新たな課題対応型まちづくりの組織/仕組みについて

時代環境の激変と地方創生の流れ

長命化しつつ総人口が減少する社会構造の流れは、地方・地域においては、高齢者比率だけではなく、独居高齢世帯や要介護者も増加している。連動して、空家や空き農地・耕作放棄地、手入れ放棄山林、さらには所有権放棄・所有権不明地も増加している。そうした中、気象変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化が生じ、従来の防災・減災概念・対策基準を超えたレジリエンス(適応力)対応が問われている。財源が縮小する中で、生活・福祉・防災等が連動したきめ細かいまちづくりが求められている。

一方で、急激なICT技術の革新はビジネスのあり方、コミュニティのあり方、ひいてはまちづくりのあり方を根本的に変えるインパクトを及ぼし始めている。リアル空間だけではなく、サイバー空間を含めたまちづくりが求められている。

かっての右肩上がりのものづくり産業中心時代の健常者ベースの生産年齢人口層中心のまちづくりから、低密度かつ偏在人口分布構造化とサービス業(メーカのサービス業化も含む)中心化の流れの中で、地方・地域の活力低下(衰退・消滅)を押しとどめ、持続的・自律的なまちづくりのエコシステム化をいかにつくりあげるか、そうした地方創生が求められている。それができてこそ、地方発リバースイノベーションを起点とした日本国土全体としての自律分散型ネットワーク構造が創生されるのではなかろうか。

基礎自治体の新たな課題対応への実態・課題

時代環境が大きく変わりつつある中、地方・地域における行政現場を担う基礎自治体の職員は、その多くが目の前の日常的な行政事務・サービス業務に追われ、新たに増え続ける課題への対応に十分な時間がとれない状況下にあるのが一般的ではないだろうか。基礎自治体も「人手不足」であり、民間企業と同様に、業務改革(働き方改革)が求められている。そのためには、新たな組織/仕組みづくりが不可欠である。

既往の行政サービスへの対応をベースにした基礎自治体の組織体制は、当然ながら新たな課題へは対応しにくい。そうした新たな課題に対する行政としての対応は総合的な立ち場にある政策部局が担うことになるが、そのためには、新規の政策立案能力とその迅速なアジャイルな政策実施に向けてのPMO[Project Management Office / Program Management Offic]能力、そして政策を具現化する組織/仕組みづくりが不可欠である。それらは今後の自律した基礎自治体の行政力の根幹とも云える。

下記に記すように、VUCA(ブーカ)ワールド時代に有効なOODA(ウーダ)ループを想定したとき、既存の縦割り組織を超えた組織/仕組みづくりが不可欠なのは明白である。また、こうした対応/受け皿がないと、そうした動きに傾斜している民間との連携にはギャップが生じる。従来型の産学官連携が巧く機能しない原因の一つがここにある。

補:VUCAとOODAとは

環境変化激しい時代におい政策立案の前提条件すら揺らぐ。これをVUCAと呼ぶ。
  Volatility(変動性):変化が激しく不安定
  Uncertainty(不確実性):問題や出来事の予測がつかない
  Complexity(複雑性):多数の原因や因子が絡み合っていること
  Ambiguity(曖昧性):出来事の因果関係が不明瞭で前例もない

このVUCAワールドに対応するには、管理可能な環境(工場内等)を前提としているPDCAサイクルは限界があるのは明白であり、状況に合わせて計画の前に戦略が必要とするOODA(ウーダ)ループが有効になる。
     Observe:みる(見る、観る、視る、診る)
     Orient:わかる(分かる、判る、解る)
     Decide:きめる(決める、極める)
     Act:うごく(動く)
     Loop:みなおす(見直す)/みこす(見越す)

出典:日本を支配する呪縛「PDCA」は日本ガラパゴスの概念。激変する現代社会では新しい理論 必要、 HARBOR BUSINESS Online、 2018.10.24

 一方、現場部署においては、新たな課題対応に向けて意欲があっても行政の縦割り的な所管体制の壁により、部署を超えて横連携すべきことができず、結局は部署としての部分最適(余計なことはしない、受けない)に流され、基礎自治体としての全体最適ができず、結果として徒労感とストレスが残ると云う状況が繰り返されているのではなかろうか。財源が縮小する中で、せっかく実施する施策・事業が矮小化(局所最適)されるのはもったいない。

