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「東芝」の迷走

不正会計問題からの再生を吹き飛ばす原子力事業債務問題

シャープに続いて、東芝が迷走している。平成27年に発覚した不正会計問題(東芝自身はいまだ、「不適切会計」と自称。「不適切会計問題への対応について」東芝HP)だけでも市場での存在を問われるべき状況にある東芝が、当該3社長時代に推進した原子力事業部門の経営悪化が顕在し、債務超過に陥りそうになっている。米国で平成31年から始めるシェールガス由来の米国産液化天然ガス(LNG)事業でも、最大で累計約1兆円の損失が発生する可能性がある(産経ニュース)とのこと。

 

東芝の不正会計問題とコーポレート・ガバナンス改革、日本証券経済研究所、証券レビュー 第55号第10号、2015年10月
「2016 年度第3四半期および 2016 年度業績の見通し並びに原子力事業における損失発生の概要と対応策について」のお知らせ、株式会社東芝、2017年2月14日

原発で致命的な誤算、東芝の「失われた10年」 お手盛り調査で問題発覚を先送り、ロイター、東洋経済ONLINE、2017年02月15日

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そのそもの発端

 不正会計問題は、経営層と現場のギャップ等の構造的問題があったのではと推察されるが、原子力事業については、海外事業におけるリスクマネジメントの欠落と推察される。思い起こせば、だれもが、三菱重工業が買収すると思われていた米国ウエスチングハウス(WH)社を「相場の2倍、3倍」の6,000億円で買収し、「えっ」と驚いた買収がそもそもの始まりだったのでは。

東芝の大逆転を呼んだ「原子力産業の経済学」、新潮社Foresight、2006年3月号
▼東芝が米原発産業の「ババを引いた」理由、DIAMOND ONLINE、2017年2月2日

それがいまや、「利益の8割を叩き出し、いわば一本足打法フラッシュメモリを完全に売却することもあると発表。現在の東芝時価総額が8000億円程度。フラッシュメモリ事業が独り立ちすると、1兆5000億円もの価値があるともいわれています。単純計算すると、フラッシュメモリ以外の東芝の事業の価値は、-7000億円です。」(東芝記者会見の異様な光景 --- 竹内 健 アゴラ 2/19(日) )とのこと。

東芝「巨額損失」の起源を考える 異端のリーダーから始まった「二律背反のガバナンス」、ニュースイッチ 日刊工業新聞、2017年01月20日

欠けていたリスクマネジメント

東芝の生き残りは、原子力事業分野での今後の収益が期待されるかどうかにかかっている。東芝製の原発は国内に21基あり、稼働はしていないが、点検・保守監理で安定した売上と利益を確保できる仕組み(電気料金の総括原価方式)になっている。しかし、海外ではそういう儲かる仕組みはなく、シビアなリスクマネジメントが要求される。

その収益に対するリスクの一つが米国内で進行中の2つの原子力発電建設の建設費の超過コストをすべて負担する「固定価格オプション」である。その背景には、日本で発生した福島原子力発電所事故を受けて安全性強化の建設遅延・コスト拡大という世界的流れにある。メーカーの東芝がなぜ、建設事業まで抱え込んだのか。エンジニアリング会社あるいはゼネコンに任せるという選択肢は考えられなかったのか。GEは機器売りと保守といううまみのある部分のみに徹している。

さらには、全世界的に東日本大震災を契機に、原子力発電そのものへの見直し(縮小・撤退)が同時並行的に進んである。もはや、原発は儲かる「夢のエネルギー」事業ではない。

しかし、将来の新設市場が見込めないと云って、安易に撤退できるものでもない。廃炉処理の社会的責任を負っているからである。それは数十年から百年スパンである。東芝は本当にそれだけにリスクとそのための社会的存続責任を覚悟して、原子力事業にのめり込んで行ったのだろうか。

東芝の損失が膨張する米原発“契約”の中身 超過コストをすべて負担する「固定価格オプション」はなぜ生まれた?、ニュースイッチ 日刊工業新聞、2017年02月12日
東芝「解体」OBが語り尽くした問題の本質 「原子力部門が優遇されすぎた、東洋経済ONLINE、」2017年02月15日

改めて、東芝原子力事業に係る一連の流れを見ていると、買収する会社(WH)のリスクの見極め、そして買収後のコントロールができていなかったことに最大のリスクがあったと思われる。リスクを見極めきれない、コントロールできない会社を何故買うのか。そうしたことに対するリスクマネジメントがなぜできないのか。「コーポレート・ガバナンスの優等生」と言われた東芝がなぜ、ガバナンスできなかったのか。仕組みが立派でも、運用に魂が入っていないと云わざるをえない。

官に頼らない価値ある事業の存続を

いまとなっては、「東芝」という組織を残すことに拘ることなく、将来に価値を生み出せる事業を継続させることに注力すべきである。「死に体」化している「東芝」の原子力事業に産業革新機構等による税金を安易に投じて欲しくない。

「Leading Innovation」を掲げる「東芝」がすべてを失い真にイノベーションするしかない環境下のいまこそ、官の力に頼らない創造的再生を期待したい。

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