超高齢社会の住まい方のあり方

高齢者の入居制限の実態

最近、あるシニアの方の転居探しに際し、その厳しい実態を思い知らされた。この方は、70歳を超えてはいるが45年近く会社を経営し、いろんな公益財団法人やNPO法人等の理事をされている「現役」である。その方が、個人契約するには年齢制限をクリアできず、経営している法人で契約するには従業員数制約(従業員50名以上)をクリアできず、入居を希望した賃貸アパートの契約ができなかった。

 ▼高齢者は賃貸物件を借りにくいという事実~賃貸派の人は年齢制限のリスクを知っておくべし、2015.01.31、更新2019.10.23
賃貸アパートって何歳まで入居可能? 高齢者でも借りられるアパートの特徴と探し方、2018年11月22日、最終更新:2019年8月22日

入居制限の理由

独居高齢世帯(独居高齢者)が太宗となる時代に於いて、元気な独居高齢者であっても住居の賃貸契約ができないことは、大きな社会問題と云わざるを得ない。

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出典:3 家族と世帯|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

国交省の資料によると、入居制限がかかる順位は、外国人、生活保護者に続いて単身高齢者(いわゆる独居高齢者)で、その入居制限理由は「家賃の不払いに対する不安」が最も大きい。独居高齢者には、「居室内での死亡事故等に対する不安」、いわゆる「孤独死」にともなう「事故物件化」への不安も背景にあると推察される。

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出典:家賃債務保証の現状、国土交通省住宅局、平成28年10月

高齢者の住まい方

そもそも、高齢者の住まい方には、持ち家と賃貸があり、持ち家を持てる高齢者は暮らす上での必要な支援サービスをどうするかという選択のみである。これに対して、非持ち家高齢者は所得水準と住みたい地域での供給物件に応じて住める住居が左右される。加えて、賃貸特有の保障・保険問題も出てくる。

           高齢者の住まい確保に係るサービス

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出典:高齢者等の居室内での死亡事故等に関する賃貸人の不安解消に関する調査 

賃貸における家賃の不払いに対するリスクヘッジとして、連帯保証人や家賃債務保証会社の仕組みがあるが、独居高齢者にはその何れもハードルが高いのが実態である。独居高齢者よりもハードルが高いとされる外国人居住向けの支援サービスがビジネス化されている事に鑑みれば、独居高齢者向け支援サービスももっと勃興しても良い。高齢者住宅財団の家賃債務保証制度の活用の工夫ももっとあっても云い。

外国人賃貸保証事業 ㈱グローバルトラストネットワークス
外国人専用家賃保証システム「SUMAU-すまう-」の提供を開始 連帯保証人不要、多言語対応による電話相談サポート
【2020年4月に迫る民法施行】改正で重要な「連帯保証人の保護」に関する4つの変更点 2019.09.17


高齢者住宅財団が相対する相手は、居住支援法人のみであるが、資金需要に悩んでいる地銀・信金・信組等の地域金融機関も名乗りを上げてもいいのではないか。居住支援法人と連携して、あるいは単独で、独居高齢者のメインバンク機能化(金融に係る総合相談窓口)と合わせて居住支援機能(家賃保証機能)を取り扱うことにすれば、独居高齢者(賃貸人)と地域金融機関相互にメリットがある仕組みとなるのではなかろうか。特に、営業エリアが限定される信金・信組はこうした地域に住む高齢者の金融面を含む生活総合支援機能(非金融業務)が今後重要になってくる。

さらには、居住支援法人が移住支援、空家管理・活用支援等の機能を併せ持つことにより、基礎自治体の業務委任の受け皿にもなり、事業性が上げるような仕組みを考えても良い。地方創生にも貢献する。

■居住・移住・空家管理支援団体の機能(公的業務機能委任)
 ・居住・移住に係る住居紹介支援(含む暮らし環境案内、お試し居住等)
  (関係ボランティア団体等との連携)
 ・賃貸人側への家賃保証会社あるいは高齢者住宅財団の利用斡旋
 ・独居高齢者の緊急連絡先の引き受け
  (自治体空家対策窓口、福祉部門、地域包括支援センター等との連絡窓口)
 ・空家等の管理・活用、残置物処理・一時保管(含むガイドライン作成)
 
高齢者の持ち家の空家化問題の一方で、高齢者(特に、独居高齢者)の賃貸住居の確保問題が併存して拡大している。これらは、地域にとって大きな社会的課題であり、地方創生の課題でもある。多様な仕組みを選択肢として提供することは喫緊の課題である。