組織/仕組みの二つの基本要素

こうした事態打開に向けて、考えるべき組織/仕組みの基本要素は二つある。

第一は、新たな課題対応に係る部署横断的な全庁Projectチーム制度の導入である。Projectと云うことは、明確な目的・目標(Goal )、期限の設定が必須である。民間企業では普通に行われている制度である。首長・副首長が指示命令すればいつでも導入できる。

本籍部署の業務をしつつも、全庁Project案件にも部著の所管を超えて関わるということである。行政パーソンとして、定期的な部署の移動は避けられないが、個人的な関心事、専門性を有する事案について、こうした全庁Projectチームに参画することにより、専門性を維持向上させることができるというインセンティブ効果の持つ意味は大きい。当該職員の満足感の向上は、通常業務の生産性、品質向上をもたらす。

こうした横断的全庁Projectチームをマネジメントするには、Project リーダーに組織内における相応の権限がないと職員は動かないため、Project内容に応じて、首長/副首長/理事/局長/本部長/参与/参事等が専任される。

第二は、増え続ける新たな課題に対して、もはや基礎自治体職員だけで対応するにはリソース的にも専門的にも限界があり、地元住民・団体、企業、及び専門家との習合・連携・共創する組織/仕組みの導入である。

地元住民・団体の中には、勤務先等での経験知・専門知を有する方が少なからずいるはずであり、その経験知・専門知を活かしてもらわない手はない。企業も、いま、地方・地域課題対応型のイノベーション事業の発掘・展開に注力しており、そうした場を欲している。そして、行政職員、地元住民・団体、企業のリエゾンあるいはアドバイザー/コーディネーション役として専門家も欠かせない。特に、シニアの専門家で地方・地域の課題解決に貢献したいと考えている方は多い。

新たな課題対応型の組織・仕組みのパターン

全国の基礎自治体はすべからくユニークであり、上記の二つの組織/仕組み要素をそれぞれの基礎自治体の置かれた環境(基礎自治体の人材力・財力、地元住民の意識等)に応じて組み合わせれば良い。以下、基本的なパターンと既往事例を示す。

 タイプ1:庁内に、組織ではなく、都度、全庁Projectチーム(全員兼務)を設置。Projectチームは当初の目的を果たしたら解散。
      
タイプ2:庁内に、専門部署(PMO、シンクタンク等)を設置。Projectメンバーは職員、住民から公募。Project期間は専任・委任。    

       
事例1:「よこらぼ」官民連携プラットフォーム(横瀬町)

町の外からアイディアや資源を募集し、それらを具現化したい人達に対して横瀬町が官民をあげて協力し、ステージを提供するという新しい仕組み。担当を町長直轄のまち経営課に一元化。
        
事例2:三芳町政策研究所「未来創造みよし塾」
自治体内組織としてのシンクタンク(所長:副町長)を設置し、町職員と住民(公募)による研究員が協働する仕組み。            

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タイプ3:行政の外に民主導(地元住民・団体、企業)による組織(組合、コンソーシアム等)を設置。Projectを実施したい事業主体が組織のメンバーとなる。行政はこれを支援・協力する。


事例3:檜原村木材産業協同組合 
檜原村の基幹産業である林業活性化構想の実現組織として「林家→伐採→製材→加工→消費」に関わる事業主体が参加できる垂直型の組合。木材活用のバリューチェーン型組合とも云える。
   [参考]檜原村木育・木材産業推進基本構想、檜原村、平成30年3月
              
事例4:大磯地方創生事業推進コンソーシアム
大磯町を習合・連携・共創の実践の場として、Project実施を企画する企業・団体等がコンソーシアムの会員として参加し、地元基礎自治体(大磯町)が各Project実現に協力。

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タイプ4:タイプ2とタイプ3のハイブリッド型。Projectベースの政策提言や政策実施のPMO機能を第三者的に行うために、基礎自治体の行政実務ラインとは別に、外部有識者をセンター長とする政策&PMOセンターを設置する。このセンターを、行政の枠組みの外にある民主導型事業推進組織の行政としての協力窓口とすることにより、民間企業等と地元住民の接点としての機能を果たすことにもなる。

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これからは智恵の時代である。表層的なキャッチフレーズ、政策用語に惑わされることなく、実態にあった地に着いた組織づくり/仕組みづくりを実践したいものである。