歴史の転換点なのか

米朝首脳会談

歴史的と云われる米朝首脳会談が行われた。その評価は分かれている。会談の評価は、会談後の両国の実際の動きによってはじめてできるものであり、現時点での評価は難しい。しかし、この会談がなされたという事実は大きい。欧州、中東、そして東アジアからの米国の縮退の流れが事実として起きている。米国のこれまでの民主主義、自由主義、グローバル主義の理念追求型から、「アメリカ・ファースト」、「1国対1国のディール」型に変質している。国としての外交が変質している。

 

 歴史的会談から一日、北朝鮮は絶賛・トランプ氏には批判、TBS NEWS、2018.6.13

米中貿易戦争

米朝首脳会談の後、米国が世界との関税摩擦/戦争を高めている。政治的論点、外交的論点が大きくシフトしている。問題提起・課題解決の(国内での選挙向け)パフォーマンスが優先されている。しかし、こちらも、効果の程は疑わしくも、GDP1位と2位の米中の貿易戦争勃発の可能性の影響は大きい。かっての米ソ冷戦に続く、米中冷戦を予見する見通しもある。この背景には、軍事的覇権に繋がるハイテク覇権の争いがある。その帰趨によって、世界の枠組みが一変する恐れがある。

▼特集:3 つのトランプ劇場~米朝、米中、G7、溜池通信 vol.643、June 22nd 2018
米中貿易戦争の敗者は米国|2018年|研究員の時事解説|ナレッジ&インサイト|NRI Financial Solutions

読みの米中貿易戦争、ジレンマに苦しむ習近平指導部(アジア特Q便)、2018/06/25

黒船出航か

明治維新のきっかけとなった黒船来航(1853年)から168年を経て、今度は黒船出航(引き上げ)を予感させる。朝鮮半島の休戦ラインがなくなれば、第二次世界大戦後の日本の立ち位置の拠り所にしていた日米安保が変質せざるを得ない状態が出現する。黒船が引き上げた後に価値観・国家間の異なる近隣国とどう対峙するのか。米中貿易戦争の本格化も現実味を帯びてきたなか、戦後、本質的議論を避けてきた国家の有り様が問われている。

 ▼ペリーの黒船来航、歴史人
▼データベース「世界と日本」 日本と朝鮮半島関係資料集
システムによる覇権

こうした流れの中、先端技術の進展が社会システムを変えようとしている。金融システムがフィンテックで変質を迫られ、画像認識や言語認識等の技術は監視社会を可能とし、自律型自動運転車やドローンは交通(人流・物流)システムを一変させるといった、政治・経済・社会のあらゆる基盤がシステム化し、システム(技術)を押さえた企業、国家が世界標準あるいは覇権をとる時代が来ている。

日本の立ち位置

アメリカが縮退し、中東が溶融し、欧州・日本が揺らぎ、ロシア、中国が浸透する中、世界全体はどう動くのか、どういう国家・社会ができるのか。日本は、敗戦後の米国依存から、どう外交・防衛面で自立し、経済的に自律していくのか。日本自身が外交・防衛・経済において、基軸の変更、選択肢の変更を迫られている。日本の立ち位置、有り様、仕組みづくりに歴史的な見直しが要請されている。そうしたシビアな状況認識をどれだけ共有できるか、日本すなわち日本国民が問われている。