであろう。

個人相手のベンチャー投資の事例の仕組みは、「投資(によるリターン)だけでなく、コンサルティングし、その成果である収益から決められたパーセンテージの分配金をコンサルティング料として受け取る」もので、「永続的な収入の流れ」をつくっていることが特徴である。そして、「『金儲け』よりも『人儲け』が大事。そして、人儲けのためには何より、自分が人を信用することが必要」とのこと。

最後の「発明」。より具体的には、特許、実用新案、商標等いろいろある。「これをビジネスにするには、ものを作って量産し、販売ルートを確保する」ためのパートナーを獲得する必要がある。かつ、そのパートナーには「美味しいトロの部分をあげる。そうしないと人は動いてくれない」とのこと。そして、発明の対価の受け取り方を普通に思い浮かぶロイヤリティ契約ではなく、「製造に使う原料を必ず自分を通して供給する契約を結ぶ」ことにより、「いちいちパートナーの売上確認をすることなく、相互に利益が継続的に入るという仕組みをつくった」ところにミソがある。要は「何にでも好奇心を持ち、アイデアを思いついたらビジネス化することを最優先にする」ことのようである。

全体を通して明らかなことは、現在の仕組みづくりにはインターネットの活用(含むSEO対策)が欠かせないということである。そして、行動力である。紹介された人々は「行動が異常なほど早い」とのこと。そのためには、「小さく始める」ことだそうである。そして、「コツコツと、自分が動かなくても稼げるシステムを作りあげていくことがポイント」となるようである。

何れにしても、仕組みを考え作るということは、短期的ではなく中長期的にことを見据えるということであり、一つの発想、一つの仕組みが更なる連鎖を生む「仕組みの拡大再生産」をもまた視野に置いておく必要がある。

しかし、「自分がいなくても回る仕組み」はラットレースに放り込まれ忙しくしていることで自分の存在感を感じている多くの日本人にとって、価値観の転換を求めるものである。回し車から降りられる人がどれだけいるか、楽しみである。