コンセプトエンジニアリング

イーロン・マスクの世界感

2019年2月2日、堀井秀之東大名誉教授が主宰しているi.school/JSIC主催の シンポジウム「日本企業最期の機会領域:社会イノベーションを考える」において、出演者の一人である石川善樹氏[予防医学研究者、医学(博士)]が示された「イーロン・マスクはどう考えるか?」「スペースXの場合」「みなさんの場合」のPPTをみた。イーロン・マスクの(石川氏の解釈による)スケール感ある目標設定、目標達成に向けてのデザイン力に圧倒される。日本企業では太刀打ちできないのではと納得した。

 

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はやぶさ

イーロン・マスクの世界感に打ちのめされた20日後の日本時間2019年2月22日午前7時29分、JAXAが、「はやぶさ2」の小惑星リュウグウの表面へのタッチダウンに成功したと報じた。日経ビジネス(WEB)は、この成功が「プログラム的宇宙探査」の成果であると伝えている。

はやぶさ2、リュウグウへつながった細い糸、オンラインゼミナール、日経ビジネス、2019年2月22日
プログラム的宇宙探査とは、戦略的に一連の探査機を継続して打ち上げ、運用することだ。初代はやぶさの発案者で、プロマネを務めた川口淳一郎教授は、プログラム的探査の重要性を強く主張し、はやぶさの運用が続いている真っ最中にはやぶさ2構想を立ち上げ、周囲の無理解と戦い、予算不足の苦難を乗り越え、はやぶさ2を実現に持ち込んだ。
初代はやぶさは、1990年代に川口教授(当時は助手)が、米ロ欧に人員と予算の規模も、技術も遅れている日本の宇宙探査の能力で、なんとかして世界で初めて、かつ世界第一線級の成果を出すには何をやったらいいのかに知恵を絞り、「重力の小さい小惑星のような小天体からのサンプル採取・持ち帰る(サンプルリターンという)」という突破口を見付けて立ち上げた計画だった。

「重力の小さい小惑星のような小天体からのサンプル採取・持ち帰る(サンプルリターンという)」という目標は、まさにコンセプトエンジニアリング(CE)の成果そのものである。その先駆的事例は、J.F.ケネディが1961年5月25日に行った演説で「1960 年代が終わる前に宇宙飛行士を月面に送り彼らを無事に帰還させる」と宣言(その後、アポロ計画 Apollo Program命名)したことである。

コンセプトエンジニアリング

思い起こせば、CEと云う概念・手法は、約25年前、ある研修において、日本の宇宙開発の草分け的存在とされる有人宇宙システム㈱ 社長 久保園 晃氏(当時)
に教えて頂いた時にはじめて知った。そのときの「コンセプトエンジニアリングとプロジェクトマネジメントの関係」を示す手書きの1枚の絵(下記掲載)が忘れられない。その考え方に、知的興奮を覚えたことを未だに鮮明に記憶している。現在、非常勤講師と行っている某私立大学の大学院の講義で、若き修士1年生にその図をもって知の承継を勝手にさせて頂いている。

[補]コンセプトエンジニアリング
「誰にとっても分かり易く、熱く胸をうつ目標(ミッション)とその具体化のための推進・実施法などを定めた組み立てが欲しい」という命題に対して、まずは「夢を描く作業からスタートする」。この夢を描く作業がコンセプトエンジニアリングである。
出典:コンセプトエンジニアリングとプロジェクトマネジメント、有人宇宙システム㈱ 社長 久保園 晃、1994.5.20 某社での研修資料

 

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 終わりに

宇宙は、ロマンを帯びつつイノベーションを誘う存在のようである。知のインパクトは心地よい。